プレスリリース

フィリピンにおける水田由来のメタン排出削減に向けたJCMプロジェクトの本格事業化について

~実証で培った協業モデルが結実、ASEAN地域の農業分野のJCMで最大規模のプロジェクトに成長~

2026年3月5日
株式会社クボタ
クレアトゥラ株式会社
東京ガス株式会社

 株式会社クボタ(本社:大阪市浪速区、代表取締役社長 CEO:花田 晋吾、以下「クボタ」)、クレアトゥラ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:服部 倫康、以下「クレアトゥラ」)および東京ガス株式会社(本社:東京都港区、取締役 代表執行役社長 CEO:笹山 晋一、以下「東京ガス」)は、フィリピンにおける水田由来のメタン排出の削減が期待される水管理手法(Alternate Wetting and Drying*1、以下「AWD」)を活用した二国間クレジット制度*2(以下「JCM」)の枠組み下で実施する民間JCM*3プロジェクト(以下「本プロジェクト」)について、このたび、共同実証の結果に基づいて本格事業化のフェーズへ移行することに合意しました。今後、3社はパートナーシップをさらに深化させ、現地政府や農家との信頼関係を強化しながら、品質と信頼性の高いカーボンクレジットの安定的な創出・供給に共同で取り組みます。

 本プロジェクトは、2023年9月より、AWDのフィリピンにおける普及と民間JCMプロジェクト登録を目的とする実証事業として開始しました。現地で灌漑(かんがい)設備を運用している灌漑局等と密に連携し、農家へのサポートや地域社会への貢献に積極的に取り組むことで、現地の理解を得ながらプロジェクトを推進しています。3社による価値共創の成果として多くの農家の参画を得ることができ、対象面積はAWDの民間JCMプロジェクトとして最大規模*4となる約14,000ha(2025年末時点)にまで拡大しました。なお、本プロジェクトは今後、対象面積を2029年までに約40,000haまで拡大する予定です。

取り組みの例

  • 農業の高度化に資する農家向けトレーニング*5の実施
  • カーボンクレジットによる収益の一部を現地に還元するベネフィットシェアリングの仕組みの導入
  • デジタルMRVプラットフォーム*6を活用した現地業務の省力化と透明性の両立による大規模化の実現

<トレーニングの様子>

<農業スクールの様子>

<AIおよび衛星データを活用したデジタルMRV>

 現在は、第三者機関*7による検証の最終段階にあり、今後、日比両国政府の代表者で構成するJCM合同委員会*8の承認を経て、農業分野における初の民間JCMプロジェクトとして登録される見通しです。2026年度からの日本版排出量取引制度(GX-ETS)*9の本格始動を前に、JCMは日本における脱炭素の重要な手段として存在感を高めています。3社は、本プロジェクトによるJCMクレジットの安定供給を通して、カーボンニュートラル社会の実現と持続可能な農業の普及に貢献していきます。

参考 本プロジェクトの概要について

期間 2023年9月~2036年12月(実証期間を含む)
場所 フィリピン共和国 パンガシナン州
水田面積 約14,000ha
参加農家 約10,000軒

<ガスサンプリング実施の様子>

<現地のパートナーにモニタリング方法を説明>

<農家向け報告会の様子>

参考 AWDについて

 AWDは、水稲の栽培期間中、水を抜いて水田の地表面を十分乾燥させた後、再度湛水(たんすい)するという潅水(かんすい)制御を複数回にわたって繰り返す水管理手法です。水田土壌内にはメタン生成菌が存在し、嫌気条件下では稲わらなどの有機物を餌に温室効果ガスであるメタンを発生させますが、断続的に水田から水を抜くことで常時湛水時より土壌中により多くの酸素を供給すると、メタン生成菌の活動が抑制され、メタン排出量が低減します。

【AWDの概要*10

 メタンは二酸化炭素の28倍の温室効果を持ち、地球温暖化において二酸化炭素の次に大きい寄与因子と言われています。稲作が盛んなフィリピンでは、全産業で排出される温室効果ガスのうち約20%が水田由来のメタンと推定*11されます。
 AWDにより、水田由来のメタン排出量を平均45%、灌漑用水の使用量を最大30%削減できるとされています*12。このため、AWDは温室効果ガス削減の有効な手段並びに灌漑用水の効果的な利用による米の生産性向上のための手段として注目されています。
 また、本プロジェクトにおいては、協力農家向けのトレーニングにて、適切な施肥管理や病害虫対策等の講習を行っており、安定的な米生産にも貢献しています。

各社コメント

クボタ

 本取組は農業と社会の持続的な発展に貢献するものです。クレアトゥラ様および東京ガス様がそれぞれ有する専門性や知見と、クボタが長年にわたり農業分野で培ってきたネットワークや知見を掛け合わせることで、環境価値の創出と地域社会への貢献を両立する持続可能なモデルの構築をめざしてまいります。

クレアトゥラ

 本プロジェクトをクボタ様、東京ガス様とともに本格事業化できたことを大変意義深く思います。実証で培った協業モデルを基盤に、農業の生産性向上と脱炭素を両立する仕組みを、弊社のAI技術を活用して社会実装していきます。弊社は今後も各社との協業を通じて持続可能な社会の実現に貢献致します。

東京ガス

 クボタ様、クレアトゥラ様と各社の特徴・強みを持ち寄って検討してきた本プロジェクトについて本格事業化に合意したことを大変嬉しく思います。今後、脱炭素の取り組みは開示中心から、実行に移行します。東京ガスは削減、代替に加え、オフセットも重要な手段としてお客さまにご提供して参ります。

<(左から)クボタ ビジネスイノベーションユニット長 辻村克志 クレアトゥラ 代表取締役CEO 服部倫康 東京ガス ソリューション事業推進部長 岩田哲哉>

  • *1:
    間断灌漑(かんがい)。農研機構ウェブサイト https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2017/niaes17_s12.html
  • *2:
    日本の持つ低炭素技術や製品、システム、サービス、インフラを途上国に提供することで、途上国の温室効果ガスの削減など持続可能な開発に貢献し、その成果をクレジット化し、二国間で分けあう制度「Joint Crediting Mechanism」。
  • *3:
    民間資金を中心とするJCMで、事業者に対してクレジットを付与する仕組み。
  • *4:
    日比両国政府の代表者で構成する合同委員会へ提出済みのプロジェクト設計書(Project Design Document、PDD)において。PDDは排出削減量のモニタリング方法・推定排出削減量等を含むものでプロジェクト登録に必要となる。
  • *5:
    AWD実施方法に加えて、種子の選定方法や土壌の管理方法、栄養・施肥管理、収穫前後管理など米栽培知識全体を含む。
  • *6:
    クレアトゥラが開発したLynxAWD。MRVはMeasurement, Reporting and Verificationの略。AIや衛星データを活用した水位の判定やオフラインでも使用可能な写真撮影アプリの活用を通じて区画ごとのモニタリングや運用実績管理の省力化と透明性の確保を両立し、大規模化を実現。https://www.creattura.com/news/260226
  • *7:
    合同委員会により指定されるプロジェクトの妥当性確認、GHG排出削減量及び吸収量の検証を行う機関。
  • *8:
    日本国及びパートナー国の代表者により構成される委員会。JCMの実施に必要な規則やガイドライン等の採択、提案された方法論の承認、プロジェクトの登録並びに発行するJCMクレジット量の決定及び各国政府への通知を行う。
  • *9:
    一定のGHG排出量を超える企業を対象に排出枠を割り当て、その排出枠に対する過不足分を取引させることで温室効果ガスの削減を促す制度。
  • *10:
    図は国際農研ウェブサイトを参考にクレアトゥラ作成。https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220712
  • *11:
    国際連合食糧農業機関統計データベース(FAOSTAT)、およびClimate Watch(CAIT)より取得したデータを用いてクボタにて試算。
  • *12:

以上

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