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プレスリリース

社長就任あいさつ要旨(新社長:内田 高史(うちだ たかし))

東京ガス株式会社
平成30年4月2日
広報部

 

事業を取りまく環境が激変する中、132年の歴史と1150万件のお客さまを有する当社および当社グループのさらなる発展を期すとともに、グループに働く社員とその家族の生活を守ることが私の使命であり、とりわけグループ中期経営計画「GPS2020」に掲げた目標を確実に実現し、2020年代の飛躍を確かなものとすることが最大の課題だと考えています。

事業環境の変化

当社グループが直面している課題は、エネルギーの自由化、低炭素化、省エネの進展、デジタル化、分散化、少子高齢化・人口減少等、実に多岐にわたり、経営に及ぼすそれぞれの影響は大変大きなものがあります。

最大の課題は、ガス・電力の自由化に伴う競争の激化です。
当社は創業以来、電気や石油、LPガス等、他燃料との激しい競争を経験してきました。特にオール電化の波は、ガス事業の存続を脅かすほどの事態でしたが、グループが一丸となってお客さまへの提案を強化し、天然ガスの位置づけを高めることができました。しかし、エネルギーの小売全面自由化がもたらす競争は、これまでと様々な点で異なっており、事業環境は一層厳しく、かつ複雑な様相を呈していると言わざるを得ません。

第一に、現下の競争は、ガス対ガス、電気対電気という同種のエネルギーを巡っての競争だということです。ガスや電気そのものは、差異化要素がほとんどないため、料金水準や料金メニューといった価格競争に陥りやすくなります。
第二に、ガス・電力事業者がそれまでの供給エリアを越えて競争に参入してきています。特に首都圏は需要成長エリアとして、今後とも参入企業は増え続け、ますます競争が激化するものと覚悟しなければなりません。
第三に、エネルギー以外の業種からの参入が顕在化してきました。通信、鉄道、マンションデベロッパー、ハウスメーカー、食料品の小売など、様々な業種がガスや電気を商材として扱うようになっています。
第四に、様々なアライアンスが誕生し、企業間でみるとパートナーとライバルの区別がつけにくい複雑な競争も現れています。

最後に、エネルギーに付加価値を付けるべく、様々な付帯サービスが登場しています。
当社は120万件を超えるお客さまから電気の申込みをいただきましたが、一方で約25万件のお客さまが他企業のガスに切替えました。競争はこれからが本番です。

二つ目の課題は、低炭素化や省エネへの対応です。
現在、エネルギー基本計画の検討は最終段階に入っています。その中で、再生可能エネルギーの位置づけはますます高まり、最大限に導入する方向で検討されているようです。一方、住宅分野での省エネは加速され、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の考え方が戸建だけでなく集合住宅にも広がろうとしており、この面からも再生可能エネルギーの積極的導入が図られる見込みです。
IEA(国際エネルギー機関)が「今後2040年にかけて天然ガスと再生可能エネルギーが勝者になる」(World Energy Outlook 2016)と指摘するように、天然ガスはますます位置づけを高めていくとは思われますが、そのためには「よりクリーンなガス利用」の実現が不可欠です。

三つ目の大きな課題は、デジタル化の進展です。
デジタル化は二つの変化をもたらします。一つは、全く新しい技術によって従来のビジネスモデルを根底から覆し、破壊してしまう、というもの、もう一つは業務の仕組みを変えてしまい、人手を不要にしてしまうこと、です。
エネルギー業界においても、リソースアグリゲーターの出現、すなわち、家庭や事業所の余剰電力を集め、分散型のネットワークを通じて融通し、ブロックチェーンで決済する、というビジネスが生まれる可能性があります。このビジネスは従来型の電力ビジネスを破壊し、エネルギーとは異なるデジタル企業が勝者になると言われています。
業務革新の分野では、様々な産業で、従来、人間にしかできないと思われていたことを、AIを利用することで代替し、抜本的な省力化が進められています。これによってデジタル化を先んじて取り込んだ企業の競争力は飛躍的に高まり、競争優位に立つことができます。

当社グループはこれらの変化に的確に対応し、将来に向けた発展の礎を築くべく、グループ中期経営計画「GPS2020」を策定しました。推進するにあたり特に意識すべき点を述べます。

「GPS2020」推進にあたって意識すべきこと

まず一点目は、激動の時代をチャンスと捉え、「常識にとらわれず変革に挑戦し続ける」ということです。
ガスを防衛するにはどうすれば良いか、電気のお客さまを一件でも多く増やすには何が必要か、お客さまが求めていることに応えられているか、業務を抜本的に効率化できないか、これまでにない発想で考え、実行に移していきます。
自由化の時代には、これまで想像できなかった新たな商品やサービスが生まれます。これまでのエネルギー事業を覆す画期的なビジネスも生まれるかもしれません。その変化についていけなければ事業は衰退してしまいます。むしろ当社グループは変化を起こす側に立つことを目指したいと思います。
当社グループには132年にわたり築き上げた1150万件のお客さまとの信頼の絆、原料調達からお客さま先までのLNGバリューチェーン、100数十万kWの自社電源、ライフバルやエネスタ・エネフィットを通じたお客さま一件一件とのつながり、パイプラインやお客さま設備の建設・維持管理等、エネトラストの持つ総合設備事業、各子会社の持つ天然ガスまわりの様々な事業など、競合他社は持ち合わせていない多種多様な強みがあります。これらを真に活かすことで、より一層お客さまの心に響く新たなサービス、新たな事業を生み出すことができるはずです。
一方で、競争環境にあって、変えなければならない業務やその仕組みもあるはずです。コスト削減は充分か、逆に成長分野に経営資源を重点的に投入できているか、よく点検し、変えるべきは思い切って変えていきます。
変革は痛みを伴います。挑戦は失敗に終わることも多いかもしれません。しかし、失敗は挑戦した証であり、まずは挑戦し、迷ったら前進する組織にしていきます。
新たな価値に挑戦する風土を創り上げることで、激動の時代を乗り越え、さらなる発展が約束されると信じています。

二点目は、「変革は現場第一線がリードしていく」ということです。
新たな事業は、お客さまニーズの把握と技術やビジネスモデルの構築といったシーズとが相まって生み出されます。ここで特に重要なのは、ニーズに基づく事業開拓です。
お客さまニーズをくみ取って、自ら変革を続け、発展を遂げた事例は数多くあります。これらの成功事例を見ると、時点時点でスタッフやコーポレートがバックアップしたことはもちろんのこと、お客さまニーズを肌で感じ、ニーズに応えようとしたのは現場であったと思います。当社グループは日々、家庭用から産業用まで1150万件のお客さまと接しています。お客さまニーズを積極的に吸い上げるならば、新しいサービスや事業を生み出していくことができると確信しています。
また、デジタル技術を活用した業務改革も現場がリードして推進していきます。既に、東京ガスカスタマーサポートではこの技術を活用した業務改革に取り組んでいます。導管ネットワーク本部では、AIやIoTを利用して報告業務の変革に取り組もうとしています。原料・生産本部にあっては、AIなどのデジタル技術を活用して、LNG基地や発電所の操業を高度化するためのトライアルに着手しています。東京ガスエネルギーでは、デジタル技術を活用してLPガスの配送の効率化を目指しています。すべての現場で、業務革新の波を起こしていきたいと思います。

三点目は、「多様なビジネスパートナーとの連携」が一層重要になるということです。
当社はこれまでも、事業環境の変化に応じて多くのビジネスパートナーとの関係を築き、それを活かしながら事業を展開してきました。今後、取りまく環境が大きく変化する中にあって、グループの目指すGPS×G(グローバル)を具現化していくには、従来以上に他社との連携が重要となります。ベンチャー企業も含む多種多様な企業との連携を、これまでの発想に固執することなく、積極的に模索していきたいと思います。

四点目は、「多様な人材の活躍」です。
「GPS2020」は当社グループに様々な活躍の場を提供します。ガス事業はもとより、電力事業、不動産事業、海外事業、さらにこれからはデジタル技術を応用したビジネスの立ち上げにも広がっていきます。デジタル分野は若手が得意と言われています。より専門化する電力ビジネスには電力事業経験者が欠かせません。海外事業では現地スタッフの充実が重要です。金融知識が必要とされる職場もあるかもしれません。ガスに関するベテランの知識・ノウハウが海外やアライアンスパートナーから求められることもあります。伝統や組織の縛りに囚われず、多様な人材が活き活きと働ける企業グループを目指したいと思います。

最後に、東京ガスグループの最も大きな強みは、グループ社員一人ひとりの誠実さに裏付けされた「安心、安全、信頼」のブランド価値、ということです。電気のお客さま件数が伸びているのも、産業用やエンジニアリング事業が拡大しているのも、そして何よりも、多くのお客さまが東京ガスのガスを使い続けていただいているのも、当社グループがお客さまから信頼いただけているからです。
保安の確保、安定供給はもとより、コンプライアンスに留意し、誠実にお客さまと向き合うことで、「安心、安全、信頼」のブランド価値を守り続けたいと思います。

激動の時代、不確実な時代だからこそ、グループ一丸となって「GPS2020」の実現に取り組んでまいります。

以上

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