LNG地下タンクの地上部を建設発生土で緑化
−高アルカリ性の発生土を低コストで改良、緑化用の土壌として再生−
東京ガス株式会社
広 報 部
平成17年7月6日
株式会社大林組(社長:脇村典夫、以下「大林組」)と東京ガス株式会社(社長:市野紀生、以下「東京ガス」)は共同で、アルカリ性の強い建設発生土を緑化用の土壌に改良する技術を開発しました。
平成15年10月に完成した世界最大規模(20万キロリットル)のLNGタンク「東京ガス扇島工場TL12LNG地下式貯槽」(横浜市鶴見区)の地上部の緑化工事で採用され、土壌改良を実施し、植物の移植を行いました。その後、約1年間にわたり、植物の生育を観察したところ、極めて効果のあることが確認されました。
<開発の背景>
建設現場から発生する土砂は、建設工事に係る資材の再資源化に関する法律が施行されて以来、資源としての再利用化が進んでいます。しかし、海岸埋め立て地の土壌は、海水の影響でナトリウムイオンを多量に含んだ高アルカリ性であるケースが多いため、緑化用に利用されることはほとんどありませんでした。
一方、建設現場などにおいて、在来種を生かした樹林地の再生を進めるためには、良質な緑化用土壌が必要となります。しかし、良質な土壌の入手は困難であり、また施工コストの高騰につながるため、大量には使用できませんでした。
近年、臨海部の開発が進んでおり、高アルカリ性の建設発生土が増加傾向にあることから、これらの土壌を低コストで改良し、植生の再生に用いることができる土壌技術が望まれていました。
<開発技術の概要>
今回、有効性を確認した技術は、石膏を含む中和剤と有機質・無機質をブレンドした特殊な土壌改良資材を高アルカリ性の発生土に混合し、自然の降水(雨)を利用して、短期間に土の塩類を除去し、本来その地域に生息する在来種を育てることができる土壌条件に改良するものです。
砂質系の土に含まれる海成粘土鉱物などコロイドの特性を加味し、その土壌に最適な土壌改良材を用いることで、短期間で塩類を除くことを可能にしました。改良資材には特殊な薬剤などを使用しないので、作業の安全性や環境への保全性も確保しています。
<アルカリ土の改良法の特長>
(1)アルカリ土を低コストで緑化利用
従来難しかった高アルカリ性の埋立地掘削残土を植物の生育が可能な健全な土壌に改良することができます。土質は、砂質系の土を対象とします。
土の改良には、特殊な薬剤を必要としません。選別した土壌改良材を利用し、土壌改良は自然の降水などを利用するので、低コストで、かつ安全です。アルカリ土の品質に応じた配合設計手法を開発、使用し、合理的な改良材の配合設計が可能です。改良コストは、良質土を購入する費用(運搬費、発生土の処分費)に比べて20%程度低コストです。
(2)在来種の植栽が可能
土の塩類を十分に除去することで、自然の再生に必要な、在来種を使った緑化ができます。
(3)産業廃棄物を削減
改良された土は、植物を栽培する土壌として利用できることから、廃棄処分される建設発生土を削減できます。
(4)緑の景観を持続
改良土は、カルシウム、カリウム、マグネシウム、イオウ、リン酸など、植物の栄養素となる肥料成分を含むため、長期間にわたり継続して緑の景観を保持することができます。
<今後の取り組み>
東京ガスは、これまでも建設発生土を植栽用客土として用いる技術を開発し、建設時に利用してきました。また、有効利用だけでなく、建設発生土の発生量を削減することが可能な完全埋設型地下タンクも開発しました。
大林組は、これまで数多くの工事において、建設副産物の発生低減や発生物の有効利用に注力してきました。一方、緑化関連分野においては、ビオトープ、ワイルドフラワー工法、チップクリート緑化工法、セメント排泥の緑地利用化技術など環境緑化ニーズに対応した研究・開発を進めてきました。
今後、大林組は、アルカリ土の改良法をはじめとする土壌改良のノウハウを駆使して建設発生土の有効利用を図り、自然の循環に配慮した緑地の再生に貢献します。
以 上
(参考)
改良した土

緑化した斜面の様子

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