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環境コラム
UPDATE:2010.2.19
写真:佐藤方博
佐藤  方博
(さとう まさひろ)
プロフィール
フィールドでのボランティア活動を通じて、バードサンクチュアリなどの自然系施設が地域の生物多様性保全と環境学習、保全のための人材育成にとって有効な場になることに気づく。それからというもの、施設の潜在力を引っ張り出そうと、尋常じゃないくらい活動にのめり込んでいく…。入れ込み過ぎた仲間たちと1998年に生態工房を設立。フィールドでの実践を通して、施設や公園緑地の管理・活用に役立つ知見や技術を調査研究・開発・公開している。
生態工房理事、事務局長。

※写真は「セブン-イレブンみどりの基金」様より提供されたものです。
水辺の生きもの、まるごと復元
再導入したモツゴの子孫
再導入したモツゴの子孫

  クチボソという小魚を知っていますか?身近な池や川ならどこにでもいて、少しぐらい水が汚れていても生息しています。釣り人にとっては、細い口で釣り餌をつついて落としてしまう、厄介な存在でもあります。そんなありふれた魚であるクチボソが、わたしたちのフィールドにはいませんでした。これは、かつては当たり前にあった東京郊外の水辺の風景と生きものたちを取り戻そうとするわたしたちの試みの報告です。クチボソは東京での呼び名で、標準和名をモツゴと言います。

都会に誕生した小さな自然

  わたしたちの活動地である都立光が丘公園バードサンクチュアリ(練馬区)は、豊かな自然の回復と環境教育を目的として開設された施設です。今で言う「ビオトープ」の先駆けのような場所で、公園の一画に池や丘が造成され、樹が植えられました。整備後は、やがて周辺から小動物が移入してくると期待されましたが、魚だけは、地域の普通種であるモツゴが放流されました。1983年のことです。

残念な現実

  バードサンクチュアリが整備されると、翌年には早くも水鳥のカイツブリが繁殖するなど、順調に自然が回復していました。しかし開設2年後に外来魚のオオクチバスが密放流され、その捕食によると思われる影響でモツゴが絶滅しました。オオクチバスを駆除してモツゴが再導入されましたが、再びオオクチバスが増えるとモツゴが絶滅するという繰り返し。モツゴがいなくなった池では、小魚を食べるカイツブリが繁殖をしなくなりました。

掻い堀りで魚を探す参加者
掻い堀りで魚を探す参加者
市民参加で外来魚駆除

  この状況を打開したのは2001年に行われた掻い掘り(池干し)です。総勢96人が参加し、大人も子どもも泥んこになって外来魚を捕まえました。その数、6,221匹。オオクチバスや環境改変効果の高いソウギョ、コイなどを根絶しましたが、在来魚の生存状況は深刻なものでした。モツゴは絶滅、ハゼ科のトウヨシノボリはわずか11匹。長年にわたる外来魚による影響で、池の生態系は回復困難なダメージを受けていたのです。

  減少した生物種を復活させる場合には、自然移入に任せ、減少要因を改善して回復させるのが本筋です。しかしバードサンクチュアリの池は河川とつながっておらず、在来魚の生存個体はほとんどいませんでした。そこで区内にある石神井公園からの再導入を計画しました。2002年、同地で採集したモツゴ、トウヨシノボリ、スジエビなど846匹の水生生物を、練馬産の系統としてバードサンクチュアリに導入しました。

モツゴの定着に成功

  翌年に行ったモニタリングの結果はすばらしいものでした。バードサンクチュアリでは見たことがなかったモツゴが、まるで雑魚のようにたくさん網に入っていたのです。導入した個体に混じって、新たに生まれた幼魚もいました。モツゴはそれ以後、毎年繁殖して現在も存続しています。カイツブリの繁殖は、もちろん復活。2009年にはカワセミも繁殖して4羽のヒナを巣立たせ、大勢の来場者を喜ばせました。

それでもいる外来生物

  永年にわたる水辺環境改善への取り組みが実を結び始めていますが、課題もたくさんあります。バードサンクチュアリの自然は、絶えず人間活動にともなうストレスにさらされています。外来生物のウシガエルやアメリカザリガニが大量に生息しており、毎週駆除作業を続けています。水面を覆う水草を刈り取ったり、堆積した底泥の掻き出しも欠かせません。都会に整備された自然は、「自然のままに」放置しても豊かにはなりません。目指す将来像を明確にし、自然に対して積極的に働きかけていかなければよくなっていかないのです。

捕獲されたウシガエル
捕獲されたウシガエル
外来生物の駆除作業
外来生物の駆除作業
復元目標は地域の生物相

  バードサンクチュアリで復元しようとしている生きものは、どれもかつて東京で普通に見られた身近なものばかり。美しいものや珍しいものだけを選ぶのではなく、過去の生物相の記録に基づいて、生物相全体を復元することを目標にしています。池での活動だけでもこれだけの年月と労力を費やしていますが、林や草地や湿地でも復元事業を同時進行しています。バードサンクチュアリの来場者数は年間3万4000人。小さな人工の自然であっても、地域の市民にとっては、かけがえのない身近な自然です。在来生物のすむ豊かな自然を取り戻すために、わたしたちはこれからも、この取り組みを続けていきます。

バードサンクチュアリの景観
バードサンクチュアリの景観
自然復元活動に参加しませんか?
エコモニ「生態工房生きものモニタリング」最新情報はホームページをご覧ください。
生態工房

外来生物駆除、魚類の再導入などの取り組みは、生態工房調査研究報告集「工房のたまご」に掲載されています。
活動への寄付もできます。

エコワの森