再導入したモツゴの子孫 |
クチボソという小魚を知っていますか?身近な池や川ならどこにでもいて、少しぐらい水が汚れていても生息しています。釣り人にとっては、細い口で釣り餌をつついて落としてしまう、厄介な存在でもあります。そんなありふれた魚であるクチボソが、わたしたちのフィールドにはいませんでした。これは、かつては当たり前にあった東京郊外の水辺の風景と生きものたちを取り戻そうとするわたしたちの試みの報告です。クチボソは東京での呼び名で、標準和名をモツゴと言います。
都会に誕生した小さな自然
わたしたちの活動地である都立光が丘公園バードサンクチュアリ(練馬区)は、豊かな自然の回復と環境教育を目的として開設された施設です。今で言う「ビオトープ」の先駆けのような場所で、公園の一画に池や丘が造成され、樹が植えられました。整備後は、やがて周辺から小動物が移入してくると期待されましたが、魚だけは、地域の普通種であるモツゴが放流されました。1983年のことです。
残念な現実
バードサンクチュアリが整備されると、翌年には早くも水鳥のカイツブリが繁殖するなど、順調に自然が回復していました。しかし開設2年後に外来魚のオオクチバスが密放流され、その捕食によると思われる影響でモツゴが絶滅しました。オオクチバスを駆除してモツゴが再導入されましたが、再びオオクチバスが増えるとモツゴが絶滅するという繰り返し。モツゴがいなくなった池では、小魚を食べるカイツブリが繁殖をしなくなりました。
掻い堀りで魚を探す参加者 |
市民参加で外来魚駆除
この状況を打開したのは2001年に行われた掻い掘り(池干し)です。総勢96人が参加し、大人も子どもも泥んこになって外来魚を捕まえました。その数、6,221匹。オオクチバスや環境改変効果の高いソウギョ、コイなどを根絶しましたが、在来魚の生存状況は深刻なものでした。モツゴは絶滅、ハゼ科のトウヨシノボリはわずか11匹。長年にわたる外来魚による影響で、池の生態系は回復困難なダメージを受けていたのです。
減少した生物種を復活させる場合には、自然移入に任せ、減少要因を改善して回復させるのが本筋です。しかしバードサンクチュアリの池は河川とつながっておらず、在来魚の生存個体はほとんどいませんでした。そこで区内にある石神井公園からの再導入を計画しました。2002年、同地で採集したモツゴ、トウヨシノボリ、スジエビなど846匹の水生生物を、練馬産の系統としてバードサンクチュアリに導入しました。