2026.10.13

100年先の心豊かなくらしのための実験場。TAKANAWA GATEWAY CITYの地下エネルギー施設で、今起こっていること

2026年3月、高輪ゲートウェイ駅直結のTAKANAWA GATEWAY CITYがグランドオープンしました。「100年先の心豊かなくらしのための実験場」をテーマに掲げ、新たなまちづくりが着々と進行中です。

その中の重点テーマのひとつがCO2排出量「実質ゼロ」のまちづくり。街のエネルギー供給を担う最先端のスマートエネルギーネットワークの運用は、東京ガスグループもパートナーとして参画する、えきまちエナジークリエイトが担当しています。

TAKANAWA GATEWAY CITYが実践する未来のエネルギーマネジメントについて、えきまちエナジークリエイトの桑村氏(JR東日本から出向)と竹内(東京ガスエンジニアリングソリューションズから出向)に聞きました。

高輪ゲートウェイ駅に誕生した、未来を見据えた街

TAKANAWA GATEWAY CITYは、JR東日本グループが高輪ゲートウェイ駅周辺で進めている国内最大規模のまちづくりプロジェクトで、2026年3月にグランドオープンを迎えました。

延床面積約84万5,000m2のエリアには、駅直結の高層ビルをはじめ、文化総合施設や商業施設、オフィス、高級賃貸レジデンスなどが集結。「働く」「暮らす」「学ぶ」といった体験が有機的につながり、ひとつの"街"を形づくっています。

TAKANAWA GATEWAY CITYが一般的な複合型施設と異なるのは「100年先の心豊かなくらしのための実験場」をテーマに掲げていること。自動栽培による都市型農業や自動走行モビリティなど、幅広い分野で実証実験を重ねてきました。

100年先を見据えたまちづくりは、エネルギー戦略にも表れています。TAKANAWA GATEWAY CITYでは、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、街全体でCO2排出量「実質ゼロ」を推進。再生可能エネルギーや未利用エネルギーの活用など、環境負荷の低減を図っています。

快適な街を支える、エネルギーマネジメント

これらのエネルギーマネジメントを担うえきまちエナジークリエイトは、JR東日本を中心にしてJR東日本ビルディング、東京ガスの3社によって設立されました。JR東日本が東京ガスをパートナーに迎え入れた理由について、同社の桑村氏は次のように話します。

えきまちエナジークリエイト 桑村氏

「TAKANAWA GATEWAY CITYという街を維持していくうえで『電気』と『熱』のインフラを整える必要がありました。JR東日本グループは、鉄道運行を支える自前の発電所や変電所を持っているため、街の『電気』についてはノウハウがあります。しかし『熱』となると、そうはいきません。都市規模で『熱』を扱うには、高度な知見と運用実績が不可欠。そうした領域で確かな経験を持つ企業となると、自ずと選択肢は限られてきます」(桑村)

そう語る桑村氏が、東京ガスグループに期待した「高度な知見」の一例が、街全体の需給バランスを最適化する運用ノウハウです。

熱源を確保するだけでは、需給バランスの最適化はかないません。商業施設やオフィス、高級賃貸レジデンスといった多様な施設が集まる街では、時間帯や季節によってエネルギーの消費パターンが大きく異なります。快適な環境を保ちながら効率的にエネルギーを運用するには、施設ごとの需要を緻密に捉え、供給をコントロールする運用技術が求められるのです。

そうした運用面を支えるため、えきまちエナジークリエイトには各プラントで経験を積んだ人材が合流しています。東京ガスエンジニアリングソリューションズから今回のプロジェクトに合流した竹内もそのうちの1人。企画段階からTAKANAWA GATEWAY CITYのエネルギーシステムの構築に携わってきました。そこには、LNG基地や地域冷暖房施設でエネルギーを運用してきたことで培った「ユーザーエンジニアリング」の視点が随所に生かされています。

えきまちエナジークリエイト 竹内

「設備は40年、50年と使い続けるものなので『つくって終わり』ではありません。設備のライフサイクル全体を考慮して、企画・設計・建設、さらに運用・保守までワンストップで提案・支援できることが東京ガスグループの強みです。また、長年にわたって自ら設備を運用してきたノウハウがあるため、安全性や信頼性のために投資すべき部分と、合理化できる部分を見極めることができます。さらに、設備の故障や災害・ヒューマンエラーなど、さまざまな事態を想定し、万が一トラブルが発生しても迅速かつ柔軟に対応できるよう、設備面と運用面の双方から構築・対策できることも、東京ガスグループの強みです」(竹内)

鉄道開業の地で、イノベーションに挑む

東京ガスに期待されたのは「熱」の供給に関する知見だけではありません。TAKANAWA GATEWAY CITYは、新たな技術や仕組みを取り入れながら、街のありかたそのものをより良いものに変えていくことを模索するプロジェクトです。そこでエネルギーを担うパートナーには、前例のない課題にも向き合っていく姿勢が欠かせませんでした。

「東京ガスグループの新しい技術を社会に実装する取り組みから、力強さを感じています。実験施設を見学した際、エネルギーの選択肢が想像以上に広がっていることを実感しました。日本のインフラを支える企業でありながら、既存の枠組みにとどまらず、エネルギーのありかたを根本から見直そうとしている。その挑戦的な姿勢に、強い共感を覚えました」(桑村)

また、この地に残された歴史と東京ガスの足跡には共通点があります。TAKANAWA GATEWAY CITY周辺には、かつて海が広がっていました。それがいまから約150年以上前、海上に線路が敷かれ、日本初の鉄道が開通。文明開化の象徴となりました。同じ時代、東京ガスも芝金杉橋から銀座を経て京橋までに85基のガス灯を設置。これが東京におけるガス事業のはじまりでした。

「鉄道開通とガス灯の設置は、日本の歴史を変える大きな転換点。いわば、当時の常識を覆すイノベーションだったわけです。そんな前例のないことにチャレンジした両者が、時代を超えて、新たなまちづくりに取り組んでいる。そこに大きな意義を感じます」(桑村)

熱源を賢く利用する「熱源機器 最適制御AI」とは

TAKANAWA GATEWAY CITYの地下には、家庭用エアコン約3.2万台分に相当する冷房能力を持つ冷熱源設備が設置されています。これらを活用し、街全体に熱を供給する「スマートエネルギーネットワーク」を実現しているのです。

TAKANAWA GATEWAY CITYの地下プラント

さらに、エネルギーの効率化を図るため、新設のスマートエネルギーネットワーク施設として国内で初めて強化学習を活用した「熱源機器 最適制御AI」(熱源AI)を導入しました。

「TAKANAWA GATEWAY CITYのような大規模施設では、複数台の機器を使って冷水や温水をつくります。機器ごとに特徴や性能が異なるため、同じ熱量をつくる場合でも機器の組み合わせや、どのように出力を配分するかによって、プラント全体の効率が変わってきます。例えば、必要な熱量を100とした場合、設備Aと設備Bを50:50で運転するよりも、70:30で運転したほうが効率的なこともあるんです」(竹内)

出力バランスは、その時々の熱の使われかたや気象条件によっても変化します。そのため、これまでは熟練したオペレーターの経験や知識をもとに状況を判断しながら、細かな運転操作を行う必要がありました。

その判断をサポートするのが熱源AIです。そしてこのAIは、東京ガスグループがスマートエネルギーネットワークを運用する中で培った知見が生かされています。

「AIは、熱需要や気象条件、機器の特性などさまざまなデータを分析し、最も効率的な出力バランスを導き出します。ただし、AIにすべてを委ねるわけではありません。想定外の運転にならないよう、熱供給の信頼性を確保するために必要な『制約』を設けるのは、私たち人間の役割です。供給温度や圧力といった品質や安全のための基準を厳格に守るロジックを人間が設計し、その範囲内でAIに最適化を行わせる。熟練オペレーターの知見をAIという形に落とし込み、それを人間が管理することで、安定供給と効率の両立を図っています」(竹内)

利用者とともに考える「熱のデマンドレスポンス」

また、国内でも前例の少ない「熱のデマンドレスポンス」にも取り組んでいます。熱源AIが需要に合わせて供給側の運転を最適化するのに対し、熱のデマンドレスポンスは、供給側の運転状況に合わせて需要側の熱の使い方を調整する試みです。エネルギーを供給する側と、オフィスやテナントなどの利用者側が連携し、街全体でエネルギー利用の最適化を目指します。

「この取り組みには、技術的な難しさだけでなく、利用者の皆さまの快適性への配慮という課題がありました。例えば、オフィス全体の冷房設定温度を一律に1度上げるとなると、快適性を重視されるテナントの皆さまにとっては、簡単に受け入れられるものではありません。オフィス、商業施設、住居、ホールなど、用途の異なる施設が集まる街で、どうやってご理解とご協力をいただくかが課題でした。

そこで私たちが着目したのが、鉄道の『弱冷房車』のような考え方です。オフィス全体の設定温度を一律に変えるのではなく、オフィスを複数のゾーンに分け、あらかじめテナントの皆さまにご理解いただいたゾーンに限って、冷房の設定温度を上げられるようにしました。これまで冷房を寒いと感じられた方には、設定温度を上げた『弱冷房ゾーン』に移動していただく。こうした柔軟な運用を可能とするシステムを構築することで、働く方々の快適性に配慮しながら、街全体で省エネルギーに取り組むとともにエネルギー利用の最適化を目指しています」(竹内)

この挑戦に対し、桑村氏はまちづくりという視点からこう評価します。

「この取り組みを成功させるには、オフィスや商業施設で働く方々、居住者の方々の理解と協力が不可欠です。私たちは竹内を中心に、街で活動される方々と定期的な会議体を立ち上げました。そこでエネルギーの運用状況や削減効果を共有し、ディスカッションを重ねることで、街全体でエネルギーを賢く使うためのスキームを構築してきたのです。

具体的な削減効果はこれからですが、多くの施設や利用者が集まるこの街で、供給側と利用者がともにエネルギーを考える『需給一体』の仕組みをスタートできたこと。そして、グランドオープン後も継続して対話できる場を作れたこと。これこそが、現段階でのTAKANAWA GATEWAY CITYにおける成果だと感じています」(桑村)

高輪の地から日本、そして世界へ

TAKANAWA GATEWAY CITYのコントロールセンター

供給側と利用者がコミュニケーションを図り、街全体で連携しながら、エネルギーをいかに賢く使っていくか――。その先に見据えるのは、カーボンニュートラル社会の実現です。これからのエネルギーのありかたについて、竹内は次のように話します。

「カーボンニュートラルは、決して遠い未来の話ではありません。TAKANAWA GATEWAY CITYでは、実現に向けて既にさまざまな取り組みを進めています。ただ、ここで得た知見をこの街だけで終わらせてはいけないと考えています。好事例だけではなく、たとえ失敗があったとしても、その経験を糧に次の展開へつなげていく。日本国内、さらには海外へも、私たちが培ったエネルギーマネジメントの仕組みを提供していきたいです」(竹内)

TAKANAWA GATEWAY CITYの挑戦は、まだはじまったばかりです。桑村氏は、この街で得た知見が未来のまちづくりにどうつながるのか、その展望をこう語ります。

「エネルギーセンターの定量データと人流データなどを掛け合わせれば、より高度なエネルギーマネジメントが可能になるはずです。ゆくゆくは、エネルギーの地産地消にも本格的に取り組んでいきたいですね。

さらに言えば、私たちのまちづくりはここで終わりではありません。高輪ゲートウェイを起点に、JR東日本グループが推進する『TOD(公共交通指向型開発)』を、地方都市を含めた全国へと展開していく必要があります。まちづくりには、必ずエネルギーインフラが伴います。このミッションを通じて私たちが培った知見や仕組みを、全国のまちづくりに生かしていく。それこそが、えきまちエナジークリエイトが果たすべき使命だと考えています」(桑村)

「100年先の心豊かなくらしのための実験場」というテーマは、最新技術と日々の細やかな工夫の積み重ねによって、いま現実のものとなりつつあります。

かつてこの地で鉄道が新たな時代の幕を開けたように、TAKANAWA GATEWAY CITYは、エネルギーの未来を照らす実験場として歩み始めました。

ここで育まれる知見は、やがてこの街を越え、日本、そして世界のまちづくりの新たなスタンダードとなっていくのかもしれません。

※本記事に掲載している人物の役職・所属、および各種情報は、取材当時(2026年8月)のものです。

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東京ガスグループは
「未来を つむぐ エネルギー」
となる
さまざまな取り組みを
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