ガスで発電
資源を無駄にしないCGS。
ガスで発電——。そう聞くと、多くの人は火力発電所を思い浮かべるかもしれない。しかし、東京ガスが目指したのは発電にとどまらないガスの使い道だ。LNG(液化天然ガス)で日本のエネルギー供給に新たな道筋をつけた同社の次の挑戦は、「限られた資源をいかに使い切るか」。この問いへの答えの一つが、ガスコージェネレーションシステム(CGS)だった。
01 電気も熱も 無駄なく
CGSは、発電の過程で生じる熱も活用することで電気と熱の両方を無駄なく利用する仕組みだ。需要地とは遠く離れた大規模発電所と違って分散型発電と呼ばれるCGSは需要地で発電するため、排熱を冷暖房等に活用できるほか、送電時に発生するロスも減らすことができ、排熱を利用しない火力発電所の総合効率が約40%なのに対し、CGSは約75%。つまり、同じ量の燃料で多くのエネルギーを利用でき、結果としてCO2の排出を抑制することができる。そんなCGSは、ガスパイプが張り巡らされていた欧州では古くから普及していたが、日本に導入されたのは1981年のこと。ここにも、東京ガスの新たな挑戦があった。
02 初号機が示したエネルギーの未来
1970年代、世界は二度の石油危機に見舞われ、資源の乏しい日本にとってエネルギーの効率利用は大きなテーマとなっていた。1981年、東京ガスは旧国立競技場に日本初となる天然ガスのCGSを導入する。初号機の発電能力は128kW。電力は競技場の冷凍設備に、排熱はスポーツ施設の給湯に使われた。これ以降、CGSは高効率の新しいエネルギー供給システムとして認知され、資源を効率的に利用したい産業界にその経済性が注目され、急速に広がっていく。1986年には、半導体基板工場にCGSを導入し、さらなる普及を目指して高効率ガスタービン「Gas Power 1000」の開発にも成功。コンパクトな上、1,000kWという出力が産業用として汎用性が高かったため、製パン工場やビール工場などに次々と導入されていく。しかし、課題が残った。CGSは熱と電気を同時に発生させるシステム。熱と電気を利用するバランスによって導入に踏み切れない工場が多かったのだ。そこで、1996年に航空機転用型小型ガスタービンを利用した熱電可変システムを開発。CGSが一段と広がるきっかけとなり、2004年には東京ガス管内での稼働容量が100万kWを突破した。CGSの導入と普及は、単なるエネルギー供給の選択肢に留まらず、新たなエネルギーのあり方を社会に提示したできごとだったのだ。
03 家庭用は「100円ライター」が後押し
CGSはさらに広がっていく。技術の小型化と高効率化が進み、家庭にも広がる転機となったのが家庭用燃料電池エネファーム。都市ガスから取り出した水素で発電し、発電時に生まれた熱を給湯に利用するCGSだ。しかし、実用化の道のりは平坦ではなかった。家庭に設置する機器として普及させるには、安全性への理解を得る必要があったからだ。例えば、燃料電池の中に可燃性ガスが残るのではという懸念(※1)があった。それに対し、開発担当者が示したのは、機器に残るガスの熱量は「エネファームの10倍の出力の機器でも100円ライター2個くらい」にしかすぎないくらい熱量が小さい、ということ。このイメージが安全性の理解を得る突破口となり、エネファームは電気主任技術者を置く必要がない一般用電気工作物として認められることになったという。2005年、エネファーム1号機が首相公邸に設置され、3年間の大規模実証を経て、2009年、家庭用燃料電池の販売を開始。世界初の事例となった。
※1 機器の中に未反応ガスが残ると劣化の原因となってしまう。事業用では窒素で置換するが、設備が大規模になり現実的ではない。そのため、エネファームは都市ガスを窒素の代わりとすることで、小型化に成功した。都市ガスは可燃性のガスではあるが、エネファーム内に残るガスは危険性の低い量だということを伝えることが、開発チームの課題だったという。
04 災害時のレジリエンスにも
近年、CGSは経済性や環境性だけでなく、災害時のレジリエンスの観点からも注目されている。災害などで広域停電が発生した場合でも、施設内のCGSを利用することで電力や熱を一定程度確保できるからだ。2011年の東日本大震災では、エネルギー供給が不安定となる中で故郷からさいたまスーパーアリーナへ避難してきた福島県双葉町の人たちに、温かな環境を提供することができた。計画停電もあった中、さいたまスーパーアリーナへの熱供給を担う地域冷暖房センターのCGSを運転することで、蒸気の供給を継続できたのだ。その後も、病院やデータセンター、地域エネルギーセンターなど、多くの熱や電気を必要とし、かつ停止できない施設で、非常時のエネルギー確保を目的としてのCGSが広がっている。
まとめ
CGSの歩みは、エネルギーを「つくる」だけでなく「使い切る」という発想の広がりだった。発電の際に生まれる熱まで活用することで、限られた資源からより多くの価値を引き出す。東京ガスはこの考え方を実現させるため、国立競技場から産業施設へ、さらに家庭へと、技術を磨きながら広げ、日本のエネルギー利用の姿を少しずつ変えてきた。CGSはその一つの象徴なのだ。




