技術開発

ガススマートメーターシステムの開発

東京ガスネットワークでは、通信機能付きメーター、広域通信ネットワーク、Uバスエアネットワーク、センターシステムにより構成されるガススマートメーターシステムを開発しています。技術仕様を他社と共同検討し、国内において業界標準化を行いました。Uバスエアの通信仕様をIEEE802.15.4-2015に提案して規格文書に盛り込むなど、国際的な標準化にも取り組んでいます。

概要

東京ガスネットワークは、ガス料金を算定するために、毎月1回検針を行っています。毎月の検針では、検針員がお客さま宅を訪問して、ガスメーターの指示数を読み取り、ご使用量を確認しています。
しかし、訪問による検針は、オートロックマンション等の高セキュリティー化された物件の増加や、検針業務の効率化、将来の労働人口の減少に伴う検針員の不足リスクへの対策等の課題があり、スマートメーターを利用した遠隔検針のニーズが高まっています。また、スマートメーターの導入により、遠隔開閉機能等を利用した導管ネットワークの保安・災害の耐性向上やガス使用量データを利用した見守りや省エネ等の新たなサービスの創出が期待されています。
これらに応えるため、東京ガスネットワークでは、他ガス事業者様やメーカー各社様と共同で、ガススマートメーター(遠隔検針、遠隔開閉、計測データの収集・発信の機能を持つガスメーター)を開発しています。

ガススマートメーターシステムの全体構成 ガススマートメーターシステムの全体構成

Uバス

ガススマートメーターシステムを構成する中継器(広域無線端末)、通信ユニット(多段中継無線端末)、通信機能付きメーターは、お互いにUバスという通信規格で接続されています。
Uバスは、従来の都市ガスメーターの通信インターフェース(Aライン)よりも通信速度を高速化したことに加え、パケット通信方式を採用した新しい通信インターフェースです。LPガス業界と共同で仕様検討を実施し、Uバスエア(後述)と合わせてNPO法人テレメータリング推進協議会で標準化されています。仕様が標準化されたことで通信端末の普及促進が可能となり、量産化による通信端末のコストダウンが期待されています。
Uバスは新しい世代の家庭用ガスメーターに搭載されているほか、東京ガスネットワークでは、ガスメーター以外にも、Uバスを搭載した機器を開発しています。

Uバス仕様

レイヤー 主仕様 特徴
物理層 バス接続方式 多種の機器の共同利用が可能
物理層 伝送速度の高速化
(9,600bps)
高速通信(現行の約30倍)による応用分野拡大、サービスレベルの向上
データリンク層 パケット通信 異通信速度端末の相互通信性向上
回線の利用効率の向上
障害耐性の向上
データリンク層 パケット長の固定化
(104キャラクタ/パケット)
端末機器の処理効率の向上
即応性向上(1パケット:0.12sec)
ネットワーク層 メーターゲートウェイ機能 広域無線、多段中継無線に対応可能なアドレッシングの実現
ネットワーク層 簡易アドレッシング 端末機器設置時の施工性の向上
セキュリティ 標準暗号化の採用 認証、秘匿性の向上

中継器

中継器は、お客さま宅のガススマートメーターと東京ガスネットワークのセンターシステムとをLTE通信網を介して繋ぐ端末です。
ガスメーターの周辺には電源がありませんので、中継器は電池で動作しなければなりません。しかし、電池が切れた際に、電池交換のためにお客さま宅に伺うことは、お客さまにご迷惑をおかけするだけでなく、業務効率化の点でも望ましくありません。ガスメーターは、計量法により10年に1度交換する必要がありますので、ガスメーターの交換にあわせて中継器のメンテナンス作業を行うことができれば、お客さま宅への訪問頻度を下げることができます。
そのため、中継器などのガススマートメーターシステムで使われる通信端末は、電池で10年間動作することが求められています。
東京ガスネットワークでは、国際標準化されているCat.1+eDRXのLTE規格により省電力化を実現した、10年間電池駆動が可能な中継器を開発しました。

中継器のシステム構成イメージ 中継器のシステム構成イメージ

通信ユニット

通信ユニットは、Uバスエア規格に準拠した無線端末です。
Uバスエアは、ガスメーター間をマルチホップ通信により中継する、920MHz帯を使用し超低消費電力を実現した近距離無線通信方式です。無線端末間で、データをバケツリレーのように転送することができます。例えば、LTEの電波環境の良い場所に設置された中継器から、通信ユニットでデータを転送することによって、建物の陰など、広域通信ネットワークのカバーエリアから外れたガスメーターにもデータを転送することが可能です。無線端末を適材適所で組み合わせて各無線端末の長所を活用することにより、できるだけ広いエリアで通信することができます。
また、Uバスエアは、網の目のようなメッシュ型の無線ネットワークを構築できますので、通信環境が悪化した際にデータ転送経路を迂回させることができ、より高い通信信頼性を実現しています。例えば、通信ユニットの施工後に、周囲に高層ビル等の電波を遮る建物が建設されても、迂回した通信経路が自動的に設定されます。
Uバスエアの仕様は、IEEE802.15.4-2015規格を使用し、Uバスと合わせてNPO法人テレメータリング推進協議会の標準仕様として採用されています。
通信ユニットも中継器と同様に電池で10年間動作することが求められますので、東京ガスネットワークでは、全端末が間欠動作しながらマルチホップ通信できるUバスエアの特長を活用し、10年間電池駆動が可能な通信ユニットを開発しました。

Uバスエア仕様概要

周波数 920MHz帯(ARIB STD-T108準拠)
出力 20mW、10mW、1mW
通信速度 100kbps
ネットワークトポロジ メッシュ。1ネットワークあたり最大50台収容
中継段数 最大15段

通信ユニットの特徴 通信ユニットの特徴

東京ガスネットワークでは上記のような技術開発のほかに、下記のような取り組みも行っております。

  • デジタル技術による、運転・メンテナンスの効率化・高度化
  • ガス分析・材料評価・化学分析の研究開発
  • ガスの漏洩・拡散・爆発に関する研究開発
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