都市ガス製造・供給技術

-162℃のLNGタンク内部を観察可能な小型軽量かつ高性能な観察装置

フルハイビジョンのカラー映像等の採用により、タンク内部の高精細な観察を実現

LNG(液化天然ガス)タンクの内部を、使用している状態で目視点検を可能とする、小型軽量かつフルハイビジョンのカラー映像で観察できる装置を世界で初めて実現しました。小型軽量のため人力での持ち運びが可能です。

開発の背景

現在、日本全国のガス、電力会社などで地下式、地上式を合わせて多数のLNGタンクが稼動しております。LNGには腐食性などの劣化要因がないため、LNGタンクは長期間にわたる安全性が確保されていますが、将来的に安全に使用し続けるためには、膨大な費用と長期間の停止を必要とする開放点検をせずに、タンクを稼動させたままで内部の状況を把握することが望まれていました。しかし、タンク内部の-162℃という超低温に耐えて高解像度の映像を映すことは大変高度な技術が必要です。
上記を受け、平成12年に観察装置の初号機が開発されましたが、より高精細な観察や昨今の内径が80mを超える大型タンクに対応するため、カメラ、照明の高性能化に取り組んできました。

LNGタンク外観 LNGタンク外観

装置の概要と特長

カメラ、照明の高性能化を図るためには一般的に大型化が有効ですが、タンク内部に挿入するための入口(口径6B)に収まる細さに抑えながら、装置のハンドリングを悪化させないために、撮像装置や照明装置は既存装置並みの寸法・重量(直径約0.1m、長さ約1.7m、重量約20kg)に抑えるという制約もあり、これらを両立させなければならない開発の困難さがありましたが、次の工夫により課題を解決することができました。

(1)カメラの性能強化
(高感度カラーCOMOS210万画素を採用。光学30倍望遠)
(2)照明の性能強化
(高輝度LED、集光レンズ及びリフレクタの採用)


これにより近年大型化しているほぼ全てのLNGタンクの内部観察が可能となりました。
本装置は主に、撮像装置、照明装置、および制御装置からなります。撮像・照明の各設備本体は、ケーブルによってタンク内部に吊下げられ、上下方向の位置決めはケーブルを人力で上下させて行います。カメラの観察方向は、撮像装置本体のパン回転機構、およびカメラヘッドのチルト機構により変化させることでタンク内全体の観察が可能です。制御装置では撮像・照明装置の操作、及び画像のモニタリング、記録を行います。

撮像・照明装置概略図 撮像・照明装置概略図

観察時全体概略図観察時全体概略図

観察画像例

ポンプバレルと階段(LNG中から撮影) ポンプバレルと階段(LNG中から撮影)

底板溶接線(LNG中から撮影) 底板溶接線(LNG中から撮影)

展望

本装置は、東京ガス袖ケ浦LNG基地、および根岸LNG基地に配備され、タンクメンテナンスに活用されています。
さらに、当該観察装置は陸上、船舶を問わず、LNG、LPG、エチレンなど他の低温タンクへの適用が可能であり、産業界全体に対して幅広く活用することができます。

ロボティクス技術を活用した管内点検のスマート化

道路に埋設されているガス管内の異常や老朽化の状況を点検する際には、管内にカメラを挿通して確認しています。早稲田大学次世代ロボット研究機構とカメラを搭載した管内自走ロボットを共同開発しており、管内点検作業のスマート化を検討しています。

現在使用している管内点検用カメラは、画像を伝送するケーブルをグラスファイバーにより剛性を高めており、カメラを管内に押し込む力を伝えやすくしています。しかしながら直線部分の挿通性はあるものの、曲管があるとそれ以上先に挿通できないという欠点がありました。曲管より先まで確認したい場合は、新たにカメラを挿入するための掘削が必要となり、掘削時間増大により作業が長期化することがありました。

従来管内点検カメラの点検方法の課題従来管内点検カメラの点検方法の課題

従来管内点検カメラの外観従来管内点検カメラの外観

地下水位上昇や水道管漏水などの原因によりガス管内に水が入って発生するガスの供給支障などの場合にも、この管内点検用カメラを使用しており、供給再開のためには滞水位置、浸水位置の迅速な確認が必要になります。このような緊急性の高い現場では、ガス管内確認までの時間の短縮が求められます。

早稲田大学次世代ロボット研究機構と共同開発中の管内自走ロボットは、ガス管のような細い管内でも挿通でき、曲管にも対応できる柔軟性を備えていることに特徴があります。挿入箇所から管内へ押し込むことにより推進力を与えていた従来カメラと異なり、カメラが取り付いている先端のロボット自体に推進力があるため、従来の管内カメラでは挿通できなかった曲管の先まで挿通することができます。一か所の掘削で点検できる範囲が拡大するため、ガス管内確認までにかかる時間を大幅に短縮することができます。

早稲田大学次世代ロボット研究機構と共同開発している管内自走ロボットは2種類あります。一つ目の管内自走ロボットは「螺旋脚車輪機構ロボット」です。

機体の前後に、進行方向に対して斜めに脚車輪機構が配置されており、この螺旋状に配置された脚車輪が旋回することにより推進力が発生します。脚車輪はパンタグラフ機構で屈伸するため、接手や曲管部の段差も乗り越えることができます。機体中心に配されたサーボモータで屈曲することにより、曲管やT字管も任意の方向に挿通することができます。

螺旋脚車輪機構型管内自走ロボットの外観螺旋脚車輪機構型管内自走ロボットの外観

もう一つの管内自走ロボットは「空気圧伸縮機構ロボット」です。空気圧により伸縮する「伸長ホース」と、その前後に管壁を把持するためのバルーンが配置されています。前後に配置されたバルーンを交互に膨らましながら、伸長ホースを伸縮させることにより推進することができます。

空気圧伸縮機構ロボット管内自走ロボットの外観空気圧伸縮機構ロボット管内自走ロボットの外観

道路に埋設されたガス管からお客さまのメーターまでのガス管は細くて曲率の厳しい配管で構成されていますが、このような厳しい条件の管内もこのロボットは挿通することができます。メーターが取り付けられていた箇所からロボットを挿入することにより、掘削を伴わずに管内の点検が可能になるため、作業時間を大幅に短縮することができます。

空気圧伸縮機構ロボット管内自走ロボットを用いた掘削を伴わない点検方法空気圧伸縮機構ロボット管内自走ロボットを用いた掘削を伴わない点検方法

今後もさらにガス導管の建設・維持管理・緊急保安などの広範の分野にわたってロボティクス技術の活用を検討し、作業のスマート化を図って参ります。

パイプラインの安全性をより確かなものに

大規模地震、地盤液状化、津波、河川増水・・・社会インフラを安全に運用していく上で想定すべき事象は、年々多様化の一途をたどっています。ガスパイプラインという大切なインフラの安全性を守り続けるために、新たな事象への対応方法を明らかにする研究開発に取り組んでいます。弊社は都市ガス事業のリーディングカンパニーとして、設計や維持管理を高度化していくことに関しても最先端を走り続けるべく、関連する研究開発において挑戦を続けています。
下図はパイプラインの大変形性能を評価した事例になります。地盤液状化による側方流動がパイプラインに作用した場合を想定し、所定の耐震性能を有するかを評価したものです。技術検討にあたっては、実管試験や数値シミュレーションを活用しています。

鋼管の大変形挙動評価鋼管の大変形挙動評価

地盤液状化による地盤変位の発生地盤液状化による地盤変位の発生

ガス管の変形挙動シミュレーション

曲管の変形挙動シミュレーション 曲管の変形挙動シミュレーション

曲管の曲げ実験 曲管の曲げ実験

直管の変形挙動シミュレーション 直管の変形挙動シミュレーション

直管の曲げ実験 直管の曲げ実験

ガススマートメーターシステムの開発

東京ガスでは、通信機能付きメーター、広域通信ネットワーク、Uバスエアネットワーク、センターシステムにより構成されるガススマートメーターシステムを開発しています。技術仕様を他社と共同検討し、国内において業界標準化を行いました。Uバスエアの通信仕様をIEEE802.15.4-2015に提案して規格文書に盛り込むなど、国際的な標準化にも取り組んでいます。

概要

東京ガスは、ガス料金を算定するために、毎月1回検針を行っています。毎月の検針では、検針員がお客さま宅を訪問して、ガスメーターの指示数を読み取り、ご使用量を確認しています。
しかし、訪問による検針は、オートロックマンション等の高セキュリティー化された物件の増加や、検針業務の効率化、将来の労働人口の減少に伴う検針員の不足リスクへの対策等の課題があり、スマートメーターを利用した遠隔検針のニーズが高まっています。また、スマートメーターの導入により、遠隔開閉機能等を利用した導管ネットワークの保安・災害の耐性向上やガス使用量データを利用した見守りや省エネ等の新たなサービスの創出が期待されています。
これらに応えるため、東京ガスでは、他ガス事業者様やメーカー各社様と共同で、ガススマートメーター(遠隔検針、遠隔開閉、計測データの収集・発信の機能を持つガスメーター)を開発しています。

ガススマートメーターシステムの全体構成ガススマートメーターシステムの全体構成

Uバス

ガススマートメーターシステムを構成する広域無線端末、多段中継無線端末、通信機能付きメーターは、お互いにUバスという通信規格で接続されています。
Uバスは、従来の都市ガスメーターの通信インターフェース(Aライン)よりも通信速度を高速化したことに加え、パケット通信方式を採用した新しい通信インターフェースです。LPガス業界と共同で仕様検討を実施し、Uバスエア(後述)と合わせてNPO法人テレメータリング推進協議会で標準化されています。仕様が標準化されたことで通信端末の普及促進が可能となり、量産化による通信端末のコストダウンが期待されています。
Uバスは新しい世代の家庭用ガスメーターに搭載されているほか、東京ガスでは、ガスメーター以外にも、Uバスを搭載した機器を開発しています。

Uバス仕様

レイヤー 主仕様 特徴
物理層 バス接続方式
  • 多種の機器の共同利用が可能
伝送速度の高速化
(9,600bps)
  • 高速通信(現行の約30倍)による応用分野拡大、サービスレベルの向上
データリンク層 パケット通信
  • 異通信速度端末の相互通信性向上
  • 回線の利用効率の向上
  • 障害耐性の向上
パケット長の固定化
(104キャラクタ/パケット)
  • 端末機器の処理効率の向上
  • 即応性向上(1パケット:0.12sec)
ネットワーク層 メーターゲートウェイ機能
  • 広域無線、多段中継無線に対応可能なアドレッシングの実現
簡易アドレッシング
  • 端末機器設置時の施工性の向上
セキュリティ 標準暗号化の採用
  • 認証、秘匿性の向上

広域無線端末

広域無線端末は、お客さま宅のガススマートメーターと東京ガスのセンターシステムとをLTE通信網を介して繋ぐ端末です。
ガスメーターの周辺には電源がありませんので、広域無線端末は電池で動作しなければなりません。しかし、電池が切れた際に、電池交換のためにお客さま宅に伺うことは、お客さまにご迷惑をおかけするだけでなく、業務効率化の点でも望ましくありません。ガスメーターは、計量法により10年に1度交換する必要がありますので、ガスメーターの交換にあわせて広域無線端末のメンテナンス作業を行うことができれば、お客さま宅への訪問頻度を下げることができます。
そのため、広域無線端末などのガススマートメーターシステムで使われる通信端末は、電池で10年間動作することが求められています。
東京ガスでは、国際標準化されているCat.1+eDRXのLTE規格により省電力化を実現した、10年間電池駆動が可能な広域無線端末を開発しました。

システム構成イメージシステム構成イメージ

多段中継無線端末

多段中継無線端末は、Uバスエア規格に準拠した無線端末です。
Uバスエアは、ガスメーター間をマルチホップ通信により中継する、920MHz帯を使用し超低消費電力を実現した近距離無線通信方式です。無線端末間で、データをバケツリレーのように転送することができます。例えば、LTEの電波環境の良い場所に設置された広域無線端末から、多段中継無線端末でデータを転送することによって、建物の陰など、広域通信ネットワークのカバーエリアから外れたガスメーターにもデータを転送することが可能です。無線端末を適材適所で組み合わせて各無線端末の長所を活用することにより、できるだけ広いエリアで通信することができます。
また、Uバスエアは、網の目のようなメッシュ型の無線ネットワークを構築できますので、通信環境が悪化した際にデータ転送経路を迂回させることができ、より高い通信信頼性を実現しています。例えば、多段中継無線端末の施工後に、周囲に高層ビル等の電波を遮る建物が建設されても、迂回した通信経路が自動的に設定されます。
Uバスエアの仕様は、IEEE802.15.4-2015規格を使用し、Uバスと合わせてNPO法人テレメータリング推進協議会の標準仕様として採用されています。
多段中継無線端末も広域無線端末と同様に電池で10年間動作することが求められますので、東京ガスでは、全端末が間欠動作しながらマルチホップ通信できるUバスエアの特長を活用し、10年間電池駆動が可能な多段中継無線端末を開発しました。

Uバスエア仕様概要

周波数 920MHz帯(ARIB STD-T108準拠)
出力 20mW、10mW、1mW
通信速度 100kbps
ネットワークトポロジ メッシュ。1ネットワークあたり最大50台収容
中継段数 最大15段

多段中継無線端末の特徴多段中継無線端末の特徴

東京ガスでは上記のような技術開発のほかに、下記のような取り組みも行っております。

  • デジタル技術による、運転・メンテナンスの効率化・高度化
  • ガス分析・材料評価・化学分析の研究開発
  • ガスの漏洩・拡散・爆発に関する研究開発
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