■実施背景 |
低炭素社会の実現に向け、日本の最終エネルギー消費量の3割以上を占め、CO2排出量が増加傾向にある民生部門の省CO2が強く求められています。特に、膨大なストックが存在する中小規模の既築の事務所ビルにおける対策は急務です。
東京ガスは、中小規模の既築の事務所ビルの改修によるZEB化の実現をめざすため、すでにガスエンジンコージェネレーションシステム※5(以下「ガスエンジンCGS」)の導入や自然採光、自然通風等によりトップレベルの省エネ・省CO2が進んでいるアースポートにおいて、最先端の技術を用いたさらなる対策の実証を行います。 |
※5: |
ガスエンジンコージェネレーションシステム(ガスエンジンCGS)
建物に設置したガスエンジンで発電を行い、同時に廃熱を有効な熱エネルギーとして利用する総合エネルギー効率の高いシステム。 |
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■改修概要 |
- 太陽熱、ガスエンジンCGSの廃熱、GHPチラーの廃熱を利用した省エネ・省CO2空調システム
定格熱出力約100kWの太陽熱集熱器を設置し、天候等により集熱量が変動する太陽熱を最優先で利用しながら、ガスエンジンCGSの廃熱で補完し、ソーラークーリング対応ガス吸収冷温水機※6を用いて安定的に空調を行います。
さらに、ガスエンジンヒートポンプチラー※7(以下「GHPチラー」)とその廃熱を利用したデシカント空調機※8を組み合わせ、これまで冷房時には利用されることがなかったGHPチラーの廃熱も有効利用することで、一層の省エネ・省CO2を図ります。GHPチラーの廃熱を冷房時に利用するのは日本で初めて※9です。
- 太陽光発電とガスエンジンCGS等を組み合わせた電力統合制御システム
最大出力が20kWの太陽光発電パネルを設置し、太陽光発電、ガスエンジンCGS、蓄電池を組み合わせることで、変動する太陽光による発電電力を補完し、安定的に電力を利用する統合制御技術を実証します。
低炭素社会実現のためには、建物単体の省エネ・省CO2だけでなく、街区等のエリア全体でエネルギーを融通して、再生可能エネルギーを最大限導入する、スマートエネルギーネットワークの考え方が重要です。そのためには、自然エネルギーの変動を補完しながらエリア内で電力・熱のバランスを取り、運用する技術が鍵となります。今回実証する電力統合制御システムは、スマートエネルギーネットワークの構築に向けた要素技術になります。
- 自然採光を活用した次世代照明制御システム
アースポートでは、竣工当初から昼光利用、タスクアンドアンビエント※10照明等の先進的な照明技術を導入してきました。今回の改修では、自然採光の利用拡大、LED等の高効率照明の導入、人感センサーによるオン・オフ制御、エリアごとの照度コントロールによる最適制御等により、さらなる省エネ・省CO2を図ります。
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改修工事においては、NEDOより工事費用実績の3分の2の補助金を受けることになっています。建築主は東京ガス都市開発株式会社、設計は株式会社日建設計、施工は株式会社大林組が実施します。 |
※6: |
ソーラークーリング対応ガス吸収冷温水機
従来の廃熱利用ガス吸収式冷温水機の廃熱の代わりに太陽熱を投入するガス吸収冷温水機。日射が不十分で太陽熱による温水温度が比較的低い場合でも太陽熱を優先利用できるよう改良されている。 |
※7: |
ガスエンジンヒートポンプチラー(GHPチラー)
ガスエンジンを駆動源としてコンプレッサーを駆動し、ヒートポンプ運転によって空調のための冷温水を製造する空調用熱源機。 |
※8: |
デシカント空調機
乾燥剤を用いて冷房時に除湿を行う空調機。湿気を吸収した乾燥剤を再生するため、主にGHPチラーの廃熱で加熱して水分を放出させる。温度と湿度を個別に制御できる特徴がある。 |
※9: |
東京ガス調べ。 |
※10: |
タスクアンドアンビエント
照明や空調を行う対象領域を、人が存在して執務をするタスク域と通路等通常人が存在しないアンビエント域に分け、タスク域には十分な照明・空調を施す一方、アンビエント域は照明・空調を軽減する省エネ手法。 |
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本システムのフロー図 |
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■今後の展開 |
今回の改修による、建築物単体での省エネ・省CO2を2013年度まで3年間にわたり実証していきます。本件で実証した技術を、省エネ対策の進んでいない中小規模既存事務所ビルへの展開を検討します。その後、さらなる省エネ・省CO2のため、高効率燃料電池の導入や近隣施設とのエネルギー融通による面的利用等を検討し、地域としての省エネ・省CO2に貢献すると同時に、2030年までのZEB化をめざします。 |
■アースポート概要 |
住所 |
: |
神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央16−18 |
竣工 |
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1996年3月 |
延床面積 |
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5,645m2 |
構造・階数 |
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SRC造・地上4階 塔屋1階 |
用途 |
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事務所 |
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今後も東京ガスは、低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大、エネルギーの面的利用等による省エネ・省CO2に積極的に取り組んでまいります。 |
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参考:改修イメージ図 |
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