経営リスク

1. 事故・災害等

1. 原料調達支障

当社は天然ガスをはじめとする都市ガス原料の大半を海外から輸入しているため、原料輸入先のカントリーリスクやガス田・LNG液化基地でのトラブル、LNG船の運航途上でのトラブル、東京湾での入港規制等により原料が長期にわたり調達できない場合には、都市ガスの供給に支障を来し、事業収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、1969年の受入開始以来、安定調達を続けている主要原料のLNGについては、現在、6カ国16プロジェクトから購入し、調達先の多様化を進めている。また、自社管理LNG船等を活用した柔軟な配船やトレーディングの活用等により、安定的かつ柔軟なLNG調達に取り組み、原料調達リスクの分散を進めている。

2. 自然災害

都市ガスの製造・供給設備を事業活動の基盤としている装置産業であるため、大規模な自然災害が発生した場合、LNG基地等の製造設備や導管等の供給設備等に損害を受け、都市ガスの供給に支障を来す可能性があり、その復旧対応等に伴う費用が収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、主要設備は阪神・淡路大震災、東日本大震災クラスの大地震でも十分耐えられる構造になっているものの、さらに二次災害を防止するための予防対策等を実施している。また、内閣府想定の大規模地震災害に備えた事業継続計画(BCP・・・Business Continuity Plan)の策定をはじめ、地震、台風、津波等の自然災害に対する非常事態対応体制の整備、定期的な訓練の実施及び近年の大型台風等の風水害リスクに対するレジリエンス向上策の実施等、災害の影響を最小限に止める対策を実施している。

3. 都市ガス及び電力の製造・供給に伴う事故及び供給支障

当社はお客さまの生活や産業を支える都市ガス及び電力の供給を行っているため、都市ガスの製造・供給に伴う大規模な漏洩・爆発事故や供給支障が発生した場合には、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生し、事業収支にも影響を及ぼす可能性がある。また、発電に支障が発生した場合には、電力の市場調達が必要となり、その対応に伴う費用等により、電力収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、ガスの大規模供給支障事故に備えたBCPの策定をはじめ、各種保安対策を計画的に実施するとともに、非常事態対応体制を整備し、定期的な訓練を実施する等事故・供給支障の防止に取り組んでいる。また、当社は複数のLNG基地を有し、基地間での補完が可能なため、ガス製造が停止する可能性は低い。

4. 病原性や伝播力の高い感染症の流行

万一、業務従事者の病原性や伝播力の高い感染症への感染により、都市ガス及び電力の製造・供給に支障を来した場合、当社の事業収支に影響を及ぼすとともに社会的責任の発生等有形無形の損害が生じる可能性がある。

このため、発生の予見は困難だが、病原性や伝播力の高い感染症の発生に備え、BCPの策定や非常事態対応体制の整備により影響を最小化する対策を実施している。

5. 不測の大規模停電

当社のLNG基地は信頼性の高い受電系統を配しており、LNG基地への電力供給が停止する可能性は低いと考えられるが、ガスの需要量や製造・供給設備の状況によってはガスの製造・供給に支障を来し、事業収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、関東エリアで不測の大規模停電が発生した場合に備えて、BCPの策定をはじめ影響を最小限に止める対策を実施している。また、系統電源からの電力供給が停止した場合には、停電によるガス需要減も見込まれるとともに、自家用発電設備で製造設備を稼働することが可能なため、停電時にも一定量のガス送出が可能となっている。さらに、当社のLNG基地は仮に1つのLNG基地が停止しても、他のLNG基地からバックアップが可能であり、ほぼ必要なガスの製造・供給が可能となっている。

6. 都市ガスの保安確保・ガス機器等製品品質上の問題

当社は都市ガス供給上の保安責任を負うことから、都市ガス供給に関わる事故やガス機器等に起因する事故が発生した場合には、その対応に伴う直接・間接の損害が発生する可能性がある。

このため、お客さまへの定期保安点検・開栓の品質向上や安全機器への取り替え促進等の安全強化策を実施している。また、連結子会社や協力企業等を通して安全機能を持つガス機器を販売しており、ガス機器重大事故は着実に減少している。

7. 他社の都市ガス事故に起因する風評被害

発生の予見は困難だが、他社における都市ガス事故が都市ガス業界全体の信頼に重大な影響を及ぼし、有形無形の損害を被る事態が発生する可能性がある。

このため、平時から都市ガスの防災対策やガス機器の安全性向上対策を深化するとともに、お客さま・行政・マスコミ等に対し、当社の取り組みやガスの安全な使用方法等に関する周知活動を行っている。万一、事故が発生した際には、事故に関連する情報等について正確かつ誠実な広報を行い、ステークホルダーに正しく理解いただけるよう取り組む。

2. 市場リスク

1. 市場価格・金利の変動

所有する不動産や株式をはじめとした有価証券、年金等の資産が、市場価格が変動する場合、または運用計画が未達成となる場合には、会計基準にしたがって損失を計上する可能性がある。また、有利子負債について金利変動により支払利息が増加する可能性がある。

これらの損失影響を抑制するため、不動産については長期安定収益を志向する物件の取得、株式については保有意義が希薄化した証券の順次売却の実施、年金運用については特定の市場変動の影響を過度に受けないような分散投資の実施等の対応を行っている。また、当社の有利子負債は大部分が固定金利で調達していることに加え、借り換え時期を分散していることから、金利変動による影響は限定的である。

3. 事業遂行に伴うリスク

1. 既存事業に関するリスク

  1. 競争激化による需要の減少
    ガス小売全面自由化による他企業との競合激化や原油価格の変動等によりLNGそのものが他エネルギーとの競争力を失う場合には、需要が減少し、収支に影響を及ぼす可能性がある。
    このため、当社グループは、環境性・効率性・快適性の高いガス利用設備の導入や販売体制の強化をはじめとする営業強化及び効率化の徹底による競争力向上に積極的に取り組んでいる。
  2. 原料費の変動
    主として都市ガスの原料としているLNGの調達先との契約更改・価格交渉の動向によっては、収支に影響を及ぼす可能性がある。また、LNGは主に原油価格に連動して価格が決定されるため、原油価格の変動が収支に影響を及ぼす可能性があることに加え、ドル建ての売買契約になっているため、円の対ドル為替レート変動が収支に影響を及ぼす可能性がある。
    さらに、長期契約のLNGプロジェクトからの調達量を上回る需要増、出荷基地・輸送上のトラブルの発生、新規LNGプロジェクトの供給開始遅延等が生じ、スポットLNGを調達する場合、スポット市況により、収支に影響を及ぼす可能性がある。
    このため、当社は調達先の多様化、契約条件の多様化、LNGグローバルネットワーク化の推進等により、原料費の低減と安定化に取り組んでいる。
    一方、原料費が変動しても「原料費調整制度」により、最大5ヶ月後にはガス料金に転嫁される。ただし、変動幅が基準原料価格の160%を超過した場合には超過分は未回収となる。また、会計年度を越えてガス料金に反映される場合には、年度収支に原料費の未回収・過回収による影響が及ぶ可能性がある。
  3. 法令・制度・国及び地方自治体のエネルギー政策の変更
    ガス・電力事業においては、小売全面自由化に続き、送配電部門が法的分離され、ガス導管部門についても法的分離が予定されるなど、制度の見直しが進められており、当社グループを取り巻く環境は大きく変化している。今後のエネルギー政策の動向や他事業者との競争激化により、当社グループの事業収支に影響を与える可能性がある。
    このため、ガスは徹底的な効率化による競争力向上、電力は拡販と効率化の両立に取り組むとともに、当社グループの強みを活かしたサービスを通じて、お客さまそれぞれの暮らしやビジネスの多様なニーズにお応えすべく取り組みを進めている。
  4. 天候変動によるガス販売量の変動
    当社の連結売上高の過半が都市ガスの販売によるものであるため、猛暑や暖冬等の異常気象が発生した場合には、給湯・暖房用を中心とする家庭用ガス販売量や一部の業務用ガス販売量が変動し、事業収支に影響を及ぼす可能性がある。
    このため、気象の影響を受けづらい工業用やコージェネ用都市ガス販売の強化に加え、Compass2030において、中長期的には都市ガス販売以外の海外事業・ソリューションビジネスの拡大等による事業バランスの変更を図っていく。
  5. 事業環境の変化による既存需要の減少
    中長期的な省エネ活動の進展及び産業構造の変化等により、将来の工業用・商業用の既存ガス需要の一部が減少する可能性がある。また、さらなる世帯人員の減少・生活形態の変化や省エネ機器の普及等により家庭用の既存需要の一部が減少する可能性がある。
    このため、上記のような事業環境の変化に対応するため、Compass2030において、省エネの進展や産業構造の変化等の中長期的な市場の変化に対して、「CO2ネット・ゼロをリード」するとともに「価値共創のエコシステム構築」を図っていく。
  6. コールセンターへの電話不通
    当社はお客さまからのお問い合わせの大部分を電話により受け付けているため、自然災害等による受付体制縮小によってコールセンターへの電話が緊急用件以外不通となった場合には、お客さまへの対応が広範囲にわたり停滞し、契約獲得やサービス提供機会の損失による売上減少、顧客離脱が発生する可能性がある。
    このため、自然災害等の発生時に備えて、電話以外のWebによる受付手段の拡充に取り組んでいる。
  7. 技術開発の遅延
    将来のCO2削減に向けた社会的要請や機運が一層高まる中で、それらの開発や実用化が、将来、他社と比較して遅延した場合には、その新技術を活用できない、若しくはその活用に必要な知財使用・購入コストや代替技術開発コストが増加すること等により、結果的に競争力が低下し、経営成績等に中長期的に影響を及ぼす可能性がある。
    このため、Compass2030における「CO2ネット・ゼロをリード」に向けて、環境性に優れ、安全性の高い、コストが適正な新技術の開発・実用化を目指し、自社開発に加えてオープンイノベーションを戦略的に活用し、スピードや知財マネジメントを意識しつつ、開発状況の見える化・進捗管理を適宜実施しながら着実に進めている。

2. 海外事業展開に伴うリスク

Compass2030で掲げた海外への展開において、原油・ガス・電力価格及び外国為替相場は、常に変動することから、収支に影響を及ぼす可能性がある。また、原油・ガス・電力価格が想定以上に下落する場合には、当該投資が減損の対象となる可能性がある。

このため、資源開発に加えて、ガス・電力の供給や再エネ事業へと展開し、事業を多様化することで、リスクを分散していく。

3. 新市場開拓の遅延

自由化の進展や技術革新により、中期的に既存ガス商材に対する競合の激化、競争力低下の恐れがある。さらに、国や自治体の制度・政策等動向によっては、より当社既存事業における競争環境が悪化する可能性がある。

このため、中期経営計画の重点戦略の一つである燃料電池等の技術開発や、太陽光・蓄電池等を組み合わせたソリューションの推進に取り組み、新たな市場を開拓し差別化・収益化を図る。

4. 投資未回収

当社は設備投資、出資、融資及び債務保証に関する案件に対しては投資評価委員会において採算性及びリスク評価を行い、その結果を踏まえて経営会議若しくは取締役会に付議する等、総合的な経営判断の下に投資を決定している。

しかし、パイプラインやLNG基地建設等の安定供給基盤の強化や、電力事業、エネルギーサービス事業、ガス田の開発等の海外事業やLNG輸送事業、IT投資等の既存事業の基盤整備及び保有不動産の活用に係わる大規模投資が、その後の経済情勢の変化等によっては、適切に回収されない、又は所期の成果を生み出せず、特別損失として収支に悪影響を与える可能性がある。

このため、経済情勢の変化等は通年管理しており、その短・中期的影響を踏まえ未回収リスクの発現時は決算に反映させている。

4. 情報管理・システム運用に関するリスク

1. 個人情報の流出

お客さまの個人情報が外部へ流出した場合には、対応に要する直接的な費用、被害が深刻なお客さまからの信頼や当社グループのブランドイメージの毀損等により、事業収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、グループ全体を対象とした情報セキュリティ推進体制の構築、情報セキュリティ教育や自主検査の実施、流出事故発生時のエスカレーションルールの徹底等を行うとともに、その構築・運用状況を内部監査により確認し、必要な改善を行う体制を整備する等の人的・組織的対策と外部からの不正アクセスやコンピュータウィルスによるシステムへの攻撃に対する侵入防止対策等の技術的対策により、個人情報の流出防止と事故発生時の影響の最小化に取り組んでいる。

2. ITシステムの停止・動作不良

基幹ITシステムが停止した場合や動作不良を起こした場合には、お客さま対応業務の縮小・停滞・お約束不履行等の発生などによる当社グループのブランドイメージ毀損、通常と異なる手段で業務継続をするための追加費用の発生などのリスクがある。また、ITシステムの停止・動作不良は、プログラム・オペレーティングシステム・データベース・機器の不具合など様々な原因で発生する。

このため、発生防止及び発生時の影響最小化を目指して、対障害性・耐災害性に優れた堅牢なデータセンターの設置、各種セキュリティ対策及び定期的な訓練の実施等、システムの安定稼動に必要な対策を実施している。また、万一発生した際には、再発防止及び再発時の影響の最小化のため、根本原因の徹底追究、他システムも含めた情報共有・点検等を実施していく。なお、都市ガスの製造・供給調整に関するITシステムは、独自にバックアップシステムの整備及び自営無線の整備等の安全対策が施されているため、当該システムの停止・動作不良により都市ガスの製造・供給へ大きな影響が及ぶ可能性は低いものとなっている。

3. サイバー攻撃

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、また大会開催後以降も継続的にサイバー攻撃のリスクが増大する可能性が高い。サイバー攻撃の脅威が想定以上に高度化、複雑化し、個人情報の流出、基幹ITシステム及び都市ガスや電力の製造・供給に関する制御システムの停止・動作不良等が発生した場合には、お客さま対応の停滞、被害が深刻なお客さまからの信頼や当社グループのブランドイメージの毀損、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生し、事業収支にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

このため、部門横断的な体制を整備し、各種セキュリティ対策やインシデント対応訓練を実施する等、サイバー攻撃の影響を最小限に止める対策を実施している。

5. 企業の社会的責任に関するリスク

1. コンプライアンス違反

コンプライアンス違反は、事業を加速させている海外も含め、世の中の企業コンプライアンスに対する意識の高まりとともに顕在化の可能性も高まっており、法令・定款に照らして不適切な行為、情報開示における不適切な対応、若しくは企業倫理・社会的規範に反する行為等が発生した場合には、対応に要する直接的な費用に止まらず、社会的信用の問題等有形無形の損害が発生し、結果として事業収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、コンプライアンスを業務運営の基盤と位置付け、社長を委員長とする経営倫理委員会を設置し、同委員会が策定する基本方針の下に、グループ全体でコンプライアンス向上の取り組みを実施し、法令・企業倫理・社会的規範の遵守の周知徹底や、その状況等を内部監査により確認する等コンプライアンスの推進に取り組んでいる。

2. 新たな環境規制等への対応

新たな環境関連法規制や環境改善の追加的義務が発生した場合には、事業遂行体制見直しや費用増加によって事業運営や収支に影響を及ぼす可能性がある。気候変動問題においてはパリ協定の発効等を受け、世界的に今世紀後半の脱炭素化に向けた潮流が強まっている。日本を含む各国で環境規制等が強化された場合、化石燃料の競争力低下により収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、環境関連法規制等への対応として、環境法令の遵守、省エネルギーや廃棄物の削減等の強化、対策を行っていく。気候変動問題対応として、天然ガスの有効利用の拡大や再生可能エネルギーの導入促進、CO2回収やガス体エネルギー脱炭素化の技術開発に取り組んでいく。

また、環境マネジメントシステムの更なる強化を通じて、継続的な改善に取り組んでいく。

3. 不十分なCS・お客さま対応

不適切なお客さま対応等が発生した場合には、SNS等を通じて容易に拡散され、当社グループのブランドイメージの毀損による企業競争力の低下をはじめ既存顧客の流出等有形無形の損害が発生し、事業収支に影響を及ぼす可能性がある。 このため、CS(お客さま満足)の向上を経営上の重要課題と位置付け、社長を委員長とするお客さま満足度向上委員会が策定する基本方針の下に、グループ全体でCSの向上を進めている。

4. 人権問題への不十分な対応

事業活動における人権尊重は経営上の重要課題として位置付けられるが、事業を加速させている海外も含め、世の中の「ビジネスと人権」に関する意識はますます高まっており、人権リスクの顕在化の可能性は高まっている。一方、当社グループのバリューチェーン全体の人権問題への取り組みは必ずしも十分とは言えず、人権リスクを把握して対応しなければ、社会的な信用を失うとともに、訴訟費用の発生等有形無形の損害が発生し、結果として事業収支に影響を及ぼす可能性がある。

このため、当社は「中央人権啓発推進会議」を設置して当社グループの「人権啓発活動計画」を定め、人権啓発活動に取り組んでいる。