CROSS TALK

家族の絆 制作対談

『家族の絆』シリーズ
「ガクチカ」篇に込められた思いとは?

制作対談インタビュー

東京ガス株式会社

成海 拓朗 さん

俳優

奥平 大兼 さん

dentsu Japan

澤本 嘉光 さん

SPECIAL INTERVIEW

『家族の絆』シリーズ「ガクチカ」篇の主演を務めた俳優の奥平大兼さん、東京ガス株式会社の成海拓朗さん、映像の制作と企画に携わるdentsu Japanの澤本嘉光さん(以下、敬称略)に、今回の作品が誕生した背景や、Z世代へ届けたい思いについて、お話を伺いました。

長く続く、『家族の絆』シリーズですが、今回の作品にどんな想いを込められましたか?また、動画内容が決定するまでの背景などあれば教えてください。

成海

今回は、これから社会に出ていくZ世代、いわゆる若者に向けた内容にしたいという思いから、企画を考え始めました。Z世代がどういう方々なのかについて色々調べていくと、デジタルネイティブ世代とよく言われますが、小さい頃からSNSなどに触れていて、自然と他人と自分を比較してしまい、自分に自信を失ったり、自己肯定感が低くなってしまう方もいらっしゃるということが分かってきました。そういうZ世代の方々が持つ側面と、就職活動という今回のテーマを掛け合わせると、面白い内容になるのではないかと考えました。また、そういう方々を支えられるのは、やっぱり一番身近にいる家族かなと思っています。なので、今回は、そのような姿を描きたいと思い、こういう形になりました。

今の就活生をはじめとするZ世代やその家族に対して、以前と比較してどんな変化を感じていますか?

成海

「ガクチカ」篇に照らしてお話しすると、就職活動への考え方も、家族との向き合い方も変わってきているのかなと思います。以前は安定した仕事に就くことが重視されていたかもしれませんが、今は自分らしく働けるか、仕事を通じて何を実現したいかなど、自分の価値観で進路を選ぶ方が増えているのではないでしょうか。家族も、親が進路を決めるというより、本人の考えを尊重しながら、必要な時にそっと背中を押してあげる。そういう関係が増えているのかなと思います。

今のお話を聞いて、奥平さんが共感できるところはありましたか?

奥平

僕はZ世代と呼ばれている世代ではあるんですが、Z世代の前の世代との区別がしっかりついているわけでは元々なかったんです。でも今お話を聞いて、インターネットやSNSが自分の幼い頃というか、精神的に成長している時期から身近にあるっていう部分に、たしかになと思いました。   就職活動において、それこそ今回の「ガクチカ」にも繋がりますけど、自分の強みって見つけづらいのかなとは、学生時代、周りの友達を見ていて思っていました。さきほど成海さんがおっしゃっていたように、SNSを通じて周りと比べてしまう環境にいるってこともありますよね。あとちょっと選択肢が多すぎるって部分もあると思います。数ある中から自分の適性を選ぶのは、なかなか自分一人では難しいことだと思うので、そういうことに周りの子は悩んでいたのかなって思いました。   それから、家庭によって様々だとは思いますが、どちらかというと自分のやりたいことを尊重してくれる家族が世の中的に増えている気がしますね。自分が学生の時も、将来のやりたいことを書いて、それに繋がることや出来ることは何かを考える授業なんかもありましたし。もちろん前の世代もそういう意識はあるかもしれないですけど、やっぱり僕らの世代はよりそういう意識が強くなっていて、今後の世代の子たちはもしかしたらもっと強くなっていって、人生の選択肢が広がっていくような流れはあるのかもしれないと感じます。

澤本さんは様々な広告や作品と接する中で、Z世代に対して思うことはありますか?

澤本

大切にしているのは、僕らがZ世代の方々を「想像する」のではなく、バイアスなく、きちんと観察することです。表面的なZ世代像を作ってしまうと、映像化したときに何かがズレて、ご本人たちが見たときに違和感を生んでしまう。   今回は「まさに自分たちのことだ」と捉えてもらい、東京ガスが自分たちにちゃんと関心を持っていて、その思いが形を変えて生活の一部になっていると感じてほしかったので、この姿勢を特に大切にしました。さっき奥平さんがおっしゃった、選択肢が多くて悩むことや、SNSで自己肯定感が低くなりがちなことも、具体的な事象とともに彼らを見つめないと読み取れないと思います。   そんな中でも、心の拠り所として、これまでの時代と変わらず「家族」がある。人によるとは思いますが、家族に温かさを感じていて、そこを基地のようにして、背中を押してもらい、世の中に「出撃していく」。そういうところが今のZ世代にもあるのかなと思っています。   映像を見た方が「俺もそうだ」「私もそうだ」と共感してくれるものにしたいと思って、制作に取り組みました。なので、奥平さんがあの映像を見て「これ、嘘っぱちだよ」なんて思わなければいいんですが……(笑)。

奥平

いやもう全然嘘っぱちじゃないです(笑)。まさに!って思いました。

澤本

であればよかったです(笑)。

今回の作品では、就職活動に悩む主人公と、その姿をそばで見守る母親を描いています。社会や価値観が変化する中で、東京ガスが「家族の絆」というテーマを描き続けているのは、どのような想いからなのでしょうか?

成海

時代とともに社会や価値観が変わっても、変わらないものはあると思っています。大きく2つあるとしたら、1つは、人がそれぞれの人生を日々悩み、迷い、葛藤しながら生きていること。もう1つは、家族が互いを想い、支え合っていることです。この2つは、時代や社会が変わっても変わらない普遍的なことではないかなと思っています。   『家族の絆』シリーズでは、何気ない日常の会話や家族の瞬間を描きたいと思っています。そうした日常の出来事だからこそ、映像を見た方が「自分の家族もそうかもしれない」「私も家族にこういうことをしてもらっていた」と、普段は意識していなかった家族の存在に気づいていただけるのではないでしょうか。   東京ガスは暮らしを支える企業として、家族一人ひとりの人生に寄り添い、日々の暮らしを支えていきたいと思っています。それは、私たちの理念である「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」という思いにも繋がっています。これからも「家族の絆」というテーマを通じて、何気ない日常にある温かさや、人と人との繋がりを描き続けていきたいと思っています。

この作品に長く携わっていらっしゃる澤本さんとしては、長年、シリーズを続けていく中で、特に意識していること、大切にしていることはありますか?

澤本

「リアルな親子関係」を描きたいという思いがベースにあります。過剰にいいことや悪いことを描こうとするのではなく、親御さんでもお子さんでも、「この主人公は、もしかしたら自分じゃないだろうか」と置き換えて見ていただける作品にしたい。それが、このシリーズのベースだと思っています。   20年近く続けていると、時代とともにテーマも変わります。ただ、根底にあるのはリアルな家族や親子関係です。その関係が暮らしの中で大きな存在になっていて、日々を生きる活力をもらっている。そういう部分に皆さんが共感してくださるから、ずっと続いているのかなと感じます。   だからこそ、共感していただけるものを、いかに届け続けられるか。「今年はこのテーマかな、来年はこれかな」と日々考えながら、毎年リニューアルして作っているという感覚ですね。

奥平さんは、今回の映像の出演依頼を聞いた時、最初はどんな風に感じられましたか?

奥平

僕は今年23歳で、小さい頃からTVCMをはじめ広告を目にする機会もたくさんありましたが、作品として心に残っているような広告ってどうしても限られると思うんです。東京ガスの『家族の絆』シリーズはその1つだなと感じていましたし、率直に嬉しかったですね。   そして先ほどのお話にもありましたが、長年1つのテーマを一貫して描いているシリーズものに参加できることへの実感も湧きました。来年はきっと違う誰かによって、また違ったテーマでの『家族の絆』シリーズが描かれるかもしれない。そんな線の中に立って演じられたことが喜びでしたし、同時にこの先もどんどん誰にも分からないような未来が続くわけで、今後が楽しみだなとも思いました。

奥平さんは就職活動を経験されていないと思いますが、今回の企画をご覧になって、主人公に共感できるところはありましたか?

奥平

自分への自信を持てていないところや、自分の強みを分かっていないなと感じている部分は同じだなと思いました。このお仕事をしていても自分の強みをちゃんと言語化できないですし、それをましてや自信を持って人に「自分の強みはここです」って言うことができないなと思いました。 そういうことってやっぱり客観的に見てくれる人がいるとすごく分かりやすいし、今回みたいにそれこそ母親や身近な人が言ってくれると、自分でも納得できると思うんですよね。それがすごく大事なことだと感じます。 それこそ、自分の母親と食事してる時に「あの作品見たよ」とか「こういうところ、良かったね」って言ってもらえると、純粋に嬉しいですし、小さい頃から間近で見つめてくれている母親が、自分が大人になる過程と大人になった自分を見て、こういう風に思ってくれている、応援してくれているっていうことは、ある意味「1番の味方」なんだなって。そういうことも今回の企画から感じましたね。

実際に母親やご家族に、奥平さんご自身の素敵なところに気づかせてもらったことだったりとか、それを分かってくれてるなって思うことってあったりされますか?

奥平

母親から、好きなものを見つけたときにすごく熱心に勉強したり、ある意味でリソースを考えずに没頭できるところがあると言われました。言われてみて、たしかにそうかもなと思いました。そういう風に言われてから、仕事でも台本をすごく集中して読めたり、その作品の理解度上がったり、自分でも認識できるようになった気がします。

今回の映像の演技で、特に意識したことはありましたか?

奥平

もう「普通の子でいよう」というか。企画を見たときに、自分でもあるし、他の誰かでもあるなと思ったんですよね、まっつん(今回の映像の主人公のあだ名)が(笑)。普通な子っていうか、誰にでもあり得るようなこととか、そういう内面を出せるそういう人間でいようっていうことは意識してましたね。

主人公役を奥平さんに演じていただいて、成海さんと澤本さんはどう思いましたか?

成海

いやもう…素人が言うのもなんですけど、演技がとってもお上手で。本当に見ていてリアルなZ世代の若者を演じていただいたなって思いましたし、もちろん他の作品で元々演技がお上手なことも知っていましたけど、実際に撮影現場で見学させていただいて、素晴らしい作品になったなと感じたので、本当に演じていただいてありがとうございます。

奥平

ありがとうございます(笑)。恥ずかしいですね。

澤本

期待していた通り、もしくはそれの倍ぐらいにナチュラルでしたね。 けっこう奥平さんの出られた映画とかずっと見てて、どの役になっても役になりきっているっていうんですかね。その役の人になっちゃう。ある種、憑依型の方だと思っていたんで。今回は、一般の大学生として、入り込んでやってくれているので、もうそうしか見えないっていうんですかね。だから僕らから見ると期待以上の見事ななりきり方だったなって思って感謝しています。ありがとうございます。

奥平

ありがとうございます…!

奥平さんは、今回の映像で、特に同世代の方に伝えたいことや感じてほしいことは何ですか?

奥平

僕が今回この映像を見て、Z世代、いわゆる今の僕の世代の子って、SNSとかで人と簡単に繋がり持てるんですけど、孤独感というかはある程度抱えているというか。   自分の悩みは一人で解決しがちですし、悩んでいるのは自分だけだと思いがちですけど、今回の映像を見たら、自分だけじゃないということがすごく分かると思います。みんなこういうふうに悩んでいるし、もちろん人によっては、母親の後押しとは違う形で解決することもあるかもしれませんけど、みんなそれぞれ、ある程度解決してきて。時間は止まらないので、社会人になって、そこから働いていく。そういうことを少しでも感じてもらいたいなと、すごく思いましたね。   それこそ僕と同い年の子たちは、今、社会人1年目で、ちょうど奮闘している時期なんです。定期的に会うと、「やっぱりなんか寂しいんだよな」と言ったりするので。シチュエーションは違っても、みんなそういうことはあるし、孤独に感じすぎないようにしてほしいなというのは、最初に完成した映像を見て、すごく思いましたね。

結局大事なことに気づかされるのって深い繋がりがある身近な方からの一言だったりしますよね。

奥平

そうですね。じゃないと説得力がないので。それこそ母親は小さい頃から知ってるからこその説得力だと思うので。やっぱり人それぞれ、そういう人は少なからずいると思うので、そういう方を大事にしてほしいなと思いますね。

澤本さんにお聞きします。今回の映像はどんな着想から始まったのでしょうか?

澤本

今回は『家族の絆』シリーズの中でも、特にZ世代や、その下の世代にもきちんと届けたいと思っていたので、まず主人公はその世代にしたいと考えました。そして、その世代の方々が今抱えている問題は何だろうと考えたときに、先ほど奥平さんがおっしゃったような、「SNSはあるけれど、本当の孤独は解決できていないんじゃないか」といったことが、いくつか浮かんできました。 それらを一番象徴的に表すのが、就活で「自分はどういう人間なのか」と向き合う場面なのではないかと。そこで悩んでいる人が意外と多いのではないかと思ったことが、きっかけです。そこを入口に、企画を進めていった感じですね。

これまでの『家族の絆』シリーズと比べて、今回の作品で特に工夫した点や苦労した点についても、教えてください。

澤本

どうしたらリアルな20代を描けるのか、ディテールまで詰めていく作業を一番大事にしました。そこに嘘が入ってしまうと、作品そのものが嘘になってしまうので。やっぱり、共感していただくうえでは、リアリティが一番のベースになると思いますね。そこを細部にわたるまで監督が詰めてくれたことが、工夫としても苦労としても、一番大きなところかなと思っています。   あまり気づかれていないかもしれませんが、実は僕がすごく感心したところがあって。映像の中で、主人公がフットサルのサークルに入って、その集合写真からシュッとフェードアウトしていくシーンがあるんです。そのとき、奥平さんの横に立っているメンバーが、真正面を見ていないんですよ。ちょっとだけ横を向いているんです。この、ちょっと横を向いている集合写真って、むっちゃリアルで(笑)。そういうところが他にもむちゃくちゃあるんですけど、長くなっちゃうのでやめておきます(笑)。

成海

私は今回初めて映像の撮影を見学させていただきましたが、よく「神は細部に宿る」と言うように、本当に一つひとつのディテールにすごくこだわっているんだなと実感しました。フットサルのシーンでも、「新品のソックスだとおかしいよね」と、少しだけ汚して使用感を出したり。シーンが変われば、食卓の調味料や、その量が変わっていたり。そういう一つひとつのこだわりの積み重ねがリアルさを生んでいるんだなと、感心しましたし、感動しました。

どうしてそこまで、リアルさにこだわるんですか?

澤本

やっぱりこの映像は、嘘があると共感してもらえないところがあるからだと思いますね。それはストーリーもそうだし、演出もそうです。「あ、これちょっとやりすぎだな」とか、「ちょっと自分たちと違うな」と思ってしまうフィルムも、世の中にはあるじゃないですか(笑)。もちろんそういう映像もあって良いと思うんですけど、『家族の絆』シリーズはそうはなっちゃいけないなという思いです。このフィルムを信用していいんだっていう感覚を、見たときに持ってもらえることって、すごく大事だと思うので。

奥平さんは今回リアリティを追求するにあたって、意識したことはありますか?

奥平

僕の演技以外にも、画に映る細かいディテールを追求して、ナチュラルな画を作ってくださっているからこそ、その場所から求められている演技を感じ取れて、僕もナチュラルに演技ができるんだと思います。 そういう現場を選んでくださったり、美術を作ってくださったりしたスタッフの皆さんに、感謝しなきゃいけないなと思います。映像作品は一人で作るものではなく、みんなで協力して作るものなので、最近はどの現場でもそう感じますね。

『家族の絆』シリーズだからこそ、描けたことは何だと思いますか?

澤本

難しいですね、その質問(笑)。なんだろう、奇をてらわずに、ど真ん中をやれているということですかね。そして、それを継続してやれていること。意外と「継続」って難しくて、作る側も飽きてしまうし、クライアントさんの側も「ちょっと変えてみたい」と思ったりするんです。   『家族の絆』シリーズには、毎回「新規性」はもちろんあるんですけど、そもそも人間の根本にある普遍的なものをずっと描いているんです。「普遍って素晴らしいんだよ」ということを、言い方はよくないかもしれませんが、毎年手を変え品を変えやっている。その普遍的な暮らしの中に、実はインフラとしてのガスが存在している。普段は意識しなくても、暮らしの真ん中にあるんだよということを伝えるための映像を作っています。   今年もそれがきちんとできていて、見た人が「ああ、やっぱり家族っていいな」とか、「料理をしている奥平さん、ちょっといいな」とか思ってくれる。そして最終的に、この映像に出てきた今の世の中の状況や親子関係に共感してくれれば、ある意味、目標は達成されていると思います。あとは、これをどこまで「続けていい」と言ってくださるか。いろんな人の度量にかかっていますね(笑)。

これからも、本シリーズを続けていきたいと思いますか?

澤本

そうですね。「あったほうがいい広告」ってあると思うんですよ。「あってほしい広告」というのかな。今は、その「あってほしい広告」になれていると感じるので、これからも「あってほしい広告」であり、「あってほしい表現」であり、「あってほしい会社」でありたいです。同じようなメッセージで、変わり映えはしないかもしれませんが、実はその「あってほしい」像は、呼吸をするように変わっているというか。例えば「ガクチカ」は、15年前にはテーマになっていなかったと思うんですよね。言葉自体もなかったかもしれないし、今ほど悩んでいる人もいなかったのかもしれない。   その年その年の悩みや、解決しなきゃいけない問題は出てくると思うので、そこに「きちんと寄り添っています」という姿勢を、これからも東京ガスさんが見せてくれると嬉しいなと思います。

同じシリーズの作品を何度も作っていると、描くものがなくなりそうにも思うのですが、作品のコアに普遍的なテーマがあるからこそ、描き続けられるのでしょうか?

澤本

そうですね。人間って普遍だけど複雑ですからね。描けるものがいっぱいあると思います。

成海さんは、いかがですか?

成海

先ほどもお話がありましたが、時代や社会が変わっても、家族の愛は変わらない。その時代に合った切り口でこのテーマを描き続けていけば、絶対に皆さんの心を打つものがあると思います。今後もそういう映像を作っていければと思いますし、それを通して当社グループのことを少しでも理解していただければ、本当にありがたいなと思っています。

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