東京ガス株式会社(社長:岡本毅)は、本年10月31日に、経済産業大臣から文書により、道路に埋設されているガス管のガス漏れ修理について虚偽の修理報告を行い、ガス漏れを放置していた不正の原因および再発防止策等について、報告を求める指示を受け、同日、当該の不正について公表いたしました。
本件は、ガス漏れ修理を受託したガス工事会社ならびに施工班が、ガス漏れ箇所を特定せず修理を行わないで放置したこと、ならびにガス漏れ修理を行ったと見せかけ、虚偽の修理報告をしていたことが判明したものであり、当該施工班が直近の法定漏えい検査により修理を行った423箇所※1について調査したところ合計8件の不正が確認され、うち1件は弊社社員の指示に基づく不正であることが明らかとなったものです。
※1 423箇所…現地調査を行ったのは422箇所です。残りの1箇所については直近の法定検査前の2009年2月にガス漏れ修理を行った現場であり、書類等により調査を行っております。
その後、弊社は、直近の法定漏えい検査により、全てのガス工事会社ならびに施工班がガス漏れ修理を行った現場のうち、調査の完了していなかった7,860箇所を対象に現場調査ならびに関係者への聞き取り調査(以下「全社調査」)を行いました。なお、全社調査にあたっては、社外専門家委員会を設置し、調査等に関し指導および助言を得るとともに、修理現場の調査ならびに聞き取り調査の協力を受けました。
その結果、新たに12件の同様の不正、ならびにガス工事会社3社および施工班6班の関与を確認し、本日、経済産業省に発生の原因および再発防止策等を合わせて報告いたしました。
なお、全社調査の結果、ガス漏れが確認された607箇所につきましては、ただちにガス漏れ修理などの対策を講じており、現時点で、安全上問題のないことを確認しております。
弊社といたしましては、お客さまに大変ご迷惑をおかけしましたことを心からお詫び申し上げます。このような事態が生じましたことを重く受け止めており、今後、全社を挙げて、再発の防止に努めてまいります。
記
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1.「全社調査」の実施について |
(1)調査体制
本年10月24日に弊社内に社長を委員長とする安全対策委員会を設置し、調査および原因究明ならびに再発防止策の検討を行いました。また11月7日に、社外の専門家3名(弁護士、工学博士、リスク管理分野専門家各1名)を委員とする社外専門家委員会を設置し、ガス漏れ修理の現場調査ならびに聞き取り調査への協力を受けるとともに、客観的かつ中立的見地から、調査ならびに原因究明と再発防止策の妥当性や適格性を確保するため、安全対策委員会に対し指導および助言を受ける体制としました。
その下で、ガス漏れ修理現場の調査は当該業務の弊社担当部が行い、聞き取り調査は社外の弁護士※2が中心となり実施しました。
※2 社外の弁護士…社外専門家委員(弁護士)が所属する事務所の弁護士(12名)です。
(2)ガス漏れ修理の現場調査
直近(法定漏えい検査40か月以内)の法定漏えい検査により判明したガス漏れについて、ガス工事会社ならびに施工班がガス漏れ修理を行った現場のうち、調査の完了していなかった7,860箇所について、ガス漏れ検査を行い、ガス漏れが確認された場合には、ガス漏れ修理を行うとともに、不正の有無を確認いたしました。
(3)聞き取り調査
不正が確認された現場または不正の疑いのある現場に関係していた弊社社員21名、ガス工事会社4社12名、施工班9班22名に聞き取り調査を行いました。また、上記を除き当該業務の現在の担当者ならびに管理者である弊社社員121名(経営層を含む)およびガス工事会社86名、施工班146名※3に聞き取り調査等を行い同様の不正の有無や不正への関与について確認を行いました。合わせて、臨時の内部通報窓口を設置し、過去に当該業務を担当していた弊社社員およびガス工事会社、施工班(合計約530名)に周知し、同様の不正に関する情報収集を行ってまいりました。
※3 当該業務を現在担当している者への聞き取り調査については、聞き取り調査を進める中で不正の事実が確認されなかったこと、あわせて、原因究明ならびに再発防止策における知見も得られたことから、当該業務を現在担当している弊社社員19名およびガス工事会社39名、施工班104名については、書面での調査に変更しております。
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2.新たに判明した不正の件数ならびに関与した会社数等 |
(1)新たに不正が確認された件数
12件(前回公表時に明らかになっていた8件との合計は20件となります)
なお、施工日と場所は、(別紙1)のとおり。
<ガス漏れ修理現場の調査の結果>
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調査対象箇所数 |
ガス漏れ件数 |
不正の件数 |
全社調査 |
7,860 |
607 |
12※4 |
前回公表の際の調査 |
423 |
35 |
8 |
合計 |
8,283 |
642 |
20 |
※4 12件の不正のうち、3件については、前回公表時に調査した箇所を追加調査し判明したものです。(423箇所の内、9箇所についてはガス漏れ修理は行ったものの、不正の有無まで確認できていなかったため、全社調査で改めて調査をしたものです。)
また、修理報告用の写真撮影において、ガス漏れ箇所の写真が撮りにくいとの理由で本来のガス漏れ箇所でない場所を撮影し報告していたガス工事会社ならびに施工班があることも明らかとなりました。
(2)新たに判明した不正に関与した社員数ならびに会社数
ガス工事会社3社および施工班6班(弊社社員なし)
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弊社社員(人) |
ガス工事会社(社) |
施工班(班) |
全社調査 |
0※5 |
3※6 |
6 |
前回公表の際の調査 |
1 |
1 |
1 |
合計 |
1 |
4 |
7 |
※5 聞き取り調査においてガス工事会社および施工班から、弊社社員の不正への関与を示唆する7件の指摘があり、その内の4件で5人の社員名が指摘され、その他3件は氏名不詳でした。しかしながら、そのような指摘があることに鑑みると、弊社社員が不正に関与していた可能性は完全には否定できないものの、5人の社員がいずれも不正への関与を否定している状況の中、上記指摘以外にその関与を伺わせる他の供述はなく、不正を認める客観的な証拠もないことから、これ以上の確認は難しく、弁護士の意見に基づき、弊社社員の不正への関与を認めることが困難と判断いたしました。また、元弊社社員から、現在確認されている最も古い不正(2009年2月25日修理)より前に、東京都世田谷区内の現場で工事会社・施工班による不正を発見したことがある旨の発言がありましたが、その後の法定漏えい検査等により、安全上問題のないことを確認しております。
※6 ガス工事会社3社には、東京ガスの100%出資子会社である(株)キャプティ(社長:板沢幹雄)が含まれております。なお、残り2社のうち1社は、直接、不正に関与していないものの、発注先の施工班が不正を行ったものと推察されます。
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3.原因究明について |
(1)不正に関与した関係者の動機
聞き取り調査から、本件に関しては、ガス漏れ箇所が発見できず工事が数日にわたった場合に、委託料の支払い金額の増額は認められにくいとの認識があったこと、また改めて道路使用許可の申請が必要になるなど事務手続きの煩雑さを感じていたことから、とくに多数の修理案件を抱える中では、その日のうちに修理を終わらせたいとの意識が強く働いたことがガス工事会社および施工班を不正に駆り立てた直接的な動機と考えられます。
また、不正に関与した関係者の一部は、微量のガス漏れ修理の際に、漏れ箇所が発見困難で特定できない場合があり、そうした場合において、これまで事故が確認されていないという経験則に基づき、微量なガス漏れのため、そのまま放置しても着火するレベルにないとの認識を持っていたことが確認されました。
(2)不正の誘因につながった背景
1. ルールの不備および運用における不徹底
ガス漏れ修理の際に、漏れ箇所が特定できない場合については、その判断基準および対応を社内マニュアルに明文化しておらず、地域拠点の運用に任せておりました。また、工事が数日にわたった場合の委託料の支払いに関しても適用基準が不明確で、地域拠点の運用に任せておりました。その結果、地域ごとに支払いへの対応が異なるといった事態が生じ、一部のガス工事会社においては支払い金額の増額は認められにくいとの認識があったことから、作業の継続を言い出しにくい状況が発生していたことも確認されました。
2. 業務量とマンパワーのアンバランスの放置
一部の地域では、ガス漏れ修理件数に対して施工班の数が少なく、こうした実態を弊社が看過しておりました。不正件数20件のうち11件が、修理件数の多い1施工班に集中しており、背景には、こうしたアンバランスの放置があったものと考えます。
(3)不正を防げなかった背景
弊社によるガス漏れ修理作業の結果のチェックは、写真を含めた書類の確認のみであり、写真の捏造など虚偽の申請については想定しておらず、その効果は不十分でした。また、修理作業後にガス漏れのないことを弊社として確認する仕組みとなっておらず、加えて、修理作業中に弊社社員が直接現場に赴く「抜き取り検査」も、頻度が低いこと等から、不正の防止という点で十分ではありませんでした。
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4.再発防止策について |
(1)お客さまの安全につながる品質の確保に最重点を置いた諸施策の速やかな実施
1. 業務チェック体制の是正
ガス漏れ修理箇所における安全を確保するため、修理が完了した1週間から2週間程度後に、施工者以外(弊社社員または検査会社)が当該修理箇所のガス漏れの有無を改めて調査することといたします。併せて、弊社社員の立会い等ガス漏れ修理業務における弊社による確認の機会を増やしていきます。
また、ITを活用し、リアルタイムで作業内容を遠隔で確認できる仕組み等を導入することにより、検収レベルの向上ならびに不正行為の防止を図ります。
2. ルールの不備および運用の不徹底の解消
ガス漏れ箇所が特定できない場合において、ガス工事会社および施工班がどのような行動をとるか、弊社がどのように関与するか、全社統一の基準・マニュアルを整備します。こうした取り組みを通じ、漏えい修理において現場で判断しなければならない事項を極力減らし、ガス工事会社ならびに施工班が作業に集中できる環境を整備します。
また、ガス漏れ箇所が特定できず継続管理となる件名に関して、ガス工事会社と弊社との役割分担(作業内容や判断業務など)を明確化します。加えて、地域ごとに異なっていた発注や支払い方法・条件の適用について、統一いたします。
3. 業務量とマンパワーのアンバランスの改善
ガス工事会社ならびに施工班について、全地域におけるマンパワーの平準化を図ってまいります。
(2)経年したガス管の取り替え推進
このたびの現場調査を通じ、修理箇所近傍からガス漏れが確認されており、ガス漏れの半数以上が「アスファルトジュート巻支管※7」であることから、埋設部での腐食により強いポリエチレン管への取り替えをこれまでより各年約3割増のペースで推進し、ガス漏れ発生件数の低減を目指します。
※7 アスファルトジュート巻支管…鋼管表面にアスファルトを浸透させたジュートを巻くことによりコーティングしており、一定の防食性能を有するガス管。
(3)弊社グループ全体での今後の取り組み
ガス漏れ修理を行わず放置していた本件は、保安の根幹に関わる問題であり、ガス事業者として本来、確実に行うべき業務が疎かになっていたものです。本件を契機に、二度とこのような事態を起こさず、お客さまに安心してガスをお使いいただけるよう、グループ全体の課題ととらえ、本年12月から「保安強化総点検本部」(別紙2参照)を設置します。当該本部において、弊社グループ全体の保安に関わる業務の課題を徹底的に洗い出し、課題整理と具体的な対策の取りまとめを行い、推進いたします。
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5.役員報酬の自主返上等について |
・代表取締役社長執行役員 |
岡本 毅 |
月額報酬の30%を3ヶ月返上(平成25年12月より) |
・担当常務執行役員 |
荒井英昭 |
月額報酬の30%を3ヶ月返上(平成25年12月より) |
・取締役会長 |
鳥原光憲 |
月額報酬の20%を3ヶ月返上(平成25年12月より) |
不正に関与した社員および関係会社を含む工事会社に対しても関与度合いに応じて厳正に対処いたします。
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(別紙1)不正修理の施工日と場所 |
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NO |
施工日 |
住所 |
備考 |
1 |
2009年2月25日 |
神奈川県藤沢市 |
前回公表時に判明した件名 |
2 |
2010年11月11日 |
神奈川県鎌倉市 |
3 |
2010年11月30日 |
神奈川県鎌倉市 |
4 |
2011年2月3日 |
神奈川県鎌倉市 |
5 |
2011年9月14日 |
神奈川県逗子市 |
6 |
2012年2月17日 |
神奈川県藤沢市 |
7 |
2013年7月27日 |
神奈川県相模原市 |
8 |
2013年8月22日 |
東京都町田市 |
9 |
2010年10月19日 |
東京都町田市 |
このたびの全社調査にて判明した件名 |
10 |
2011年2月4日 |
神奈川県横浜市栄区 |
11 |
2011年3月1日 |
神奈川県鎌倉市 |
12 |
2011年4月8日 |
神奈川県横浜市磯子区 |
13 |
2011年4月14日 |
神奈川県横浜市磯子区 |
14 |
2011年7月5日 |
東京都板橋区 |
15 |
2012年3月21日 |
神奈川県横浜市青葉区 |
16 |
2012年9月3日 |
神奈川県川崎市麻生区 |
17 |
2013年2月28日 |
東京都調布市 |
18 |
2013年3月21日 |
東京都杉並区 |
19 |
2013年3月28日 |
神奈川県横浜市港北区 |
20 |
2013年9月2日 |
東京都町田市 |
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(別紙2)保安強化に向けての今後の取り組みについて |
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1.基本方針 |
・今回の「ガス漏れ修理の不正」に関する反省を踏まえ、今後当社はトップマネジメントの関与の下、保安全般について継続的かつ徹底的にその強化に取り組む。
・まず第一段階として、「保安強化総点検本部」を設置し、専門家の指導・助言の下、保安関係4本部(リビング本部、エネルギー生産本部、導管ネットワーク本部、広域圏営業本部)が主体的かつ積極的に、お客さま視点から「お客さま満足度(CS)調査」、現場視点から「協力企業パートナーシップ調査」、マネジメント視点から「スタッフ調査」の三方向から保安業務全般にわたる総点検、棚卸しを行う。
・第二段階として、上記の総点検活動を踏まえ、平成26年度を「保安強化実行年」と位置づけ、抜本的な取り組みを年間を通じて進めていく。
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2.具体的計画概要 |
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3.保安強化総点検活動の内容 |