デジタルイノベーション

LNG基地におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の取り組み

はじめに

東京ガスのエネルギー生産本部では、LNG基地・発電所・本社が一体となって、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいます。DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。*1

LNG基地・発電所での様々なニーズに対して、最新のデジタルツール・テクノロジーを適用する現場実証試験も多数実施しながら、デジタルツール・テクノロジーを導入・活用し、業務プロセスの変革を推進しています。

*1 (出典) 経済産業省 『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』 (2018.12)

ヘッドマウントディスプレイで現場作業をサポート

従来、現場作業者の連絡手段はPHS等に限られており、現場の詳細状況を声だけで伝えるのに日々苦労していました。

その改善のため、ヘルメット装着型のディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)を導入し、屋外(現場)と屋内とで音声だけでなく映像も共有できるようにしました。このことで、円滑な意思疎通が可能となり、事業所建屋から現場作業者への的確なサポートを実施できるようになりました。

また、この応用として、2020年の新型コロナ情勢で遠隔地への出張が困難となる中で、本社や在宅勤務先から現場の施工担当者への遠隔サポートも行っています。

ヘッドマウントディスプレイで現場作業をサポート

パトロール支援システムで現場巡視業務を効率化

従来、現場巡視業務(パトロール:約3回/日)では、毎回チェックシートを紙面で準備し、巡視後にそのチェックした結果を電子ファイルに転記していました。

その業務を、防爆型スマートフォンからアクセスできるクラウド上のパトロール支援システムで実施可能としました。これにより、本業務の完全電子化が実現され、紙面から電子ファイルへの転記作業も無くなって業務効率化が実現されています。

パトロール支援システムで現場巡視業務を効率化

車番認証システムで入構車両受付を効率化

基地や発電所ではローリー車や工事車両等の入構管理を行っていますが、従来、警備員が1台1台車番を確認して、運転者が記帳していたため、特に朝は受付待ちの車両が行列となることがありました。

その改善のため、カメラ画像を用いてナンバープレートを自動認証して、事前にクラウド上で申請・承認された車両情報との自動照合を実施するようにしました。これにより、入構管理・受付業務の効率化が実現されています。

車番認証システムで入構車両受付を効率化

RPAで定型業務を自動化・効率化

入力・転記作業やファイル操作等の定型業務をRPA(Robotic Process Automation)で自動化させています。

例えば、複数システムから基地設備の管理指標のグラフを作成する業務等、手間がかかっていた定型業務をRPAで置き換えることで、判断や方針検討といった創造的な業務により多くの時間を充てる等、業務全体の効率化・負荷低減・品質向上を図っています。

RPAで定型業務を自動化・効率化

貯蔵品へのRFIDタグ導入で棚卸業務を効率化

基地では安定操業を確保するために必要な予備品等を貯蔵品として保管しています。

従来は、定期的に資産の棚卸業務で経理担当者が一つ一つの貯蔵品を目視でチェックしていましたが、貯蔵品にRFID(Radio Frequency Identification)タグを貼付して、専用リーダーで複数の貯蔵品タグ情報を同時・瞬時に読み取れるようにしました。これにより、倉庫内の貯蔵品有無が容易に把握可能となり、棚卸業務が効率化されます。

貯蔵品へのRFIDタグ導入で棚卸業務を効率化

ドローンによる高所設備点検テストを実施

設備点検の高度化に向けて、ドローンによる高所設備点検の実証試験を行っています。稼働中の設備・機器・配管類に対する安全対策を最優先としながら、3Dモデルの作成やカメラ画像による腐食確認の有用性を検証しています。

ドローンによる高所設備点検テストを実施

世界最高水準のデジタルターミナルの実現を目指して

今後、東京ガスのエネルギー生産本部は、DXにより、50年以上にわたる世界トップクラスのLNGの技術・経験・ノウハウを「究め込む」とともに、新たなオペレーション&メンテナンス(O&M)を「切り拓く」ことで、製造・発電部門の「安心・安全・信頼」と競争力を今まで以上に高め、お客さまへ新たな価値を創出・提供していきます。その目指すところは「世界最高水準のデジタルターミナルの実現」です。

デジタルイノベーションとともに未来へ

新たなエネルギーシステムの実現に向けて

分散型エネルギーリソース活用の取り組み

背景

東京ガスでは、2019年に発表した中期経営ビジョンCompass2030に記載したように、太陽光発電(PV)・蓄電池・ 電気自動車(EV)等の分散型エネルギーリソース(DER)を積極的に活用し、再エネと制御性に優れクリーンな天然ガスを組み合わせることで、安定的かつ低廉なエネルギーの供給を目指しています。
DERを積極的に活用していくために、足元では家庭用蓄電池制御技術の開発、自己託送の実証試験、調整力事業やVPP実証への参加(コージェネと蓄電池を組合せた技術の実証)などに取り組んでいます。

分散化エネルギーリソース活用の絵姿分散化エネルギーリソース活用の絵姿

取り組み事例1:家庭用DER制御プラットフォームのNER社共同開発

電力システムの変革と、求められる推進力

持続可能な社会に向けてCO2ネット・ゼロを推進する上での一つの鍵は、これまでの大規模発電所を中心とした集中型から、デマンドサイド(需要家側)が主役の分散型の電力システムへの変革であると考えられます。この変革をリードすることは、デマンドサイドに強みをもち、新電力として多くのお客さまに選ばれている当社にとって、大きな使命であると言えます。

電力システムの変革と、求められる推進力

分散型社会の実現に向けた事業のイメージ

デマンドサイドが主役の社会に向けて、太陽光発電(PV)や蓄電池等の分散型エネルギーリソース(DER)を活用した事業を積極的に推進していきます。また、DERは需要家の電気料金を最小化する制御や電力系統が不安定なときに蓄電池から電力を供給する制御など、時と場合に応じて適切に制御することで経済価値や環境価値を大きく高めることができます。したがって、このような制御を行うためのシステムについても、検討・開発を行っていきます。

◆想定する事業イメージ:
PVに加えて蓄電池等エネルギーを貯めることが出来る設備をお客さま先に設置し、センターサーバーから遠隔制御することにより、PV由来の環境にやさしい電力を最大限活用でき、これまでよりも安価な電力の供給やCO2排出量の少ない電力を柔軟に供給するなど様々な価値を創出します。例えば2030年までに戸建住宅のうち約2百万件に対しこのようなエネルギーシステムを提供することで、年間約6百万トンのCO2削減に貢献することができます。
(注:マージナル係数により評価)

想定する事業イメージ

ネクストエナジー・アンド・リソース社への出資と共同開発

DERを制御するシステムを、オープンイノベーションによって効果的に共同開発するため、 当社は2019年6月末にネクストエナジー・アンド・リソース株式会社(NE社)に対し出資を行いました。本件は、当社とNE社との対話の中で、両社が補完し合って分散型社会に向けた社会変革をリードしていくというビジョンに至り、深く共鳴したことにより実現しました。
両社は今後共同で、電力システムの安定化や再生可能エネルギーの普及に貢献するオープンなIoTプラットフォームを開発していきます。

開発するIoTプラットフォームの適用範囲(当社プレスリリースより) 開発するIoTプラットフォームの適用範囲(当社プレスリリースより)

取り組み事例2:VPP技術の開発・実証

東京ガスグループでは、お客さまへの安価かつクリーンな電気の供給を実現するため、複数の発電設備をコントロールし、効率的に活用するVPP(Virtual Power Plant)技術の開発・実証に取り組んでおります。その取り組みの一環として、太陽光発電設備が導入された東京ガスグループの複数施設間で、電気を融通する実証を行っています。(横浜研究所、平沼ビル、幕張地域冷暖房センター)
電気は消費量と供給量が常に一致している必要がありますが、太陽光発電などの自然エネルギーは天気によって大きく変動するため、自然エネルギーを有する施設間での電気の融通により電気の供給量と消費量を合わせることは非常に困難です。
実証では建物の電気使用量や太陽光発電の発電量を高精度で予測することで、供給量計画の精度を高めています。供給量計画の通りに発電設備の出力を制御しますが、それでも細かな変動は残るので、それは蓄電池を用いて変動を吸収することで、天候の急激な変化による電気使用状況や太陽光発電の変動に対応した電気の最適運用を実現しています。
実証の取り組みを応用した環境性・経済性に優れた自然エネルギーを含むシステムによる電気の供給によって、お客さまへ安価かつクリーンな電気を供給すると同時に、持続可能な社会への貢献を目指して参ります。

想定する事業イメージ

収集したデータを元に、横浜研究所と平沼ビルの太陽光発電量、建物電力負荷(電気消費量)を予測し、幕張地冷コージェネレーションシステム(CGS)からの送電量を30分ごとに調整(電気の消費量と供給量の常時一致(同時同量)を目指す計画値を決定) 収集したデータを元に、横浜研究所と平沼ビルの太陽光発電量、建物電力負荷(電気消費量)を予測し、幕張地冷コージェネレーションシステム(CGS)からの送電量を30分ごとに調整(電気の消費量と供給量の常時一致(同時同量)を目指す計画値を決定)

計画値と実際の受電量とにずれが生じた場合は、蓄電池の充放電により高精度の同時同量を実現 計画値と実際の受電量とにずれが生じた場合は、蓄電池の充放電により高精度の同時同量を実現

東京ガスグループ独自ロジックによる受電量予測と実績の比較東京ガスグループ独自ロジックによる受電量予測と実績の比較

蓄電池制御なし 同時同量の実現結果 蓄電池制御なし

蓄電池制御あり 同時同量の実現結果 蓄電池制御あり

蓄電池の設置状況 蓄電池の設置状況

太陽光発電の設置状況 太陽光発電の設置状況

主要設備概要

主要設備 設備能力 設置場所
太陽光発電 50kW 横浜研究所
蓄電池 100kW/255kWh 横浜研究所
太陽光発電 10kW 平沼ビル
CGS(ガスエンジン) 8,730kW×1基 6,970kW×1基 今回の実証で用いる電気は最大約1,000kW 幕張地冷

EV・モビリティの取り組み

背景

EVはガソリン車と比較してランニングコストが安い、騒音や振動が少ない、排気ガスが発生しない等の特徴があり、コストの大部分を占める電池価格の低減に伴って、日本では2020年代後半頃からEVの台数の増加の伸びが拡大してくると予想されています。
東京ガスでは、EVに関するサービスを提供することで、建物だけでなく、モビリティ含め、お客さまのエネルギーに関わる多様なニーズに対応していくことを目指しています。
足元では、EVを導入する場合に課題となる充電インフラ設備の整備や、EVの充放電マネジメントによりEV所有者がベネフィットを得られるようなソリューション開発に取り組んでいます。

取り組み事例1:充電マネジメント

例えば、社用車としてEVが導入されると、EVが充電器に接続されるのは多くの場合、業務が終了する夕方に集中することが考えられます。この時間帯は建物の電力需要のピークと重なるため、電力使用量が契約電力を超えてしまい、コストがかかってしまいます。
そこで、各EVの充電のタイミングを電力需要のピークから避けることや、契約によっては電力料金の安い時間帯に充電を行うなど、EVの充電タイミングを制御する充電マネジメントを行うことで、電力ピークの抑制とコストの低減を行うことができます。
東京ガスでは、EV充電設備導入によるエネルギーコスト上昇の抑制や社有車EV化計画の支援などEV充電マネジメント事業を米国で展開しているElectriphi社に出資し、事業ノウハウを吸収してお客さまのエネルギーコストの低減や最適なEV充電設備の構築に関するソリューションの共創を目指しています。

充電マネジメントのイメージ充電マネジメントのイメージ

取り組み事例2:充放電マネジメント

EVは充放電器を活用することで、災害時の電源として活用することや、日中の建物の電力をEVで賄うことで電力コストが低減する等、さらなるベネフィットが期待できます。
一方で、放電機能も活用する場合、EV利用者のライフスタイルによっては、放電したいときにEVの充電量が枯渇するといった事態が起きないように、より高度なマネジメント技術が必要となります。
東京ガスではその課題をクリアし、EVによってお客様の暮らしをより安全で豊かにできるようなEV関連サービスの検討を行っております。

充放電マネジメントのイメージ EVによるピークカットイメージ

取り組み事例3:実証試験サイト

東京ガスでは、上記の取り組みに関する実証サイトを千住事業所に開設しました。充放電器(5台)等の設備を設置し、実際に社用車として使っているEVを用いて、遠隔で充放電のタイミングを制御する実証試験を進めています。

千住事業所での実証サイトの様子千住事業所での実証サイトの様子

データアナリティクス

LNGバリューチェーンのデジタル化推進

東京ガスでは、東南アジアやオーストラリア、また北米をはじめとした、世界の様々な地域からLNGを調達しており、日本でも有数の多様なLNG長期契約を保有しています。調達したLNGは東京ガスのLNG基地で気化され、都市ガスや発電所向けのガスとして製造されます。都市ガスは導管を通じ様々なお客さまへ販売、また一部は自社で保有する発電所に輸送され、さらに発電所で製造された電気についてもお客さまや電力市場へ販売しています。
このように、東京ガスではLNGの調達から個々のお客さまへのガス・電気の販売に至るまで、LNGバリューチェーンの上流から下流へと幅広い機能を有しています。この機能間のシナジーを増大させ、バリューチェーンの価値を最大化するために、デジタル技術を活用し以下のような取り組み実施しています。

(1)各機能(トレーディング・原料調達、製造・発電、カスタマーソリューション [小売] など)が保有する情報をデジタル基盤に統合的に管理し、タイムリーな情報連携を実現
(2)AIなどアナリティクス活用による更なる業務オペレーションの効率化や高度化を実現

LNGバリューチェーンのデジタル化推進

アナリティクス活用 ~AI活用事例(需要・価格予測)~

ガス・電力事業を営む上で、将来のガス・電力需要や市場価格を正確に把握することは重要です。そこでAIを活用することでこれらの予測精度の向上を目指しています。
気象情報や燃料価格、市場価格といった社外データ、また過去の需要実績等の社内データをデータ収集集した上でデジタル基盤に蓄積していきます。そして、これらを基に予測モデルの最適なインプットを選択、あるいは需要家別にグルーピングを行うなど、AIを活用することで複数の予測手法を構築・比較しながら、需要や市場価格の予測を実施します。
今後規制緩和や自由化の進展に伴い、将来の不確実性はどんどん増していくため需要や価格を正確に予測することはより一層重要になっていきます。このようにデジタル基盤やAIを活用することで、最適な調達計画や需要、価格に応じた販売計画の立案をサポートし、より一層戦略的な事業運営の実現を推進しています。

アナリティクス活用 ~AI活用事例(需要・価格予測)~

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