【エピソード4】新たなステージでの挑戦2 「メディア出演」の先に見えた、新しい世界との出会い。

新たなステージでの挑戦2「メディア出演」の先に見えた、新しい世界との出会い。

『阿佐ヶ谷アパートメント』に出演して見えた
「違い」を楽しむ社会。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下東京2020大会)をきっかけに、障がい者やパラスポーツへの理解が進み、様々なメディアで「多様性」という言葉が取り上げられるようになりました。今ではパラアスリートのメディア出演もかなり増えたと感じています。僕自身も東京2020大会以降、様々な番組に出演する機会をいただきました。例えば、NHK総合で2021年からスタートした『阿佐ヶ谷アパートメント』。阿佐ヶ谷姉妹が大家を務めるアパートを舞台に、年代も性別もバラバラな個性豊かな住人たちと楽しいトークをくり広げる番組です。パラアスリート、芸人、ギャルモデル、女装パフォーマー、外国人、マージャン店従業員……想像していた以上に多種多様な方が出演されていて毎回楽しみでした。番組のコンセプトが「“当たり前”を広げるエンターテインメント番組」というだけあって、マイノリティの方も自分の考えや主張を発信できる貴重な場になっています。自分も含めて、世界にはいろんな立場の人がいて、人それぞれ考え方も違えば見方も異なります。人は自分と異なるものを拒む傾向にありますが、その“違い”を楽しむという番組を通じて、「みんな違っていいんだ」と思えて、私自身も気が楽になりました。

女装パフォーマー・ブルボンヌさんと初の山修行ロケにも挑戦 女装パフォーマー・ブルボンヌさんと初の山修行ロケにも挑戦

番組収録で同部屋になったブルボンヌさんと 番組収録で同部屋になったブルボンヌさんと

阿佐ヶ谷アパートメント番組収録現場 阿佐ヶ谷アパートメント番組収録現場

目の見えない僕に報道番組のコメンテーターが務まるのか?
共に困難を乗り越えた『news zero』での挑戦。

日本テレビのニュース番組『news zero』にも出演し、ひと月限定のマンスリーサポーターを務めました。出演のオファーをいただいた時は、カンペを見ることができない、カメラの方向も確認できない僕に果たしてコメンテーターという役割が務まるのか、とても不安でした。ましてや生放送の報道番組だけに、何が起こるかもわかりません。目の見えない僕を番組に起用するというのは、テレビ局にとっても挑戦だったと思います。その決断に応え、自分の幅を広げたいという想いから出演をお受けすることにしました。
出演する際には、一市民、アスリート、そして視覚障がい者という3つの立場から自分らしさを意識して発言しました。1秒の遅れも許されない報道現場で、目の見えない私が出演するということは、普段にも増して周囲の方の配慮が必要になります。例えば、発言を求められる際にはまず初めに「木村さん」と名前を言っていただいたり、直前でニュース内容や順番の変更があることに備えてカメラに映らない位置に説明担当のスタッフの方が控えてくださったり。出演者、番組スタッフが一丸となって不慣れな状況を乗り越え、良い番組にしていきたいという熱意に感銘を受けました。

『news zero』のマンスリーサポーターとして出演 『news zero』のマンスリーサポーターとして出演

自らが初めてのロケ取材に挑戦し、番組内で紹介 自らが初めてのロケ取材に挑戦し、番組内で紹介

新たなステージでの挑戦を通じて
誰もが挑み続け、やり抜くことができる社会を作りたい。

パラスポーツ応援プロジェクト『ストロングポイント クロス』(BS日テレ)では、将棋棋士の羽生善治さんとお会いする機会に恵まれました。もともと将棋は水泳練習の息抜きとして始め、大した腕前ではありませんが、今では将棋イベントに参加するほどハマっています。そんな私にとって数々の記録を打ち立ててきた羽生さんはまさに憧れの人で、番組ではモチベーションの継続や休息などをテーマに対談を行い、将棋対決の機会までいただきました。念願だった金メダル獲得から1年。「金メダル」をモチベーションにしてきたため、この先の目標や水泳との向き合い方について考えていましたが、羽生さんの「モチベーションは天気のようなもの。晴れの日もあれば、雨の日もある」という話を伺って、これからの競技人生における水泳との向き合い方が見えてきたように思います。
新たなステージでの挑戦を通じて、いろんな人と出会い、様々な経験を積むことができました。これらの経験は私にとってかけがえのない財産となり、自分の世界が広がったと実感しています。これまでの競技人生を振り返ってみると、全てパラリンピックでの金メダル獲得することを軸に据えてトレーニングに励んできました。それも一つの人生ですが、これまでは狭い世界で生きてきたことに気がつきました。水泳だけではなく、様々なステージでの挑戦を通して、いろんな立場にいる人の可能性を広げることができれば、誰もが色々なことに挑み続け、やり抜くことができる社会につながっていくと信じています。

憧れの羽生善治さんと将棋対決 憧れの羽生善治さんと将棋対決

羽生善治さんからサプライズで扇子のプレゼント 羽生善治さんからサプライズで扇子のプレゼント

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