東京ガス株式会社 株式会社荏原製作所 三浦工業株式会社
平成21年4月2日
広報部
東京ガス株式会社(社長:鳥原光憲、以下「東京ガス」)、株式会社荏原製作所(社長:矢後夏之助、以下「荏原製作所」)、三浦工業株式会社(社長:橋祐二、以下「三浦工業」)は、工場内で発生する90℃程度の温水を、加熱や殺菌などの生産工程に利用できる160℃程度のプロセス蒸気に変換する「未利用温水のプロセス蒸気化システム(以下、「本システム」)」の要素技術を確立いたしました。今後三社は、本システムの実証導入を経て、平成22年度の商品化を目指します。
90℃程度の温水は、冷却工程や燃焼排ガスとの熱交換あるいは蒸気の凝縮など工場内の様々な生産工程から多く発生します。これらを含めた低温の温水は、工場内の生産工程に利用する熱としては温度が低いため利用用途が限られており、未利用のまま廃棄・放熱されている温水は全国で年間33,000TJにも及ぶとされています*1。
本システムは、工場内で発生する未利用温水を、加熱や殺菌などの生産工程に幅広く利用できるプロセス蒸気へ変換することができます。本システムは、従来の蒸気ボイラから得られる蒸気量と比べて、約1.5倍の蒸気量を取り出すことができるため、蒸気ボイラの稼動を抑えることができます。これにより、従来よりも26.5%、年間7.9TJのエネルギー使用量の削減と、434tのCO2排出量の削減を実現します*2。また、これにあわせてエネルギーコストも削減することができ、商品化に当たっては5年以内のコスト回収が可能なシステムを目指します。
また本システムは、ガスエンジンコージェネレーションシステム(以下「ガスエンジンCGS」)のエンジン冷却用温水も蒸気に変換することができ、ガスエンジンCGSの排ガスボイラから得られる蒸気とあわせることで、排熱から得られる蒸気量を増大させることが可能となります。これにより、ガスエンジンCGSの排熱の利用用途を拡大させることができます。
三社は、これまで東京ガスと荏原製作所が利用技術開発を進めてきた温水の低圧蒸気化技術に、低圧蒸気の昇圧のための技術を加え、本システムを開発いたします。開発に当たっては、荏原製作所が温水の低圧蒸気化技術を、三浦工業が低圧蒸気の昇圧技術とシステムの制御技術を、東京ガスがシステム全体の検討や試作機試験を担当いたします。
*1 |
(財)省エネルギーセンター「工場群の排熱実態調査研究要約集」 |
*2 |
参考資料「3.仕様例」の条件における試算結果です。電力CO2排出原単位は0.69kg-CO2/kWh、都市ガス(13A)CO2排出原単位は2.29kg-CO2/m3Nを使用しています。 |
以上
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<参考資料> |
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1.本システムの概要 |
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システム概念図(都市ガス焚き蒸気ボイラと組み合わせる場合) |
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システム概念図(ガスエンジンCGSと組み合わせる場合) |
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各数値は都市ガスのエネルギー(LHV)を100とした場合のものです。 |
※ |
温水や蒸気は以下の幅において適用が可能です。 温水:85〜95℃、高圧蒸気:1.0〜2.0MPa、出力蒸気:0.3〜0.6MPa
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2.本システムの原理 |
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(1)再生器 |
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内部が真空であることから90℃の温水によって加熱された臭化リチウム水溶液が沸騰し、冷媒蒸気と濃溶液に分離され、発生した冷媒蒸気は凝縮器へ |
(2)凝縮器 |
: |
冷媒蒸気は冷却水により凝縮され、冷媒液となり蒸発器へ |
(3)蒸発器 |
: |
冷媒液は温水により加熱され、内部が真空であることから沸騰し、冷媒蒸気となり吸収器へ |
(4)吸収器 |
: |
再生器からの濃溶液が散布され、蒸発器から来る冷媒蒸気を吸収し、この吸収の際に発生する吸収熱により給水を加熱して湿り蒸気を発生 |
(5)分離器 |
: |
液分を分離し、低圧蒸気を製造 |
(6)ノズル部 |
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ボイラから得られる高圧蒸気が減圧され低圧超音速蒸気へ |
(7)ディフューザ部 |
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超音速蒸気が低圧蒸気を巻き込み、口径が広がるに従い減速して圧力を回復し、0.5MPaの蒸気を出力 |
3.仕様例 |
項目 |
中間期・冬期 |
夏期 |
温水 |
熱源 |
工場内の未利用温水 ガスエンジンCGSの冷却用温水 |
熱量 |
745kW |
610kW |
入口温度 |
90℃ |
出口温度 |
84℃ |
85℃ |
冷却水 |
入口温度 |
28.5℃ |
32℃ |
出口温度 |
32.1℃ |
35℃ |
高圧蒸気 |
熱源 |
都市ガス焚き蒸気ボイラ
ガスエンジンCGSの排ガスボイラ |
圧力 |
2.0MPa |
温度 |
215℃ |
流量 |
1155kg/h |
出力蒸気 |
圧力 |
0.5MPa |
温度 |
159℃ |
流量 |
1680kg/h |
1585kg/h |
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※ |
中間期・冬期は、冷却水温度が低下することにより出力蒸気量が増加します。 |
※ |
上記は一例で、温水や蒸気の条件により仕様は異なります。(温水や蒸気の適用範囲は、「1.システム概要」をご参照ください。) |
4.本システムのイメージ図 |
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