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太陽熱を冷房に利用する「ソーラー吸収冷温水機」の開発について
〜太陽熱を有効活用した業務用の空調システム〜

東京ガス株式会社
大阪ガス株式会社
東邦ガス株式会社
平成22年6月22日

 

 東京ガス株式会社(社長:岡本 毅)、大阪ガス株式会社(社長:尾崎 裕)、東邦ガス株式会社(社長:佐伯 卓)の都市ガス三社(以下「ガス三社」)は、太陽で暖められた熱を利用して冷房を行う業務用の空調機「ソーラー吸収冷温水機」(以下「本製品」)を開発しました。本製品は、川重冷熱工業株式会社(社長:大黒 一豊、以下「川重」)、三洋電機株式会社(社長:佐野 精一郎、以下「三洋」)、日立アプライアンス株式会社(社長:石津 尚澄、以下「日立」)のそれぞれのメーカーとガス三社との共同開発品です。

 本製品は、太陽熱利用のために専用設計された空調機です。太陽熱を優先的に利用し、雨天の日など天気により熱が不足する時も、ガスで効率良くバックアップすることにより、快適性・利便性を維持しつつ、環境性を追求しました。太陽熱を集める集熱器(以下「集熱器」)と本製品を組み合わせた業務用空調システム(以下、「ソーラークーリングシステム」)は、延床面積4,000m2(3〜4階建て)のビルの場合で、太陽熱を組み込まない従来のガス空調システムと比べ、冷暖房に使われる年間の一次エネルギー消費量が約24%、CO2排出量が約21%(約34トン)低減※1します。

 本年6月から、メーカー三社が本製品の製造※2および販売を行ってまいります。あわせてガス三社は、事務所ビル、学校、病院、工場などのお客さまに本製品を活用したソーラークーリングシステムの普及を目指してまいります。

図 本製品を使用したシステムの代表例
※1 延床面積4,000m2のテナントビルで、従来のガス吸収冷温水機(冷房定格COP1.0(高位発熱量基準))に対して、集熱器総面積240m2の集熱器と本製品を設置した場合の試算。ただし集熱器の面積とお客さまの空調負荷によって、本システムによる省エネおよびCO2削減効果は異なる。
※2 冷房能力に応じて、川重が8機種、三洋が4機種、日立が17機種をそれぞれ販売開始。
※3 暖房時は、太陽熱が暖房熱交換器を介して暖房用の温水を製造。

以上

詳細説明

1.本製品の主な特長
 
(1)空調能力を安定確保する機能
  太陽熱の少ない雨天の日や、太陽熱だけでは冷房負荷を賄えない時でも、要求される冷房負荷に追従するために、自動的にガスでバックアップを行い、必要な能力を安定的に確保し、快適な空調を実現します。
(2)太陽熱を優先的に利用する機能
   太陽熱を優先的に利用する制御を内蔵しています。その結果、ガス使用量の削減が図れ、省エネルギーを実現します。
(3)太陽熱利用量を最大化する機能
   本製品は、太陽熱凝縮器※4の新設および冷却水の通水経路の最適化※5などによりできる限り低い温度の太陽熱でも利用できるようにしました※6。冷房負荷率100%の場合で、75℃の太陽熱でも有効利用できます。さらに冷房負荷率が低下した場合は、75℃よりも低い太陽熱が利用可能であり、例えば冷房負荷率30%では、60℃程度の太陽熱でも利用できます※7
(4)システム効率を最大化する機能
   集熱器の集熱効率を上げるためには、集熱器から取り出す温水温度をできる限り低くし、大気への放熱を抑制することが重要です。 本製品は、冷房負荷に応じて変化する太陽熱利用温度領域を演算し、集熱器から取り出す温水温度をできる限り低い温度で利用する制御を行っているため、ソーラークーリングシステム全体の効率を最大化します。
(5)冷房COP1.3以上の高効率機器※8
   本製品は、ガス単独で運転した際の冷房定格COPが1.3以上(電気式の冷房定格COP3.5以上に相当)あり、二重効用ガス吸収冷温水機としては、最高レベルの高効率機器となります。
※4 太陽熱で発生した冷媒蒸気を凝縮させるための装置。
※5 一般のガス吸収冷温水機では冷却水を吸収器から通水するが、本製品は太陽熱凝縮器から通水する。
※6 これらの採用技術はメーカー三社でそれぞれ異なるが、ここではその代表的な内容を記載。
※7 メーカーにより若干異なるため代表的な数値。太陽熱とガスの併用運転時での冷却水入口温度25℃の条件。
※8 高位発熱量基準。
2.開発の背景
 
     業務用の最終エネルギー消費量の約3分の1は、冷暖房の空調として利用されています。ガス三社は、再生可能エネルギーである太陽熱を有効に利用して、冷房に必要な冷水に変換するソーラークーリングシステムの開発について、2009年度から各社がそれぞれのデモプラント※9による実証を行ってまいりました。
   従来のソーラークーリングシステムでは、冷水に変換する機器として、コージェネレーションシステム(以下「CGS」)の廃熱の利用が技術的に確立されている「廃熱利用型ガス吸収冷温水機(以下「ジェネリンク」)」を活用しておりました。しかしジェネリンクは、CGSの安定した高温の廃熱温水を有効利用するように設計された機器であることから、天気によって集熱温度が大きく変動する太陽熱は、温水温度が低下した時に太陽熱が優先利用できなくなるという課題※10がありました。そこで、ソーラークーリングシステムの省エネルギー性向上のために、低い温度の太陽熱でも有効利用できるように専用設計された本製品の開発が望まれていました。
   本製品は、ガス三社が行ったソーラークーリングシステムの実証研究ならびに商品仕様の検討結果に基づき、メーカー三社がそれぞれ詳細設計および製造を実施しました。
※9 東京ガスでは中原ビル(http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20090209-01.html)、大阪ガスでは導管技術センター(http://www.osakagas.co.jp/company/press/pr_2009/1175336_1256.html)、東邦ガスでは津営業所(http://www.tohogas.co.jp/press/752.html)で実証を実施。
※10 CGS廃熱温水は安定して80℃以上の温度を維持するが、太陽熱温水は日射の変動によって80℃以下に低下し、従来のジェネリンクでは太陽熱の優先利用ができない(冷房負荷率100%の場合)。
3.本製品の基本仕様
 
  川重 三洋 日立
冷房能力範囲 281〜1,055[kW]
80〜300[RT]
352〜703[kW]
100〜200[RT]
422〜3,516[kW]
120〜1,000[RT]
定格冷却水入口温度 31[℃] 31[℃] 31[℃]
冷水温度 15→7[℃] 15→7[℃] 15→7[℃]
ソーラー温水利用可能温度
(冷房負荷率100%時)
75〜98[℃] 75〜98[℃] 75〜98[℃]
ガス消費量
(冷房負荷率100%時)
ガス単独 2.68[kW/RT] 2.66[kW/RT] 2.57[kW/RT]
ソーラー温水
入口定格温度
1.66[kW/RT]
(@90℃)
2.14[kW/RT]
(@81℃)
1.77[kW/RT]
(@90℃)
ソーラー温水
入口下限温度
2.33[kW/RT]
(@75℃)
2.32[kW/RT]
(@75℃)
2.44[kW/RT]
(@75℃)
4.製品写真
 
川重製品 三洋製品 日立製品
5.開発メーカー情報
 
(1)川重冷熱工業
  ・企業概要
創立 1972年(昭和47年)3月10日
資本金 14億6,050万円
代表取締役社長 大黒一豊
事業内容 汎用ボイラ、空調機器、吸収式ヒートポンプ等の設備およびそれらの部品の設計、製造、据付、修理、補修、運転保守整備ならびに販売、賃貸借。土木、建築工事の設計、施工・監理。管工事、電気工事の設計、施工・監理。その他前各号に付帯関連する事業
本社所在地 滋賀県草津市青地町1000番地
 
(2) 三洋電機株式会社
  ・企業概要
創立 1950年(昭和25年)4月8日
資本金 3,222億4,200万円
代表取締役社長 佐野精一郎
事業内容 電化製品、空調機、業務用機器、半導体等の製造・販売・保守・サービス等
本社所在地 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号
 
(3) 日立アプライアンス株式会社
  ・企業概要
創立 2006年(平成18年)4月1日
資本金 200億円
代表取締役社長 石津 尚澄
事業内容 総合空調及び家電製品の開発・製造・販売
本社所在地 東京都港区西新橋2丁目15番12号
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