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都市ガスを使って、電気とお湯を同時につくれる家庭用燃料電池「エネファーム」。従来は戸建住宅向けのみの展開でしたが、さらなる普及を目指して2014年、世界で初めて集合住宅に導入できるエネファームを開発しました。設置基準さえもないところから発売までこぎつけた開発の道のりを、実際に携わった開発者にインタビューしました。
   

開発者のプロフィール

伊藤  裕介 燃料電池事業推進部
燃料電池企画グループ  技術企画チーム
 
熱源機や温水端末など、家庭用商品の評価・採用を担当してきた経験から、2006年よりエネファーム開発に関わる。当初は、貯湯ユニットを担当し、その後プロジェクトリーダーを経て商品技術チームリーダーに就任。製品仕様や開発スケジュールなど、パナソニックとの共同開発をマネジメントしていた。現在は燃料電池企画グループに異動し、引き続きエネファームの採用や企画関連業務に携わっている。
小林  広介 燃料電池事業推進部
燃料電池開発グループ  商品技術チーム
 
入社以来、燃料電池開発一筋。大学では電気を専門に学んでいたが、マンション向けエネファーム開発では当初貯湯ユニットを担当していた。発売直前の2013年度からはプロジェクトリーダーを務め、現在に至る。
佐野  晃 燃料電池事業推進部
燃料電池開発グループ  商品技術チーム
 
入社当時は設備エンジニアリング事業部に所属し、現場で商品の施工や営業のサポートを行っていた。2012年度にエネファームの営業支援をしたことがきっかけで、2013年度に燃料電池開発グループに異動。施工やメンテナンスに関わる仕様について、メーカーとの交渉などを担当している。

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「エネファームとは」

エネファームの仕組み・原理
エネファームとは、都市ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させることで発電し、同時に発生した熱と水をお湯として使えるようにするシステムです。
発電の原理

 
 
エネファームシステムイメージ
マンション向けエネファームとは
マンション向けエネファームは、エネファームをマンションのパイプシャフトなどに設置できるようにしたもの。発電や給湯に関わる性能や機能は戸建住宅向けと同様で、耐震性や耐風性を高めています。
 
マンション向けエネファーム
パイプシャフト設置平面図
 
開放廊下側パイプシャフト内への設置イメージ例
 

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家庭用燃料電池「エネファーム」のさらなる普及を目指して

 
Q:マンション向けエネファームの開発の経緯を教えてください。
 
伊藤
当社は戸建住宅向けエネファームを2009年に発売しました。その後、燃料電池ユニットの形状を縦長にして、貯湯ユニットと並べて設置できるようにした第2世代品を2011年に貯湯ユニットのバックアップ熱源機部分を別とし3ユニット構成にした第3世代品を2013年に発売。そして2014年4月、集合住宅向けエネファームの発売にこぎつけました。  
 
エネファームの変遷
2009年 初号機 戸建て住宅向けエネファーム発売
2011年 2号機 燃料電池ユニット形状を縦型に
2013年 3号機 システム全体を3ユニットで構成
2014年 集合初号機 集合住宅向けエネファームの発売
 
エネファームの変遷
 
小林
初号機を発売した頃から、集合向けの開発は視野に入っていました。エネファーム普及のためには、集合住宅も市場に取り込み、量産効果を出す必要があるからです。社内の集合住宅担当の営業部隊やゼネコンにヒアリングをするなど、少しずつ動き始めていました。

伊藤
本格的に集合向けの開発案を話し合うようになったのは2011年頃です。2号機を発売して、3号機を検討していた頃ですね。3号機が3ユニット構成になったのは、集合向けの開発を見越してのことでもありました。戸建向けで技術を固めた上で、技術的に難しい集合向けに着手することは、当初からの既定路線だったんです。
 
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前例がない、手探りでの開発

 
Q:集合住宅向けエネファームの開発で特に苦労したのは、どんなところでしょうか?
 
伊藤
とにかく前例がないので、パイプシャフトに設置できる形状や要件など、分からないことばかりでした。形状の検討は、木で模型を試作するところから始めました。木箱の中に、燃料電池に相当する重さの砂を入れたりして、最初はいろんな形状を試しましたね。例えば、パイプシャフトに入るように幅を細くしてみたら、奥行きがありすぎてメンテナンスがしづらくなってしまうなど、トライ&エラーを重ねて、今の形ができました。
木材を使っての形状検討

小林
戸建住宅向け3号機と開発期間が重なっていたこともあり、戸建機発売に向けた商品化の詰めと、集合機開発を同時に進める必要がありました。日常が苦労の連続で、想定外なことが起こることもありました。こういった中でも過去より積み上げられた市場実績を通じて得られた様々な知見、戸建機開発の中で得られた知見などをタイムリーに商品仕様に反映させることで、集合機の完成度をあげることができたと思っています。

佐野
私は施工検証、メンテ検証が印象深いですね。試作機を使って、施工やメンテナンスがスムーズにできるかどうか、社内の関係者で集まって確かめる作業です。例えば、燃料電池ユニットの脚部形状。施工・メンテ側は、脚が高いほうが作業しやすいので、できるだけ長くしたい。でも、長い脚は配送も含めてコストがかさむし、見た目にもユニットが大きくなるので、メーカー側はできるだけ短くしたい。現場とメーカー、それぞれに言い分があるので、現実的な着地点を見つけるのが私の仕事になります。常に板挟みの立場ですし、機器の前に立ちっぱなしの作業になるので、検証が終わると毎回ぐったりでした(笑)。
PS内への設置施工の検証

伊藤
こうしたところに、メーカーだけでなく、当社が開発に携わることの意義を感じますね。佐野さんたちのようなエンジニアリング技術を含め、各部門のプロが課題を持ち寄って開発に反映させたからこそ、エネファームは商品として完成したのだと思います。
 
 
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戸建エネファームとの違い

 
Q:集合住宅向けエネファームで、戸建住宅向けと大きく変更した点はありますか?
 
伊藤
量産効果を出すため、機器の基本性能は変えていませんが、ユニットの気密性や耐風性、耐震性など、設置環境に合わせて変更すべきところは変更しました。当時は設置基準もなかったので、日本ガス機器検査協会(JIA)にご尽力いただき、集合住宅向け独自の基準を策定いただくことから始めました。

小林
集合住宅には高層階があるので、耐風性や耐震強度を高めています。耐風性は、戸建の15m/sに対し、集合は30m/sとしました。同一風圧帯(同じ面)に給気口と排気口を設けて、どちらか一方にだけ風が当たることがないようにしています。ユニット内部に風圧がかかることでエラーと認識されてしまう事態を避けるため、ユニット内部の部品形状も少し変更しました。バルコニー設置タイプでは、美観のために取り付けた前面カバーで、30m/sの耐風性を確保しました。
PS内設置状況

佐野
耐震性に関しては、燃料電池ユニットの脚を短くすることで、向上させています。脚が短くても施工・メンテナンスができるように、高さ調節機能付きの架台を採用しているんですが、補強の入れ方やボルトの太さなど、一から作り込んでいきました。単純に、ボルトを太くすれば強度は上がりますが、コストとの兼ね合いもあるので、ボルトの太さはある程度で抑えて、パネルの強度でカバーするなど、多面的に考えました。
ユニットの脚部分

小林
全体の小型化や低コスト化も進めてきました。初号機から大きく部品点数を減らせたのは、燃料電池ユニットですね。燃料電池スタックなどの基幹部品も触媒の量を減らすなどして小型化・低コスト化をしていますが、配管類やファンなどの周辺部品の点数を減らしたことや、それらの配置を見直したことも効果を上げています。初号機に比べると部品点数は半分ほどになりました。基幹部品を保護するため、ごく一部のケースでしか使われないような部品も入れていたので、当初は部品数が多かったんです。商品が実際に使用される中で、必要ないと分かったものもあり、基幹部品の改良と合わせて減らせるようになりました。メーカーにない東京ガスの強みは、お客さまとの接点機会や情報を持っていることですね。お客さまの声と稼働データの両方が直接手に入るのは、大きな強みです。

伊藤
貯湯ユニットの大きさはタンクの容量によります。初号機や2号機で容量200リットルだったものを、現行機では147リットルとしました。使用実態を模擬したシミュレーション分析により、200リットルと147リットルで、…大きく変わらないことを明らかにし、容量を減らすことができました。バックアップ熱源機は量産効果を狙って給湯器と同じものを利用しているので、大きさは基本的に変わりませんね。
 
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技術開発で社会を変えていく

 
Q:開発者として大切にしていることや、エネファームへの思いを聞かせてください。
 
伊藤「大切にしているのは、商品のすばらしさを信じること」
集合住宅向けは、設置基準も何もないところから、道なき道を進んで開発したので、商品が形になったときには感無量でした。開発者として大切にしているのは、携わる商品を信じることですね。私は、エネファームは良い商品だと信じていますし、これを世に出すんだという思いで取り組んできました。本格普及を心の底から願っていて、道を歩いているときも「この家にはエネファームは付いているかな?」と探してしまうぐらいです(笑)。残念ながら、今はまだ目にする機会が少ないですが、町中で当たり前に見かける日がいつか来るように、そのために足りないことを、開発者として真摯に追究していくつもりです。
独自基準を策定し、基準書へ反映

小林「ベースは楽観的に、個々の判断は慎重に」
私は、分からないことが次々に起きる毎日は好きですし、どんな問題が発生しても、最終的にはどうにかなると思っています。道はどこかにはあるはず、最後には何とかする、そういう楽観的な部分をベースに持ちながら、個々の課題については、慎重に判断していく。その両面を持っておくことが開発者として大切なことだと思います。それから、商品開発はいろんな人を巻き込むことも大切ですね。一人で考えを煮詰めるより、たくさんの人と会って話すことが大切です。時には仕事場を離れて、食事やお酒を共にするのも、良い効果を生みますよ。
学生時代は、電気を学びながら、世に中のエネルギー構造を変えたいと思っていました。需要地から遠く離れた大型発電所で大量に発電した電気を各地に運んで使う形から、エネルギーを使う場所の近くで電気を作る分散型へ。そして今、その時代がすぐそこにやってきています。今後は家庭向けのエネルギービジネスを検討していく中で、このエネファームが太陽光発電などと並んで中核商品になるように育てていきたいと思っています。

佐野「自分の常識を信じすぎないで、物事を多方面から見る」
開発においては、自分の常識を信じすぎないことを大切にしています。私たちは基礎研究ではなく、実際に世に出る商品を開発していて、その商品はメーカーや施工・メンテナンス、お客さま、いろんな人が触れることになるので、一人よがりの判断は禁物です。例えば検証業務で、これは問題ないだろうと思うときでも、周りの意見をよく聞いて、いろんな視点から物事を見て考えるようにしています。また、来る水素社会の中のツールとして、エネファームが当たり前のものとなっていくことを信じて、自分は今、その礎を築いているんだという思いで、業務に取り組んでいます。
 

エネファームを通じて、よりよい未来を創る燃料電池エネファーム開発者たち

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