日立アプライアンス株式会社 東京ガス株式会社
平成20年4月24日
東京ガス株式会社(代表取締役社長:鳥原 光憲)と日立アプライアンス株式会社(取締役社長:石津 尚澄)は、高効率排熱投入型蒸気だき吸収冷凍機「超省エネルギー型蒸気だきジェネリンク」を共同開発しました。本製品は、世界で初めて排熱温水回収機能を付加した高効率の蒸気だき吸収冷凍機であり、蒸気に加えコージェネレーションシステム(以下CGS*2)の排温水を熱源として無駄なく利用することができます。蒸気と排熱温水の両方を利用することができるため、従来システムと比較して定格運転時で蒸気消費率を15%削減*3します。さらに部分負荷運転時には、排熱温水を優先して利用する制御を行い、冷房負荷率38%*4以下の場合は排温水単独運転(排熱温水のみで冷房し蒸気を使わない運転)を行います。これらにより年間蒸気消費熱量を8,100GJ/年から4,400GJ/年と、約45%(3,700GJ/年)の省エネルギー化*5を図るとともに、CO2排出量およびランニングコストの削減を実現します。本製品は、422kW〜3,516kW(120USRT*6〜1,000USRT)までの10機種をラインアップし、日立アプライアンスが今月末から発売します。
本製品は、東京ガスが市場性と商品化の検討を担当し、日立アプライアンスが詳細仕様設計および製作を担当しています。従来の高効率排熱投入型ガス吸収冷温水機(超省エネルギー型ジェネリンク*7)の技術を転用し、ガスエンジンCGSの排熱温水を蒸気だき吸収冷凍機の熱源に用いることを可能としました。蒸気と排熱温水の両方を利用できる高効率吸収冷凍機の開発は、世界初となります。これにより地域冷暖房施設や大規模病院、工場などで利用されているガスエンジンCGSから排出される蒸気の有効利用にとどまっていたものが、排熱温水などもエネルギーとして有効に活用できます。
また、本製品の初号機は、東京ガス子会社の株式会社エネルギーアドバンス(代表取締役社長:三浦 千太郎)が運営する明石町地域冷暖房センター(東京都中央区)に導入しました。地域冷暖房の蒸気と高効率ガスエンジン(発電出力930kW)の排熱蒸気および排熱温水を駆動源とし、冷房能力2,110kW(600USRT)の製品を設置しました。
吸収冷凍機は1964年に実用化され、これまでに東京ガス管内で約1万件、約1,000万kWのご採用をいただいております。東京ガスは、今後とも高効率で環境負荷の小さい機器・システムの開発・普及促進によりお客さまのエネルギー利用における環境負荷の低減に取り組んでまいります。
日立は、1965年以来累計1万9,000台の吸収冷凍機を納入しています。長年培った技術により、ガスだき、蒸気だき、排熱投入型吸収冷凍機で世界最高効率を達成しており、今後とも省エネトップランナーとして地球環境に優しい吸収冷凍機を提供してまいります。
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開発の背景 |
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地球温暖化防止への取り組みが急務となる中、空調設備機器においても、CO2の発生を抑制し、燃料資源をより一層効率的に活用する方策が求められています。吸収冷凍機は、「蒸発−吸収−再生―凝縮」の4つのプロセスによって冷水を作る、水を冷媒とした地球に優しいノンフロンの空調システム*8であり、蒸気だき吸収冷凍機は、冷水を作る再生工程において吸収溶液を加熱する際に蒸気を使用します。
蒸気だき吸収冷凍機は、蒸気ボイラーで冷暖房を行うなどの蒸気需要の多いお客さまに幅広く使用されてきました。また、蒸気需要の多いお客さまがCGSを導入する場合は、排熱として蒸気のみが得られるガスタービンCGSが選ばれてきましたが、近年のガスエンジンCGSの発電効率向上に伴い、蒸気需要の多いお客さまも、ガスエンジンCGSを採用するケースが増えてきています。
一方で、ガスエンジンCGSは、排熱として蒸気と温度レベルの低い排温水の両方が得られるという特徴を備えているものの、排熱温水を利用するには温水吸収冷凍機を別途設置する必要があるなどの理由から、排熱温水を十分に使用できないことがありました。このため、蒸気需要の多いお客さまにとって、排温水を含めた排熱をより効率的に活用するシステムが求められていました。
今回開発した製品は、高効率排熱投入型ガス吸収冷温水機(超省エネルギー型ジェネリンク)の技術を転用し、ガスエンジンCGSの排熱温水を蒸気だき吸収冷凍機の熱源に用いることを可能としました。蒸気需要の多いお客さま、特に地域冷暖房や大規模病院、工場などの冷房需要が多く運転時間が長いお客さまにとって、環境性と経済性メリットが大きい製品となります。
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主な特長 |
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最新の高効率蒸気だき吸収冷凍機(蒸気消費率3.5kg/h・RT*9)に、排熱温水再生器を追加することにより、蒸気に加え、CGSやボイラーなどの排温水を熱源として無駄なく利用することができます。蒸気と排熱温水の両方を利用することができるため、排熱温水を利用しない蒸気だき吸収冷凍機と比べ定格運転時で15%(3.5kg/h・RT→3.0kg/h・RT)の蒸気削減率*7を実現します。 |
また、部分負荷運転時には、排熱を優先して利用する制御を行います。冷房負荷率38%以下の場合は排熱温水単独運転(排熱温水のみでの冷房が可能で蒸気を使わない運転)を行います。これらにより蒸気消費量を大幅に削減することができ、システム全体としては従来に比べ、年間蒸気消費熱量で約45%の省エネルギー化を実現し、地球温暖化の原因となるCO2排出量やランニングコストの削減*5に大きく寄与します。 |
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排熱利用専用機*10と付帯設備の設置スペースが不要なため、従来システムに比べ設置面積が37m2と約3分の2*11となり、省スペース化が図れます。また、排熱利用専用機の設置に伴う制御工事、冷却塔・冷却水配管工事が削減でき、工期も短縮し、設置時のイニシャルコストを低減します。 |
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排熱利用専用機*10と付帯設備の設置スペースが不要なため、従来システムに比べ設置面積が37m2と約3分の2*11となり、省スペース化が図れます。また、排熱利用専用機の設置に伴う制御工事、冷却塔・冷却水配管工事が削減でき、工期も短縮し、設置時のイニシャルコストを低減します。 |
■製品型式 |
USRT:米式冷凍トン、1USRT=3.516kW |
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型式 |
冷房能力 |
型式 |
冷房能力 |
HAU−BW/CW120EXAJ |
422kW(120USRT) |
HAU−BW/CW630EXAJ |
2,110kW(600USRT) |
HAU−BW/CW210EXAJ |
738kW(210USRT) |
HAU−BW/CW700EXAJ |
2,461kW(700USRT) |
HAU−BW/CW300EXAJ |
949kW(270USRT) |
HAU−BW/CW800EXAJ |
2,813kW(800USRT) |
HAU−BW/CW400EXAJ |
1,407kW(400USRT) |
HAU−BW/CW900EXAJ |
3,165kW(900USRT) |
HAU−BW/CW500EXAJ |
1,758kW(500USRT) |
HAU−BW/CW1000EXAJ |
3,516kW(1,000USRT) |
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超省エネルギー型蒸気だきジェネリンク「HAU−BW/CW630EXAJ」 |
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*2 |
コージェネレーションシステム(CGS):燃料を用いて発電する際に発生する排熱を冷暖房などの用途に有効利用する省エネルギーシステム。 |
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*3 |
定格条件において排熱を投入した場合に、排熱を投入しない場合と比較した蒸気消費量を削減できる比率。 |
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*4 |
300EXAJ、400EXAJの場合は冷房負荷率が33%以下の場合に排温水単独運転を行います。 |
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*5 |
延床面積60,000m2の事務所での試算例(従来機を100とした場合:熱源機部分での比較) |
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従来機 |
新製品 |
エネルギー消費量 |
100 |
55 |
CO2削減量 |
100 |
55 |
ランニングコスト |
100 |
80 |
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*6 |
USRT=米式冷凍トン、1USRT=3.516kW |
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*7 |
超省エネルギー型ジェネリンク:ガスエンジンコージェネレーションシステム(CGS)と組み合わせ、その排熱(90℃程度の温水)を投入することによって燃料ガス(都市ガス)を削減することのできるガス吸収冷温水機。 |
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*9 |
蒸気消費率の表記は、入口蒸気圧力780kPa(G)時の値 |
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*10 |
排熱利用専用機である温水吸収冷凍機を使用する場合は、バックアップの吸収冷凍機をさらに設置する必要があります。 |
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*11 |
従来システム(500USRT機器ベース);温水吸収冷凍機+高効率蒸気だき吸収冷凍機では47m2、超省エネルギー型蒸気だきジェネリンクでは37m2。 |
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以上
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