【エピソード9】パラリンピック金メダル獲得!2連覇・2冠!日本新記録・大会新記録も樹立
パリ2024パラリンピックの競泳男子において、木村選手は2つの金メダルを獲得。 100メートルバタフライ(視覚障害S11)を2連覇し、50メートル自由形との2冠に輝いた。しかも自己新記録と大会新記録を叩き出した完全勝利だった。 フォーム改善を始めた2023年1月から約1年半かけて挑んだ結果に世界中から歓声が起こった。しかし、再び頂点を掴むための道のりは途方もないほど長く、越え方さえ分からない壁の連続だった、と木村選手は振り返る。 フォーム改善への取組みからパリ2024大会のメダル獲得まで、木村選手は以下の通り語る。
あまりにも高かったフォーム改善の壁
フォームを変えるというのは、いろいろな要素から成り立っており、手の動かし方、足の動かし方を変えることもそうだが、手の動かし方ひとつをとってもいくつもある。昨年フォーム改善を始めて、パリ2024大会があった9月までの間、試し続けて取り入れたところ、取り入れられなかったところがあった。
そしてパリ2024大会で5年ぶりの自己ベストが出せた。長く水泳をしてきたなかで、ここで0.2秒を縮められたので、ある程度の成果は出たと思ってはいるが、フォーム改善が完全に成功したという感じではなかったのも正直なところ。
結果には大満足はしているが、フォーム改善をしていく間にでききれないことも多く、泳ぎの難しさをあらためて感じた。
「ハイブリッド型」の新しい泳ぎ
健常者に近い泳ぎがしたいという思いからフォーム改善に取り組んだが、視覚障がい者が誰もがコースロープに触れながら進路を確かめるという動きを省くことができず、全体の動きが止まってしまい、バランスが崩れてしまう事が課題と感じていた。 しかし、見えない中でレースをするという状況下で、バランスを崩さずコースロープに触れる技術はそれなりには高くなったと思う。これまでに培ってきた技術と新しく学んだ技術をハイブリットしていくことで、新たな可能性を探っていくことに考えをシフトするようになった。
5月頃までには精度をあげる目標で取り組んでいった。
東京2020大会とは違う心で臨んだパリ2024大会
©PARAPHOTO/中村 Manto 真人
東京2020大会ではメダルの色=金メダルを目指していたが、自身の泳ぎの進化にこだわってフォーム改善に取り組んできた。 周囲からの期待もあったが、とにかく自分の泳ぎの進化にこだわっていきたかった。 泳ぎが進化する事でタイムが縮まるとも信じてきた。 その結果にメダルがついてくると思っていた。
「金メダルより良い泳ぎ」という意識でパリ2024大会を迎えた事で、心の中のバランスは変わっていった。
目指したのは、最後まで力を抜いた泳ぎ
大会で泳いでいる間は「良い泳ぎをする」ということだけを自分に言い聞かせていた。 コーチ陣からはスタート直後に力まないようにすることをアドバイスされていたので、水中ではずっとそのことを意識していた。
特にラストスパートは苦しくなり、ついアクセルを踏みたくなるが、落ち着いて泳ぎ切らなくてはいけないと意識していた。 技術的な練習はたくさんしてきたが、ラストスパートをかける練習はできていなかったとも言える。そこまでするには時間が足りなかった。もし、ラストスパートの練習までできていたら、最後の20mでギアをもう1段階上げられたのかもしれない。
どんな舞台でも続けていきたい“挑戦”
元オリンピック選手のメダリストである星コーチとトレーニングをしていくうちに、オリンピックの競泳選手たちもこちらのことに興味・関心を持ってくれた。 同じ水泳をする者として仲間になりたいし、特にパラリンピック側としてはオリンピックなど健常者の選手たちや団体と関わることで得られるメリットは大きいと思っている。
自身が東京とパリで2連覇したことで、以前よりもメディアへの露出が増えたり、パラ競技への関心が以前より高まってきているのを感じている。
“次”は今のところ未定だが、この先もいろんなことに挑戦し続ける人生でありたいと思っている。
木村選手インタビュー
エピソード9
パラリンピック金メダル獲得!2連覇・2冠!日本新記録・大会新記録も樹立