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工場内の未利用温水を蒸気に変換する「スチームリンク」の開発について

東京ガス株式会社
株式会社荏原製作所
三浦工業株式会社
平成22年11月4日

 

 東京ガス株式会社(社長:岡本毅、以下「東京ガス」)、株式会社荏原製作所(社長:矢後夏之助、以下「荏原製作所」)、三浦工業株式会社(社長:橋祐二、以下「三浦工業」)は、工場内で発生する90℃程度の低温未利用温水を、加熱や殺菌などの生産工程に利用できる160℃程度の蒸気に変換する「スチームリンク*1(以下「本システム」)」を開発しました。未利用温水から蒸気に変換するシステムの開発は、国内で初めて*2となります。荏原製作所および三浦工業は、本年12月から本システムの受注を開始し、東京ガスは、供給エリア内における提案営業を行ってまいります

 90℃程度の温水は、冷却工程や燃焼廃ガスとの熱交換あるいは蒸気の凝縮など工場内の様々な生産工程から多く発生します。これらの低温の温水は、工場内の生産工程に利用する熱としては温度が低いため利用用途が限られており、未利用のまま廃棄・放熱されている温水は全国で年間33,000TJにも及ぶとされています*3

 本システムは、工場内で発生する90℃程度の未利用温水で臭化リチウム水溶液を加熱させて、給水を130℃程度の低圧蒸気に変換し、さらに高圧蒸気を用いて低圧蒸気を昇圧することで、加熱や殺菌などの生産工程に幅広く利用できる160℃程度の蒸気に変換します。未利用温水から変換した蒸気を加えることで、昇圧に用いた高圧蒸気の約1.3倍の蒸気量を出力できるため、従来よりも蒸気ボイラに使用するガスの消費量を抑えることができます。本システムを使用して約1,000kg/時(年間17.5TJ)の蒸気量を出力するケースでは、年間のCO2排出量を約24%(205t-CO2相当)削減し、年間のガス消費量を約10万m3N(4.1TJ)、ガス料金を約680万円節約します*4

 また本システムは、ガスエンジンコージェネレーションシステム(以下「ガスエンジンCGS」)の廃温水も蒸気に変換することができ、ガスエンジンCGSの廃ガスボイラから得られる蒸気とあわせることで、廃熱から得られる蒸気量を増大させることが可能となります。なお、本システムでは、発電出力500〜1,000kWクラスのガスエンジンCGSとの組み合わせを想定しています。

 本システムは、荏原製作所が温水の低圧蒸気化技術確立を、三浦工業が低圧蒸気の昇圧技術とシステムの制御技術確立を、東京ガスがシステムコンセプトの検討や試作機試験を担当しました。また、開発に当たっては株式会社ツムラ(社長:芳井順一)の茨城工場に試作機を設置し、本年3月から実証試験を行い、負荷や冷却水温度などの変動に対しても安定した稼働が可能であることを実証しています。なお平成23年度には、今回開発の約2倍の出力を持つ機種をラインナップに加える予定であり、現在開発を進めております。

※1 「スチームリンク」は、東京ガスが商標登録を出願中。
※2 東京ガス調べ。
※3 (財)省エネルギーセンター「工場群の排熱実態調査研究要約集」より。
※4 参考資料「3.仕様例」の条件において、都市ガスCO2排出原単位0.0495tCO2/GJ((財)省エネルギーセンター「工場・事業場のための温対法と省エネ法」より換算)、蒸気単価4.5円/kg、ボイラ効率90%、運転時間6,000時間/年とした場合の試算結果。

以上

参考資料

1.システムフロー図
システムフロー図
2. 本システムの原理
本システムの原理
(1)再生器:   内部が真空であることから温水によって加熱された臭化リチウム水溶液が沸騰し、冷媒蒸気と濃溶液に分離され、発生した冷媒蒸気は凝縮器へ
(2)凝縮器   冷媒蒸気は冷却水により凝縮され、冷媒液となり蒸発器へ
(3)蒸発器:   冷媒液は温水により加熱され、内部が真空であることから沸騰し、冷媒蒸気となり吸収器へ
(4)吸収器:   再生器からの濃溶液が散布され、蒸発器から来る冷媒蒸気を吸収し、この吸収の際に発生する吸収熱により給水を加熱して湿り蒸気を発生
(5)分離器:   液分を分離し、低圧蒸気を製造
(6)ノズル部:   ボイラから得られる高圧蒸気が減圧され低圧超音速蒸気へ
(7)ディフューザ部:   超音速蒸気が低圧蒸気を巻き込み、口径が広がるに従い減速して圧力を回復し、0.5MPaの蒸気を出力
3.仕様例
 
項目 中間期・冬期 夏期
温水 熱源 工場内の未利用温水
CGSの廃温水
熱量 377kW 305kW
入口温度 90℃
出口温度 84℃ 85℃
流量 52.8m3/h
冷却水 入口温度 28.5℃ 32℃
出口温度 32.1℃ 35℃
流量 45.6m3/h
高圧蒸気 圧力 1.6MPa
温度 205℃
流量 790kg/h
出力蒸気 圧力 0.5MPa
温度 159℃
流量 1,055kg/h 1,005kg/h
給水温度 60℃
電源容量 8.5kVA
  • 温水入口温度は80〜95℃の範囲で対応いたします
  • 温水および冷却水流量は±20%の範囲で対応いたします
  • 高圧蒸気圧力0.8〜2.0MPaを用いて、出力蒸気0.3〜0.6MPaの範囲で対応いたします
4.実証試験機の外観
実証試験機の外観
(画面手前中央が「スチームリンク」。画面奥がガスエンジンCGS)
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