本文へ フッターメニューへ サイトマップへ
会社情報TOP 会社案内 株主・投資家向け情報 採用情報 取り組み・活動 資材調達 プレスリリース
現在位置:東京ガスサイトTOP > 東京ガスについて > 取り組み・活動 > アクセス!Eco > 環境コラム
環境コラム
UPDATE:2008.11.25
写真:西原弘
西原  弘
(にしはら ひろし)
プロフィール
有限会社サステイナブル・デザイン研究所取締役社長。
1991年東京大学文学部社会学科卒業、1991年〜2002年株式会社三菱総合研究所、2002年〜現職、2003〜2006年度立教大学観光学部兼任講師(環境社会学)。2005年〜NPO法人日本ガラパゴスの会理事・事務局長。2007年4月〜月刊省エネルギー誌に「暮らしとエネルギー−省エネライフの社会学」連載中。環境カウンセラー(事業者部門)、技術士(衛生工学部門)、エコアクション21審査人。
ガラパゴス化っていうけれど?
日本市場はガラパゴス?
  近頃は、日本の製造業の「ガラパゴス化」などといって、進化の袋小路に陥った閉鎖的な島のたとえにガラパゴスを持ち出して揶揄する例が増えているようです。曰く、「日本国内での独自の製品進化は、・・・グローバルの世界では適応できない可能性もあり、逆にグローバル製品が日本市場に攻め立ててきたとき、製品が絶滅するリスクもある」(注)。ガラパゴスという言葉が広まる上ではいいかもしれませんが、悪いたとえに使われるゾウガメやイグアナたちにとってはいい迷惑です。
野生のゾウガメ ウミイグアナ
野生のゾウガメ:
「ガラパゴス化」で島・火山ごとに14亜種に分化(適応放散)
ウミイグアナ:
世界で唯一海に潜るイグアナ、「ガラパゴス化」で大繁栄
  かく言う私は、初めてガラパゴスを訪れたのが約10年前、3年前からはNPO法人ガラパゴスの会の理事・事務局長を務めております。いってみれば、日本のガラパゴス応援団の主務、といった役回り。ですから、ガラパゴスが皮肉って使われるのは、あまり面白い話ではありません。ただ、現在のガラパゴスでは、外来種が多数上陸して生態系をかく乱し、固有種・在来種を「攻め立て」ている状態なので、あながち的外れと言い切れないのが残念です。
(注)宮崎智彦「ガラパゴス化する日本の製造業」(2008年9月)より
最悪の外来種は?
  さて、すでに述べたように、ガラパゴスでは外来種問題が深刻化し、2007年には危機遺産リスト入りしてしまいました。1978年、世界自然遺産第一号となったガラパゴスは、どうして外来種問題に苦しむことになったのでしょうか?
  ガラパゴス諸島は、南米エクアドル沖1,000kmの太平洋上に点在する火山群島です。元々は無人島で、1535年、スペイン人司教トマス・ベルランガが発見したのが、現存する最古の記録です。その後300年間は、海賊船や捕鯨船の隠れ家として使われ、時折食料補給などのために人が上陸するほかは無人のままでした。しかし、巨大で動きの遅いゾウガメは、航海中の新鮮なタンパク質補給源としてあまりに魅力的であり、乱獲のために14亜種のうち3種が絶滅しました。また、やはり食肉を得るために放たれたヤギが野生化して大繁殖し、今日まで禍根を残すこととなったのです。
ガラパゴスの位置
ガラパゴスの位置:南米エクアドル沖1,000kmの太平洋・赤道上
  19世紀から開拓・入植が進み、これに伴って農作物・家畜等として持ち込まれた動植物がやがて野生化し、固有の生態系を脅かし始めます。最近30年間では観光が目覚ましく発展しました。観光活動自体は厳しく規制されており、観光による直接的な環境破壊は未然に防止されています。
  しかし、就業機会を求める多くの人々が大陸本土から移住し、人口は現在では3万人に達しようとしています。観光客数は年間15万人を超えました。このため、住民のための物資輸送や観光客の輸送が、外来種の非意図的侵入の最大のリスクとなっています。何百もの外来種を連れてきた外来種=ヒトこそ、ガラパゴスの生き物たちにとっては最悪の外来種なのです。
希望はないのか?
   ところが、一旦この状況に至ってしまうと、ヒトの介在なしに、ガラパゴスの生態系を維持・回復することはできません。なぜなら、今ここで観光を全面的に禁止し、全人口を島外に退去させ、あとは自然のなすがままに任せたとしたら、ダーウィンの進化論に従って、競争力の弱い固有種は淘汰され、外来種天国となってしまうからです。
丘に立つ風力発電機
丘に立つ風力発電機(800kW×3機):
島の電力の半分を供給
  では、ヒトが居住し観光業が営まれる中で、この問題に対処するにはどうしたらよいのでしょうか?長期的に最重要なのは教育です。将来諸島を担うことになる子どもたちと、その親を対象とした環境教育が始められようとしています。エクアドル政府や、これを支援する国際社会からの資金提供により、多くの人々が保全活動に職業として従事できるようになることも必要です。暮らしに必要な物資やエネルギーの自給を図ることも、物資輸送に伴う外来種侵入リスクを軽減するため、ガラパゴスでは立派な外来種対策となります。たとえば、サン・クリストバル島に導入された風力発電は、島内消費電力の半分をまかなうことで、燃料輸送を半減させたのです。
  ガラパゴスでは、固有種(そこでしか見られない種)が非常に高い割合で見られ、種のレベルで見ても生態系のレベルで見ても特異(ユニーク)です。しかし、その生態系は、幸か不幸か自力で1,000kmの海原を渡ってたどり着けた生物だけで構成されるため、大陸本土と比較すれば必ずしも生物多様性に富むとは言えず、外来種との競争に弱く、脆弱です。
   世界のどの地域よりも手厚く保護され、研究されているガラパゴスですら、外来種問題を解決できないとしたら、世界のどこでできるでしょうか?逆に、ガラパゴスでの苦闘が成果を挙げることができれば、世界のモデルとなるはずです。
  そのときこそ、いい意味での「ガラパゴス化」というたとえが使われるようになるでしょう。そうなることを願ってやみません。
■サステイナブル・デザイン研究所 http://www.b-info.jp/sd-ken/
■日本ガラパゴスの会 http://www.j-galapagos.org
■東京城南環境カウンセラー協議会/エコアクション21地域事務局東京