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東京ガス港北NT(ニュータウン)ビル(アースポート)の改修について
〜再生可能エネルギーと都市ガスの融合によるネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)をめざして〜

東京ガス株式会社
平成22年2月3日
広報部

 

   東京ガス株式会社(社長:鳥原光憲、以下「東京ガス」)は、再生可能エネルギーと都市ガスを利用したネット・ゼロ・エネルギー・ビル※1(以下「ZEB」)の実現をめざし、今月1日から東京ガス港北NT(ニュータウン)ビル(横浜市都筑区、愛称:アースポート、以下「アースポート」)の改修を開始しました。改修完了は本年9月末の予定です。
   アースポートは、これまで1997年度環境・省エネルギー建築賞建設大臣賞(商業サービスビル部門)等数々の賞を受賞し、建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)※2でもSランクに位置付けられるなど、先進的なエネルギー利用設備が導入されたトップレベルの省エネビルであり、現状でも一般テナントビル※3より一次エネルギー使用量は24%少なく、CO2排出量は25%少なくなっています。
   今回の改修では、再生可能エネルギーと次世代技術の組合せにより、さらに一次エネルギーを16%、CO2排出量を19%削減し、一般テナントビルに対して一次エネルギーを40%、CO2排出量を44%削減できる見込みです。
   さらに、2030年までには、設備のさらなる高効率化やエネルギーの面的利用の推進等により、年間の一次エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることをめざします。
   なお、本改修事業は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)の「次世代省エネルギー等建築システム実証事業※4」に採択されています。

※1: ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)
建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたは概ねゼロとなる建築物。
※2: 建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)
建築物の環境性能で評価し格付けする手法で、「Sランク(素晴らしい)」から、「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B−ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」という5段階の格付けが与えられる。
※3: 一般的なテナントビルのエネルギー消費原単位を2,518MJ/m2年、CO2排出原単位を 107kg‐CO2/m2(「東京都地球温暖化対策計画書制度」2005年度実績値)として算出。
※4: 次世代省エネルギー等建築システム実証事業
2030年までにビルにおける年間のCO2排出量を概ねゼロとするゼロ・エミッション・ビルの普及を図るため、ゼロ・エミッション・ビルの将来見通しを踏まえた上での技術開発及び実証事業について実施する補助事業。
■実施背景
   低炭素社会の実現に向け、日本の最終エネルギー消費量の3割以上を占め、CO2排出量が増加傾向にある民生部門の省CO2が強く求められています。特に、膨大なストックが存在する中小規模の既築の事務所ビルにおける対策は急務です。
   東京ガスは、中小規模の既築の事務所ビルの改修によるZEB化の実現をめざすため、すでにガスエンジンコージェネレーションシステム※5(以下「ガスエンジンCGS」)の導入や自然採光、自然通風等によりトップレベルの省エネ・省CO2が進んでいるアースポートにおいて、最先端の技術を用いたさらなる対策の実証を行います。
※5: ガスエンジンコージェネレーションシステム(ガスエンジンCGS)
建物に設置したガスエンジンで発電を行い、同時に廃熱を有効な熱エネルギーとして利用する総合エネルギー効率の高いシステム。
■改修概要
  1. 太陽熱、ガスエンジンCGSの廃熱、GHPチラーの廃熱を利用した省エネ・省CO2空調システム
       定格熱出力約100kWの太陽熱集熱器を設置し、天候等により集熱量が変動する太陽熱を最優先で利用しながら、ガスエンジンCGSの廃熱で補完し、ソーラークーリング対応ガス吸収冷温水機※6を用いて安定的に空調を行います。
       さらに、ガスエンジンヒートポンプチラー※7(以下「GHPチラー」)とその廃熱を利用したデシカント空調機※8を組み合わせ、これまで冷房時には利用されることがなかったGHPチラーの廃熱も有効利用することで、一層の省エネ・省CO2を図ります。GHPチラーの廃熱を冷房時に利用するのは日本で初めて※9です。
  2. 太陽光発電とガスエンジンCGS等を組み合わせた電力統合制御システム
       最大出力が20kWの太陽光発電パネルを設置し、太陽光発電、ガスエンジンCGS、蓄電池を組み合わせることで、変動する太陽光による発電電力を補完し、安定的に電力を利用する統合制御技術を実証します。
       低炭素社会実現のためには、建物単体の省エネ・省CO2だけでなく、街区等のエリア全体でエネルギーを融通して、再生可能エネルギーを最大限導入する、スマートエネルギーネットワークの考え方が重要です。そのためには、自然エネルギーの変動を補完しながらエリア内で電力・熱のバランスを取り、運用する技術が鍵となります。今回実証する電力統合制御システムは、スマートエネルギーネットワークの構築に向けた要素技術になります。
  3. 自然採光を活用した次世代照明制御システム
       アースポートでは、竣工当初から昼光利用、タスクアンドアンビエント※10照明等の先進的な照明技術を導入してきました。今回の改修では、自然採光の利用拡大、LED等の高効率照明の導入、人感センサーによるオン・オフ制御、エリアごとの照度コントロールによる最適制御等により、さらなる省エネ・省CO2を図ります。
   改修工事においては、NEDOより工事費用実績の3分の2の補助金を受けることになっています。建築主は東京ガス都市開発株式会社、設計は株式会社日建設計、施工は株式会社大林組が実施します。
※6: ソーラークーリング対応ガス吸収冷温水機
従来の廃熱利用ガス吸収式冷温水機の廃熱の代わりに太陽熱を投入するガス吸収冷温水機。日射が不十分で太陽熱による温水温度が比較的低い場合でも太陽熱を優先利用できるよう改良されている。
※7: ガスエンジンヒートポンプチラー(GHPチラー)
ガスエンジンを駆動源としてコンプレッサーを駆動し、ヒートポンプ運転によって空調のための冷温水を製造する空調用熱源機。
※8: デシカント空調機
乾燥剤を用いて冷房時に除湿を行う空調機。湿気を吸収した乾燥剤を再生するため、主にGHPチラーの廃熱で加熱して水分を放出させる。温度と湿度を個別に制御できる特徴がある。
※9: 東京ガス調べ。
※10: タスクアンドアンビエント
照明や空調を行う対象領域を、人が存在して執務をするタスク域と通路等通常人が存在しないアンビエント域に分け、タスク域には十分な照明・空調を施す一方、アンビエント域は照明・空調を軽減する省エネ手法。
 

本システムのフロー図

■今後の展開
   今回の改修による、建築物単体での省エネ・省CO2を2013年度まで3年間にわたり実証していきます。本件で実証した技術を、省エネ対策の進んでいない中小規模既存事務所ビルへの展開を検討します。その後、さらなる省エネ・省CO2のため、高効率燃料電池の導入や近隣施設とのエネルギー融通による面的利用等を検討し、地域としての省エネ・省CO2に貢献すると同時に、2030年までのZEB化をめざします。
■アースポート概要
住所 神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央16−18
竣工 1996年3月
延床面積 5,645m2
構造・階数 SRC造・地上4階 塔屋1階
用途 事務所
   今後も東京ガスは、低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大、エネルギーの面的利用等による省エネ・省CO2に積極的に取り組んでまいります。

参考:改修イメージ図

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