シロクマの毛は空洞で透明。光ファイバーの役目を果たし、太陽の熱を地肌へと導く。
夕日を浴びたシロクマの体は、黄金に輝いていた。 |
私が通うシロクマの聖地 最近、地球温暖化の影響で、北極海の氷が減少し、野生のシロクマたちが30年以内に絶滅の危機に瀕しているという研究結果が発表された。私はまだ、「地球温暖化」問題が表面化されていないずっと以前から、野生のシロクマたちを見守り続けている。
今から10年前の10月下旬に、カナダ北東部にあるマニトバ州チャーチルという小さな町に初めて訪れた。ここはハドソン湾に面していて北極からの寒気団が降りてくる時期になると、湾の氷が一番初めに張り始めるポイントの町なのだ。そして毎年、10月の半ばから11月にかけて、この湾の氷が張った海の上で子育てをするアザラシを獲るため、ここを出発地点として、野性のシロクマたちが集まってくる素晴らしい聖地なのである。
温暖化の影響 シロクマたちは、ハドソン湾が凍っている約半年間の期間だけ狩猟をして、十分な脂肪を蓄える。そして、春になって再び陸に上陸すると、残りの半年間を何も食べずに絶食するというサイクルを繰り返す。
凍らぬ大地...地平線の彼方を見つめ、シロクマは何を想っているのか... |
今から約20年前、10月の終わりになるとハドソン湾は凍り始め、狩猟へと向かうシロクマたちも海岸線に数百頭集まっていたという。しかし、現在ではハドソン湾が凍り始めるのは、11月の2週目以降であり、年によっては12月いっぱい凍らない時もある。ここ20年で約1ヶ月も結氷する時期が遅くなっている。シロクマたちは、1週間氷が張るのが遅くなると、体重が約10kg減少すると言われている。温暖化によって氷が張る時期が遅くなっているが、同時に解ける時期も早くなっているのだ。そして、このまま温暖化が進めば、海は凍らなくなり、シロクマたちはもちろん、アザラシたちも絶滅してしまう。
北極海の氷が少なくなっていて、氷の面積が減少しているという問題は、白く凍った海は、太陽の熱を反射するが、解けて海面が現れると、海面の黒っぽい色は太陽の熱を吸収し、海水温を上昇させてしまい、それをきっかけに海の氷は一気に解け出してしまう。さらには、暖められた海水の流れが、地球規模で変化して、海水温や温度に影響しているという、複雑な状況が解明されはじめてきた。
シロクマの世界の少子化
私が訪れているハドソン湾南西部周辺は、シロクマの生息地の南限とされている。つまり、北極周辺よりも状況はさらに厳しくなっているのだ。実際、シロクマたちの個体数は減っていると感じるし、また、通常2頭の子供を産むシロクマだが、ほとんどの母熊は子供を1頭しか連れていない。これは、母熊が狩猟シーズンに十分な栄養を蓄えることができないために、2頭を育てることが出来なかったか、もしくは、現状を把握した本能で、最初から1頭しか出産しなかった母熊が増えてきていると考えられている。
シロクマの親子の絆はとても深い。子グマはおかあさんと3年間一緒に過ごす。 この子グマは生まれて1年。これから海に氷が張ると、この親子は辛く永い狩猟の旅に旅立つ。
この親子は、来年も元気な姿を見せてくれるだろうか。
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