20世紀末の「インターネット革命」におけるキーワードは「集中から分散へ」でした。大型コンピューターがすべてを統治する集中型システムから、パソコンやワークステーションと呼ばれる軽快な端末に主導権が移り、ハードウェアの絶えざる進歩と相まって世の中の様相はすっかり変わりました。
ひと昔前には考えられなかったような高性能のコンピューターが、たとえば携帯電話に姿を変え、誰もがそれを持ち歩くような世界が実現しています。
エネルギーの世界でもそうした「分散化」の革命が始まっています。そしてこの革命は、地球温暖化対策につながる二酸化炭素削減に大きな役割を果たすと期待されています。
「エネルギーの分散化」がなぜ二酸化炭素削減をもたらすのか? そこで燃料電池はどういう役割を期待されているのか?
それを知るためには、まず電力がどういう形で供給されているかを知らねばなりません。
電球の実用化で有名な発明王エジソン(Thomas Alva Edison,1847-1931)のもっとも重要な発明は、おそらく電力供給事業ではないでしょうか。1882年に最初の発電所を立ち上げ、送電から電球まで一貫した電力システムを作り上げた業績がそれです。
以来電力会社は、発電所と消費地を送電網で結ぶ集中型のシステムで、発電の規模を拡大し、効率を追求してきました。最新の大規模火力発電所では石油や天然ガスが持つ一次エネルギーの50%を電力に変換することもできます。
ボイラーやタービンや発電機で生じるロスを考えると、50%というのはたいへんな効率ですが、しかし逆に考えると、残りの50%を排熱として捨てていることになるのです。

いっぽう送電ロスの削減にも大きな努力が払われてきました。現在の電力網は、交流の電気を高電圧で送り、送電ロスを減らす方式をとっています。また大規模な発電所は、冷却のための大量の水を必要するため海の近くに立地しています。海際の大規模発電所と消費地を高圧の送電網で結ぶという現在の形は、ある意味で必然だったわけです。

- ちなみにエジソンの電力会社は直流送電を採用していたため、送電ロスに悩まされ、結局事業としては失敗に終わりました。現在の電力事業が交流送電システムをとっているのは、これを反面教師としているからです。