【エピソード3】新たなステージでの挑戦1 パラスイマーの僕がハーフマラソンに挑戦した理由。

【エピソード3】新たなステージでの挑戦1 パラスイマーの僕がハーフマラソンに挑戦した理由。 ©東京マラソン財団

人生で2km以上走ったことのない僕が
ハーフマラソンという未知なる世界に挑戦。

「多様性と調和」をうたった東京2020パラリンピック競技大会(以下東京2020大会)が閉幕し、日本は金メダル13個、銀メダル15個、銅メダル23個、計51個と過去2番目に多いメダルを獲得するという大躍進を遂げました。本大会を終えて、一般の方から「金メダルおめでとう」と声をかけられる機会が増え、改めてパラスポーツに対する注目度の高まりを実感しました。東京2020大会を通じて社会の中にある多様性を認識し、障がい者の存在や障がいに対する理解を深めるきっかけになったと思います。
東京2020大会から1年、パラリンピックでの金メダル獲得という人生最大の目標を達成した僕は、金メダルの「呪い」から解放され、水泳以外のことにも挑戦したいと考えていました。そんな時に東京2020大会のゴールドパートナーであるアシックス様から「東京レガシーハーフマラソン2022」への参加の打診が舞い込みました。僕自身はハーフマラソンどころか、小学生の時に2km程度走ったのが人生最長です。正直不安しかありませんでした。とはいえ、東京2020大会以降もパラスポーツを通じた共生社会の実現を目指し、障がいのある方を含め、多くのランナーが挑戦できる場を創出するという大会の理念には共感していました。パラスポーツの盛り上がりを継続していくためには、また障がいのある人たちに関心を持ってもらうためには、何かしら行動し続けなければと思っていました。アスリートの僕にできるのは、体を動かして挑戦し続けること。金メダルの重圧から解放され、スポーツを通していろんな人の挑戦を後押ししたい、スポーツを通じて共生社会の実現に貢献したいという気持ちを持てるようになっていた僕は、ハーフマラソンという未知の世界に挑むことを決意しました。

コーチ・練習パートナーの森川優さん(写真左)伴走者の福成忠さん(写真右)と コーチ・練習パートナーの森川優さん(写真左)伴走者の福成忠さん(写真右)と コーチ・練習パートナーの森川優さん(写真左)伴走者の福成忠さん(写真右)と

水泳とは全く異なる環境に戸惑いながらも、
1ヶ月半で100kmを走り込む。

2022年10月16日に開催される大会に向けて、水泳・ウエイトトレーニングと並行して、アシックス様の全面的な応援をいただき、週3回のランニング練習を始めました。トレーニングを始めてみると、天候、気温、重力、着地の衝撃……屋内のプールで行われる水泳とは何もかも違う環境に戸惑いを覚えました。水泳以上に考えることや注意することも多く、まずは慣れるところからはじめました。練習を続けていくうちに気づいたのは、伴走者の方と一緒に話しながら走る楽しさ。路面の状況、景色の変化、フォーム、歩幅などについてアドバイスをいただいて、その場ですぐに改善する。水泳ではこうはいきません。8月末からトレーニングを始めて少しずつ距離を増やし、最終的には15kmのテストランにも成功。大会までの約1ヶ月半で100kmを走り込みました。
「東京レガシーハーフマラソン2022」に出場するにあたって、社内からも挑戦を後押しする声が上がり、練習応援ランイベントが開催されました。今まで直接の接点がなかった東京ガスグループ社員やアシックス社員の方も多く参加し、なかには僕の挑戦に影響をうけ、参加を申し込んだ障がいのある社員も。「勇気をもらった。私も、私なりの挑戦を続けたい」と話してくれるなど、挑戦したことは間違いではなかったと改めて感じました。レース当日も応援団を結成して沿道から声援を送ってくれたのですが、直接耳に入ってくる声というのはこれほど大きな力になるのかと驚きました。水泳の場合、スタート前は皆さんの声が聞こえても、泳いでいる最中は聞こえません。仲間の声援は、ハーフマラソンを走る上で大きな力になりました。

練習応援ランイベントでは、アシックス様とともに交流を深めた 練習応援ランイベントでは、アシックス様とともに交流を深めた

沿道に駆けつけてくれた社内の応援団 沿道に駆けつけてくれた社内の応援団

僕の挑戦が誰かの挑戦につながり、
共生社会の実現につながる。

そして迎えた大会当日。アスリートやパラアスリート、市民ランナーの約1万4,000人が国立競技場に集まり、男女、健常者、障がい者の区別なく一斉にスタートしました。結果は、目標の2時間35分を大幅に短縮する2時間23分2秒。前半は練習の成果を感じながらも、後半は経験したことのない疲労感を抱えながらの完走でした。そんななか、すれ違うランナーの方や沿道から声をかけていただけるのが気持ち良く、これだけの大歓声に包まれて走れるのは本当に幸せなことだと思いました。声をかけ合いながら、お互いを励ましながら走るというマラソンならではの醍醐味にも気づくことができ、とても充実した時間でした。
初めてのハーフマラソンへの挑戦を通して伝えたかったのは、多くの人にもう一度東京2020大会の熱狂やスポーツの楽しさを思い出してもらうこと。たとえ障がいがあっても、いろいろなスポーツに挑戦できるということ。僕自信もハーフマラソンを走り終えて、スポーツの楽しさやスポーツができる幸せを思い出すことができました。周りから見たら無謀でも、自分自信が困難に立ち向かうことで、挑戦することの楽しさや可能性を伝えたい。僕の挑戦が共生社会を理解するきっかけとなり、ひいては共生社会の実現への第一歩になればと考えています。

すれ違うランナーや沿道からの声援が力になった すれ違うランナーや沿道からの声援が力になった

大会前日のランイベントに増田明美さんと出演し貴重なアドバイスをいただいた 大会前日のランイベントに増田明美さんと出演し貴重なアドバイスをいただいた

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