森の生き物図鑑
東京ガスの森ではこれまでに、植物351種(植物相調査2018)、哺乳類17・鳥類75(生物相モニタリング2018)、合計447種の生き物の生息を確認しました。
本ページでは東京ガスの森に暮らす動物や鳥、木々などたくさんの生き物たちを、写真とともに紹介します。
植物
ヒトリシズカ
センリョウ科 センリョウ属 Chloranthus japonicus

春が遅い東京ガスの森でも、5月中旬頃にもなると木々が芽吹いて新緑がたいへん美しくなります。
一年の中でも、とても爽やかで過ごしやすい時期です。そんな頃、林の中でひっそりと咲くのがこの花、ヒトリシズカです。
きれいにならんだ4枚の葉の真ん中から、白い穂になった花を咲かせます。「一人静」と名前も可憐なところから、とても人気のある花です。
しかし、名前に「一人」とついていますが、仲良くたくさん並んで咲くことのほうが多いかも…。
(開花時期:5月上~中旬)
たくさん並んで咲くヒトリシズカ
シロバナエンレイソウ
ユリ科 エンレイソウ属 Trillium tschonoskii

普通に見られる草花とはちょっと違った一風変わった姿かたちをしていますので、一度見たら忘れられない花です。
地面から長さ40センチほどの茎を伸ばし、先端に丸い大きな葉を3枚つけ、その葉の真ん中から、白い花を咲かせます。
東京ガスの森では、沢沿いの少し湿ったところで多く見られます。この花、じつは種子が芽生えてから花を咲かせることができるくらい大きくなるまでにたいへん長い年月がかかります。
茎の根元にある球根を毎年少しずつ成長させ、10年近くかかって花を咲かせます。草花って、想像しているより長生きなのです。
(開花時期:5月上~下旬)
ヤマエンゴサク
ケシ科 キケマン属 Corydalis lineariloba

まだ地面には枯れ葉しかみられない早春のころ、まっさきに地面から葉を出し花を咲かせます。
草たけ15センチほどの小さな花で、かわいい赤紫色の花をたくさんつけます。
東京ガスの森では、管理棟前を流れる沢沿いの少し湿ったところに多く見られます。
春に咲く草花は、渓流沿いなどの少し湿ったところに多く見られるので、野草観察するときは、そういう場所を選ぶことがお勧めです。
(開花時期:5月上~中旬)
ハシリドコロ
ナス科 ハシリドコロ属 Scopolia japonica

木々がまだ芽吹く前の4月下旬ころ、東京ガスの森の渓流沿いにたくさん咲いています。
ナスと同じ仲間の植物で、葉と葉の隙間から可愛らしい茶色い小さな花をつけます。
一見、何も変わったところもない植物ですが、この花、じつは毒草で、食べると走り回って苦しむところから、この名がつきました。
地面から出てすぐの新芽が一見おいしそうに見えるので、つい間違えるのだそうですから、要注意です。
(開花時期:4月中旬~5月中旬)
早春、地面から出る新芽
タチツボスミレ
スミレ科 スミレ属 Viola grypoceras

北海道から沖縄まで、さらには人家周辺から山地まで、日本全国でもっともよく見られるスミレです。
スミレの仲間は姿が似たものが多いので、まずこのスミレを覚えておくと、違うスミレに出会ったときに違いがわかるようになります。
これらスミレの仲間には、花を咲かせずに種子を実らせてしまう「閉鎖花」という変わった花をつける生態があります。
それはどう見てもつぼみにしか見えないものなのですが、花開くこともないのに、ちゃんと種子を実らせます。
効率よく種子を実らせるために、じつに不思議な仕組みを備えているのです。
(開花時期:5月上~下旬)
花を咲かせないのに実をつける「閉鎖花」
ヤマホタルブクロ
キキョウ科 ホタルブクロ属 Campanula punctata var. hondoensis

昔、この花にホタルを入れて遊んだところから名がついたそうなのですが、この姿を見ればそれも納得です。
草丈60cmくらいの茎の一番上に、長さ3cmほどの提灯のような花をいくつもぶら下げます。
この花の1つ1つにホタルをうまく入れることができたなら、さぞや美しいことでしょう。
この花が咲くころはちょうどホタルが見られる時期です。
機会があればチャレンジしてみたいものですね。
(開花時期:7月上~中旬)
アヤメ
アヤメ科 アヤメ属 Iris sanguinea

美人のたとえとして使われる慣用句にもあるとおり、アヤメとカキツバタはよく似ていますが、アヤメの花びらには網目模様があるので、すぐに区別がつきます(カキツパタは白い線が1本通っているだけです。この網目模様から「アヤメ」との名がつきました)。
しかしこの網目模様、人間が見分けるためにあるのでなく、この模様の奥に蜜が出る場所があることを、花に訪れる昆虫たちへ伝えるという大切な役割があるのです。
(開花時期:6月下旬)
蜜を求めて花の宮へと進むマルハナバチ
ウバユリ
ユリ科 ウバユリ属 Cardiocrinum cordatum

ユリの仲間にしては花が地味ですが、包み込まれるような柔らかないい香りがしますので、咲いている花を見つけたらにおいをかいでみましょう。
しかし、花は7月下旬の1週間ほどしか咲いていませんので、そのチャンスにはなかなかめぐり合えません。
細長いラッパ型の花を高さ1mほどの茎の先に5回ほど咲かせます。東京ガスの森の入り口から管理棟の間でよく見られます。
(開花時期:7月下旬)
花はとてもよいにおいがします
イタチササゲ
マメ科 レンリソウ属 Lathyrus davidii

花の色が咲き始めのクリーム色から黄色、茶色へと変わっていく、そんな様子をイタチの毛色に見立てて名がつきました。
この花の仲間であるマメ科の植物には、花粉を他の花へとちゃんと運んでくれるマルハナバチなどハチの仲間だけに花の蜜を吸ってもらうための仕組みが備わっています。
花粉を運ばずにただ蜜や花粉を食べてしまうだけの昆虫たちからは、簡単には届かないところに隠しているのです。
東京ガスの森では、管理棟の周辺の林のふちで見られます。
(開花時期:7月中旬~8月下旬)
他の花へ花粉を運んでくれるマルハナバチ
オタカラコウ
キク科 メタカラコウ属 Ligularia fischeri

夏の東京ガスの森で、いちばん目立つ花はこのオタカラコウでしょう。
フキに似た直径30cmほどにもなる大きな葉に、高さが1~2mにもなる茎を伸ばして、鮮やかな黄色の花を20~30個も咲かせます。
「雄宝香」と書かれ、根が竜脳香(宝香)のにおいがするところから名がついたといわれています。
東京ガスの森では沢すじなどの湿ったところで見られます。
(開花時期:8月下旬~9月中旬)
花は大きく、直径約4cm
フシグロセンノウ
ナデシコ科 センノウ属 Lychnis miqueliana

何の変哲もない普通の花に見えますが、じつはこの花には蜜をチョウだけに吸ってもらうためのちょっとした仕組みが備わっています。
それは、花びらの下のがくの部分がとても長い筒状になっているのです。このため、口が長いストローになっているチョウしか蜜を吸うことができません。
どんな昆虫でも蜜を吸えるようにしておくと、蜜だけ吸って花粉を運んでくれない場合があります。
それを防ぐために、このような仕組みになっているのです。
東京ガスの森では管理棟のあたりと沢沿いの道でよく見られます。
(開花時期:8月中旬~9月中旬)
オレンジ色がとてもきれいな花
ツリフネソウ
ツリフネソウ科 ツリフネソウ属 Impatiens textorii

この独特の形をした花は一度見れば忘れられません。
横長の丸い袋のような形に、端がまるで尻尾のようにくるりと丸くなっていて、この先端に蜜をためています。
他の花へ花粉を運んでもらうために、この蜜で花へ昆虫をおびき寄せているのですが、この部分を私たち人間がかじってみても甘さを味わうことができるので、興味のある方(食いしん坊の人?)は、ぜひ一度お試しあれ!
東京ガスの森では、湿った沢すじなどで多く見られます。
(開花時期:7月下旬~8月下旬)
横から見ると舟のような形の花
ヤマハッカ
シソ科 ヤマハッカ属 Rabdosia inflexa

ハッカと同じシソ科の仲間で、姿かたちがハッカに似て山に生えるところから名前がつけられました。
似ているのは姿かたちだけで、ハッカのようないいにおいはしないのです。ひょっとしたらいいにおいがするものもあるかもしれないと思って、何度も試してみたのですが、残念ながら、一度もよいにおいがするものに出会ったことがありません。
たくさん咲かせる小さな青紫色の花がきれいです。
東京ガスの森では、管理棟から見晴らし展望コースのあたりでよく見られます。
(開花時期:8月上旬~9月下旬)
セキヤノアキチョウジ
シソ科 ヤマハッカ属 Rabdosia effusa

関東地方と中部地方だけでしか見ることのできないちょっと珍しい花です。
青紫色の花がとてもきれいで、少し湿ったところに生えています。
東京ガスの森では、管理棟周辺と急坂を上る道沿いでよく見られます。
この花の仲間であるシソ科の植物には共通する面白い特徴があって、茎はとてもきれいな真四角になっています。
まるで図ったように四角いので、ちょっと不思議なくらいです。
食用になるシソも茎を触ってみると真四角なことがよくわかるので、機会があればぜひ試してみましょう。
(開花時期:9月上~下旬)
ヤマトリカブト
キンポウゲ科 トリカブト属 Aconitum japonicum

咲く花も少なくなる晩秋のころ、濃い青紫色の花を咲かせます。
トリカブトという名前は、花の形が鳥帽子(えぼし。昔の人が頭にかぶったかぶりもの)に似ているところからついたといわれています。
ちなみにこの烏帽子のような形をした花びらの奥に蜜が隠されていて、花を訪れた昆虫は花の入り口にある花粉を体につけなければ蜜にありつくことはできない仕組みになっています。
この花、草全体にアルカロイドという猛毒があることで有名です。
春に山菜と間違えて中毒になったという話をしばしば聞きますので、注意が必要です。
(開花時期:9月上旬~10月上旬)
ヘビイチゴ
バラ科 ヘビイチゴ属 Duchesnea chrysantha

名前にヘビとつくために、この花には触るのですら、ちょっとおっかなく思えてしまいます。しかし、よく見ると、小さな黄色い花もかわいらしいものです。また、真っ赤に実る果実もまったくの無毒ですから、食べても大丈夫です。
私も一度、ためしに口に入れてみたことがあるのですが、果実の中身はスポンジのようになっているだけなので、味もほとんどなく、ぜんぜんおいしくありませんでした…。
この森では、日当たりの良い道ばたなどで見かけます。
(開花時期:6月上旬)
真っ赤になって、きれいな果実
ヤマオダマキ
キンポウゲ科 オダマキ属 Aquilegia buergeriana

ヤマオダマキは、この東京ガスの森では6月下旬頃から7月上旬のちょうど梅雨頃に花を咲かせます。
うすい黄色の花には気品が漂い、霧がたなびく森の中、かすかに吹く風にいつまでも揺れています。
庭に植える園芸のオダマキと同じ仲間の植物です。
このヤマオダマキ、花の形がとても印象的です。花の上に細長く伸びる部分を距(きょ)と呼ぶのですが、この先端には、昆虫を呼び寄せるための蜜が入っています。
(開花時期:6月上旬~7月上旬)
オカトラノオ
サクラソウ科 オカトラノオ属 Lysimachia clethroides

白く長い花の穂を、トラの尻尾にたとえて名前がつけられました。その姿は一度見ると忘れられないくらい、印象的です。
この穂は、近づいてよく見ると、たくさんの小さな星形の花が集まってできていることがわかります。それもまたなかなか美しいものですから、機会があれば、ぜひ近寄って見てみましょう。
草丈は60センチほどで、数本がかたまって咲くことがよく見られます。東京ガスの森では、ちょうど梅雨明けの7月下旬頃に花を咲かせます。
(開花時期:7月下旬)
小さな星形の花が集まっています
シシウド
セリ科 シシウド属 Angelica pubescens

このシシウドは、酢味噌和えなどで食卓にものぼる「ウド」に姿は良く似ているのですが、残念ながら、こちらは食べてもおいしくありません。
山や高原などに生え、大きなものでは高さ2メートルをこえるほどにも成長します。このシシウドの花は、小さな花が何千と集まってできています(下写真)。
蜜をなめに来る昆虫たちに大人気で、いつもハナカミキリやハナアブなどが大勢花へと集まってきています。花粉を他の花へしっかり運んでもらうために、昆虫たちをたくさん誘きよせているのです。
(開花時期:8月上旬~9月上旬)
小さな花がたくさん集まってできた花
ゴマナ
キク科 シオン属 Aster glehni var. hondoensis

ゴマナは、この東京ガスの森では秋いちばん遅くまで花を咲かせている植物です。
茎の先端に、直径1.5センチほどの小さな花をびっしり咲かせます。葉がゴマの葉に似ているところから名前がついたといわれています。花が咲き終わったあと、一つ一つの花に綿毛のついた実をたくさんつけます。
光が当たると、きらきら輝いてとてもきれいです。花が終わったあとも楽しませてくれる花です。
(開花時期:8月下旬~10月上旬)
綿毛のついた実がたくさんつく