R&D
洋上風力:セミサブ型浮体式基礎製造・設置の量産化・低コスト化
浮体式洋上風力発電とは?
風力発電は、風の運動エネルギーをプロペラの回転エネルギーに変えることで発電します。経済性の面では陸上に風車を設置する方が安価ですが、適地が限られているため、風況が強く安定した洋上での開発が進められています。
とりわけ遠浅な海域の少ない日本においては、浮体式洋上風力の導入ポテンシャルが大きく、注目されています。
Principle Powerより提供
取り組みの背景
東京ガスは、グループ経営ビジョン「Compass2030」で「CO₂ネット・ゼロ」への移行を掲げ、2030年における国内および海外での再生可能エネルギー電源取扱量600万kWの実現を目指します。
国内・海外での再エネ電源取扱量の拡大
1.バンカブルな浮体式基礎システム技術 ウインドフロート(WindFloat®)
2020年5月、東京ガスは世界トップレベルの技術成熟度を誇る浮体式基礎技術を有するプリンシプル・パワー社に出資し、主要な3株主のうちの1社となりました。
Principle Powerより提供
2.国内における浮体式基礎の低コスト化・量産化の研究開発
2022年に採択された「グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」にて、プリンシプル・パワー社の浮体基礎システムWindFloat®技術による、国内での低コスト化・量産化の研究開発を実施しました。
3.世界でも希少な操業中の浮体式洋上風力への事業参画
2024年8月、ポルトガルで稼働中の浮体式洋上風力発電所「Wind Float Atlantic」への事業参画に合意しました。本事業参画を通じて、浮体式洋上風力発電の操業経験を通じたノウハウを蓄積し、特にデジタルや次世代技術を駆使した先進的なO&M手法の習得を目指します。
Ocean Winds/Principle Powerより提供
取り組み詳細
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(「NEDO」)が助成する「グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」の浮体式基礎製造・設置低コスト化技術開発事業を実施しました。
テーマ | 早期社会実装に向けたセミサブ型浮体式基礎製造・設置の量産化・低コスト化 |
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実施期間 | 2022年4月~2024年3月 |
開発内容 | 1. 浮体式基礎の最適化 風車の大型化(15MWクラス)および日本の厳しい気象・海象条件に対応した浮体式基礎の最適化設計 2. 浮体式基礎の量産化 連続製造に適した浮体式基礎の設計、量産化手法の確立 3. ハイブリッド係留システムの最適化 鋼製係留索と合成繊維係留索を組み合わせた浮体式基礎のハイブリッド係留索の最適化設計 4. 低コスト化施工技術の開発 日本の厳しい気象・海象条件に対応した低コスト施工技術の開発 |
主な成果
1.浮体式基礎の最適化
- 対10MWクラス風車用浮体式基礎比でのMWあたりの重量軽量化、浮体式基礎の主要部材であるカラムやビーム等の軽量化を達成。
OrcaFlexによる動揺計算
動揺解析に基づく構造計算
MWあたりの重量(ton)の比較
2.浮体式基礎の量産化
- 年間30基設置に向け、10haの敷地を想定した量産化手法を確立。
- 実スケールのモックアップ製作を通じ、量産化手法の妥当性を確認。
量産化手法のイメージ(左)
実スケールモックアップ外観(右)
3.ハイブリッド係留システムの最適化
- “ハイブリッド係留”vs“鋼製係留”で、使用チェーン径・⻑さ・重量、係留施工日数、係留システムコストの比較を実施。従来手法との比較により本研究で開発した手法で作業時間が削減できることを確認。
ハイブリッド係留のイメージ
作業時間比較の結果
4.低コスト化施工技術の開発
- ケーススタディーの結果、岸壁で浮体式基礎を係留し、ジャッキアップ作業構台で風車組立を行うケースで最もコストが低いことを確認。
- 施工シミュレーションによりテンショナーの有効性を確認。テンショナーを使用することで、施工期間の短縮や、把駐力試験時のウィンチ能力や主機出力などの必要船舶能力の低減が可能。
ケーススタディー条件
把駐力試験のイメージ
【今後の取り組み】
本開発の成果を活用し、政府が掲げる「グリーン成⻑戦略」の重点分野の一つに位置付けられた洋上風力発電のコスト低減による最大限の導入および脱炭素社会の実現に貢献していきます。