R&D
水素ステーション
取り組みの背景
(1)豊洲と千住の2カ所で水素ステーションを営業しています
東京ガスでは、2002年から燃料電池(Fuel Cell、略称FC)自動車に水素を充填する水素ステーションの技術開発に取り組んでおり、現在、豊洲と千住の2か所で水素ステーションを運営しています。
豊洲水素ステーション
千住水素ステーション
(2)水素ステーションの敷地内で水素を製造しています
水素ステーションには、下表のようにいくつかの方式がありますが、東京ガスでは、水素ステーションの敷地内で水素を製造するオンサイト方式を採用し、都市ガスから水素を製造しています。
出典:日本ガス協会https://www.gas.or.jp/oshirase/suiso.pdf
(3)バスやトラックへの水素充填も行っています
豊洲水素ステーションではFC乗用車やFC小型トラックに加えてより充填量の多いFCバスの大規模受入が可能です。千住水素ステーションではFC乗用車、FC小型トラックを充填することができます。
取り組み概要
(1)豊洲では主要設備を2重化しています
豊洲水素ステーションは圧縮機やディスペンサー等の主要設備を二重化しています。このため、法定点検による休業が一般的な水素ステーションでは3〜4週間程度であるのに対し、豊洲水素ステーションでは休業を数日程度に短縮しお客さまの利便性を高めています。
(2)環境負荷の低い方法で水素を製造しています
①カーボンオフセット都市ガスを活用しています
豊洲水素ステーションでは、カーボンオフセット都市ガスを原料として水素を製造しています。さらに、ステーション内の電力は、実質再生可能エネルギー電力(非化石証書(再エネ指定))を使用しています。
②水電解による水素製造を行っています
千住水素ステーションでは、2023年に、AEM水電解装置を使用した水素の製造・販売を国内で初めて開始しました。水電解で水素を作る方法は、都市ガスから水素を作る方法とは異なり、水素の製造工程でCO₂が発生しません。また、水電解に使用する電気も実質再生可能エネルギーの電気を使用することで、より環境負荷の低い水素の供給が可能となりました。AEM水電解装置は、他の水電解方式と比べて新しい技術であることから、本取り組みを通じてシステム構成や運転管理等の知見獲得を進めています。
導入したAEM水電解装置と水素タンクの全景
コンテナ内のAEM水電解装置
<AEM水電解とは?>
AEMはアニオン交換膜(Anion Exchange Membrane)の略で、水を電気分解して水素を製造する方式の一つです。高額な貴金属触媒を必要としないことから、将来的なコストダウンが期待されています。
働く人の声
■担当している業務
水素ステーションの事業運営・技術課題対応
■印象に残っている仕事は?
2020東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて当社で4カ所目となる豊洲水素ステーションの建設です。プロジェクトリーダーとしてプロジェクト全体のマネジメントをしました。公共交通機関として運行されるFCバスへ水素供給するインフラであり、高い稼働安定性と供給能力が求められることから、国内では初となる高耐久圧縮機の採用や、設備の二重化、設備運転の自動化など国内の水素ステーションでは前例のない技術・システムや、これまでの運営で得た知見等を多数導入しました。建設中はさまざまな課題が発生しましたが、プロジェクトメンバーをはじめ工事会社様、機器メーカー様とも一体となって解決に取り組み、2020年1月に無事開所式を迎えることができました。その後の運営では国内でも有数の稼働安定性と水素供給量を実現することができました。
■所属グループでの働き方は?
水素ステーションの運営管理や設備・現場課題への対応をはじめ中⻑期視点での技術検討や規制課題への対応など、幅広いテーマについてメンバーと知恵を出し合いながら将来の水素社会実現に向けて取り組みを進めています。
水素・カーボンマネジメント技術戦略部 水素ソリューショングループ
南形 英孝