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低温未利用エネルギーとコージェネレーションシステムの廃熱を併せて有効活用することで
高い暖房効率を実現した大型空調機
「蒸気焚き高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンク」の共同開発について

東京ガス株式会社
日立アプライアンス株式会社
平成22年2月8日

 

   東京ガス株式会社(代表取締役社長:鳥原 光憲、以下「東京ガス」)と日立アプライアンス株式会社(取締役社長:石津 尚澄、以下「日立アプライアンス」)は、下水処理水、河川水、海水、地下水などの低温未利用エネルギー※1を冷房・暖房に有効利用し、また、本製品の動力源(駆動熱源)としては、従来から利用している蒸気に加え、コージェネレーションシステムの廃熱や太陽熱を一部活用することにより、吸収式冷凍機とボイラーによる従来の空調システム※2と比較して高い暖房COP2.59※3を実現した「蒸気焚き高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンク(以下「本製品」)」を共同開発しました。

   本製品は、蒸気を駆動熱源とし、また低温未利用エネルギーから熱を汲み上げることにより、暖房COP2.20※4(電動圧縮式のCOP5.19※5に相当)を実現し、ボイラーの蒸気消費量を従来システムと比べ55%削減します。さらに蒸気の一部をコージェネレーションシステムの廃熱でまかなうことにより、暖房COPは2.59(電動圧縮式のCOP6.10※5に相当)まで高めることができるため、ボイラーの蒸気消費量を61%削減することが可能になります。なお、コージェネレーションシステム廃熱の代わりに太陽熱を使用することも可能です。従来、コージェネレーションシステムの廃熱と蒸気の両方を駆動熱源として冷房運転が行える製品はありましたが、冷房に加え暖房運転も行える二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの商品化は、日本初※6となります。

   本製品は、地域冷暖房や工場などの蒸気需要が多く、空調運転時間が長いお客さまに対して、高い省エネルギー性とCO2削減効果を発揮します。冷房能力422kW(120RT※7)/暖房能力338kWの機種から、冷房能力3,516kW(1,000RT)/暖房能力2,813kWまで、冷房と暖房の切換え運転が可能な10機種をラインアップし、日立アプライアンスが今月末から発売します。なお、本製品では、東京ガスが市場性と商品性の検討を担当し、日立アプライアンスが詳細設計および製作を担当しています。

   コージェネレーションシステムの廃熱は、広義の再生可能エネルギー等※8として位置付けられております。本製品は、コージェネレーションシステム廃熱や太陽熱を効率良く変換して利用するものであり、低炭素社会への移行と、それを実現するスマートエネルギーネットワーク※9の構築に重要な役割を担います。東京ガスは、今後とも天然ガス利用システムの高効率化とスマートエネルギーネットワークの構築を推進してまいります。

   吸収ヒートポンプの原理となる吸収サイクルを用いた機器は、1964年に吸収冷凍機として実用化されて以来、大型空調機として広く利用されています。日立アプラアインスは、1965年以来累計1万9,200台の吸収冷凍機・吸収ヒートポンプを納入しています。長年培った技術により、現在主流の二重効用型吸収冷凍機で世界最高レベルの効率を達成しており、今後とも先進の省エネ技術で地球環境に配慮した製品を提供してまいります。

   なお本システムは、本年2月16日から開催される展示会「HVAC&R JAPAN 2010(主催:社団法人日本冷凍空調工業会)」※10に出展します。

図.低温未利用エネルギーを活用する「蒸気焚き二重効用吸収ヒートポンプジェネリンク」の運転方法※11
※1 河川水・下水等の温度差エネルギー(夏は大気よりも冷たく、冬は大気よりも暖かい水)や、工場等の排熱といった、今まで利用されていなかったエネルギーの総称。温度は、10〜30℃程度。
※2 吸収式冷凍機「HAU-BW/CW_EXA」とボイラーによる冷暖房システム
※3 蒸気入熱基準。定格条件において廃熱を投入した場合、投入しない場合と比較すると蒸気消費量を15%削減できる。これにより、暖房COPは次のように算出。暖房COP=2.20/(1−0.15)=2.59
※4 蒸気入熱基準
※5 ボイラー効率0.87(高位発熱量基準)、一次エネルギー換算係数36.9%
※6 2010年2月8日現在
※7 RT=冷凍トン、1RT=3.516kW
※8 経済産業省の「再生可能エネルギーの現状と導入促進策について」(2009年11月6日、再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム)によれば、コージェネレーションシステムの廃熱は、未利用エネルギーの高度利用として再生可能エネルギーに準ずるものとして、広義の再生可能エネルギーと位置づけることが可能。
※9 IT技術を駆使し、建物や地域間で電力や熱を補完、融通し合うCO2削減型エネルギーネットワークのこと。これにより、環境性が優れるものの出力が不安定な再々可能エネルギー、個々の施設で発生する廃熱、地域に存在する未利用エネルギーを最大限活用することが可能になる。
※10 HVAC&R JAPAN 2010 第36回冷凍・空調・暖房展
開催日時:2010年2月16日(火)〜19日(金) 10:00〜17:00(最終日は16:00まで)
開催場所:東京ビックサイト 東1ホール・東2ホール
※11 本製品は、廃熱回収機能を付加した吸収ヒートポンプであるため、コージェネレーションシステムの廃熱や太陽熱などの熱エネルギーも駆動熱源として利用できる。また、下水処理水などの低温未利用エネルギーは、夏は冷却水として冷房用に、冬は熱源水として暖房用に有効利用できる。

「蒸気焚き高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンク」の主な特長

(1)低温未利用エネルギーの有効利用
     冬は熱源水として暖房用に、夏は冷却水として冷房用に低温未利用エネルギ−を活用することにより、従来システム(吸収式冷凍機とボイラーから構成される空調システム)と比べて、年間で29%の省エネ、CO2削減を実現します。特に暖房時は、低温未利用エネルギーから熱を汲み上げることで暖房COP2.20を実現し、ボイラーの蒸気消費量を55%削減します。
(2)コージェネレーションシステム廃熱や太陽熱の活用
     従来システムでは、コージェネレーションシステム廃熱を冷房のみに使用しますが、本製品では、熱交換器の性能向上を図ることなどにより、暖房にも効率良く使用することが可能です。また、吸収ヒートポンプの高い熱変換特性により、コージェネレーションシステムの廃熱を1.7倍の暖房出力に変換できます。さらに、コージェネレーションシステム廃熱以外にも太陽熱を利用することも可能です。
(3)高い暖房COP
     低温未利用エネルギーとコージェネレーションシステム廃熱を有効活用することにより、従来システムと比べ約2.6倍の高い暖房COP2.59を実現し、ボイラーの蒸気消費量を61%削減するとともに、年間で42%の省エネ・CO2削減が可能です。

開発の背景

   地球温暖化防止への取り組みが急務となる中、空調設備機器においても、CO2の発生を抑制する方策が求められています。
   東京都が2009年4月に施行した「環境確保条例」は、特定開発事業者(新築もしくは増築する建物の総延べ床面積が50,000m2を超える)に対して、未利用エネルギー等の有効利用の検討を義務付けています。具体的には、「地域におけるエネルギーの有効利用に関する計画制度」において、(1)特定開発区域およびその境界から1kmの範囲においては、下水処理水、河川水等の低温未利用エネルギー、(2)特定開発区域および近隣する街区では、建築物の空調による冷房廃熱、(3)特定開発区域では太陽エネルギー等の有効利用が求められています。

製品のお問い合わせ先

東京ガス株式会社 ソリューション技術部 空調技術グループ (担当:西山)
  〒105-8527 東京都港区海岸1丁目5番地20号
TEL:03-5400-3110 FAX:03-5400-7681
日立アプライアンス株式会社 大型冷熱営業本部 営業技術部 (担当:三善)
  〒105-0022 東京都港区海岸1丁目16番地1号 ニューピア竹芝サウスタワー
TEL:03-6403-4500 FAX:03-6403-4577

報道関係 お問い合わせ先

東京ガス株式会社 広報部 報道グループ (担当:大掛)
  〒105-8527 東京都港区海岸1丁目5番20号
TEL:03-5400-7675 FAX:03-3437-9130
日立アプライアンス株式会社 コーポレート・コミュニケーション部 広報グループ (担当:内山)
  〒105-8410 東京都港区西新橋二丁目15番12号 日立愛宕別館
TEL:03-3506-1476 FAX:03-3506-1631
以上

添付資料

1.「蒸気焚き高効率二重効用※1吸収ヒートポンプジェネリンク」の詳細説明
(1)低温未利用エネルギーの有効利用
     図1に示すように、下水処理水などの低温未利用エネルギー※2は、冬は外気よりも温度が高く、夏は外気よりも温度が低くなる温度特性を持っており、こうした特性を活用することにより、夏は冷却水として冷房用に、冬は熱源水として暖房用に年間を通じた利用が可能となり、従来システム(吸収式冷凍機とボイラーから構成される空調システム)と比べて、年間で29%の省エネ、CO2削減を実現します。特に、暖房時は、低温未利用エネルギーから熱を汲み上げることで暖房COP2.20※3を実現し、従来システム(ボイラー)による暖房と比べて蒸気消費量を55%削減します。
図1.低温未利用エネルギー(下水)の温度特性
(2)コージェネレーションシステム廃熱や太陽熱の活用
     従来システムでは、コージェネレーションシステム廃熱を冷房のみに使用しますが、本製品では、熱交換器の性能向上を図ることなどにより、温熱に変換し暖房にも使用できます。また、吸収ヒートポンプの高い熱変換特性により、廃熱を1.7倍の暖房出力に変換できます。これにより、二重効用吸収ヒートポンプに対して暖房時15%の蒸気消費量削減が見込めます。さらにコージェネレーションシステム廃熱だけでなく、太陽熱を利用することも可能です。
(3)高い暖房COP
     低温未利用エネルギーとコージェネレーションシステム廃熱を有効活用することにより、従来システムに比べ約2.6倍の高い暖房COP2.59※4を実現し、ボイラーの蒸気消費量を61%削減するとともに、年間で42%の省エネ・CO2削減が可能です。
※1 二重効用とは、単効用が再生器(低温再生器)1つであるのに対して、さらにもう1つの再生器(高温再生器)を追加し、その高温再生器に駆動熱源を投入し、高温再生器で発生した冷媒蒸気の熱を低温再生器の駆動熱源に再利用することで、熱変換効率を高めた吸収サイクル。
※2 河川水・下水等の温度差エネルギー(夏は大気よりも冷たく、冬は大気よりも暖かい水)や、工場等の排熱といった、今まで利用されていなかったエネルギーの総称。温度は、10〜30℃程度。
※3 蒸気入熱基準
※4 蒸気入熱基準。定格条件において廃熱を投入した場合、投入しない場合と比較すると蒸気消費量を15%削減できる。これにより、暖房COPは次のように算出。暖房COP=2.20/(1−0.15)=2.59
2.技術開発のポイント
(1)高効率二重効用吸収ヒートポンプの実現
     吸収ヒートポンプによる暖房は、吸収冷凍機による冷房と同一原理を用い、低温熱源(低温未利用エネルギ−など)から熱を汲み上げて、放熱側(暖房用温水)を加熱することで行います。従来技術を用いて二重効用吸収ヒートポンプを設計しようとした場合、吸収サイクルの吸収溶液濃度上昇に伴う結晶化や加熱部の温度および圧力の上昇により、表1に示す温度仕様条件を満たすことは困難でした。しかし今回、最新の高効率二重効用吸収冷凍機の技術(吸収サイクルの改善および熱交換器性能向上)を採用し、吸収溶液の濃度や加熱部の温度および圧力を低くしたことにより、効率の高い二重効用吸収ヒートポンプ運転(暖房COP2.20)を実現しました。
(2)コージェネレーションシステム廃熱や太陽熱の高度利用
     これまで、コージェネレーションシステム廃熱を利用する二重効用吸収ヒートポンプが商品化された例はありませんでした。今回、二重効用吸収ヒートポンプに対して、再生器の構造や制御を見直すことで、従来から利用している蒸気に加えコージェネレーションシステムの廃熱も駆動熱源に用いることを可能としています。また、駆動熱源としては、コージェネレーションシステムの廃熱の代わりに太陽熱を利用することもできます。さらに本製品では、低温未利用エネルギ−を、冬は低温熱源として熱回収を行い暖房用に、夏は冷却水として冷房用に利用し、年間を通じて冷暖房に活用することが可能です。これにより、表2に示すように、従来システムに対して年間で42%の省エネ・CO2削減効果を発揮します。
図2.圧縮ヒ−トポンプと吸収ヒートポンプ※5の原理
※5 電気などにより圧縮機を駆動し、冷媒(蒸気/フロンなど)を圧縮することで冷房・暖房を行う圧縮ヒートポンプ方式(左図)と、蒸気やコージェネレーション廃熱などを駆動熱源とし、吸収器や再生器などから成るシステムにより、冷媒(蒸気/水)による熱の移動を実現することで冷暖房を行う吸収ヒートポンプ方式。下水処理水や河川水等の低温側(未利用エネルギー)から熱を回収して高温側(暖房用温水)に放熱することで暖房を行う。
3.高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの基本仕様
  表1.高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの基本仕様
項目 冷房 暖房
能力 100 (指数) 80 (指数)
COP1(蒸気入熱基準)※6 1.50 2.20
COP2(蒸気入熱基準)※7 1.88 (=1.50/0.80) 2.59 (=2.20/0.85)
蒸気削減率※8 20% 15%
廃熱変換効率 0.8 1.7
定格条件の温度仕様 冷水/熱源水※9 (冷水)
入口12℃、出口7℃
(熱源水)
入口12℃、出口9℃
冷却水/温水※9 (冷却水)
入口28℃、出口33℃※10
(温水)
入口40℃、出口45℃
コージェネレーション
システム廃温水※9
入口90℃、出口80℃ 入口90℃、出口87℃
※6 定格条件におけるコージェネレーションシステム廃熱を投入しない場合の蒸気入熱に対するCOP。
※7 定格条件におけるコージェネレーションシステム廃熱を投入した場合の蒸気入熱に対するCOP、コージェネレーションシステム廃熱を入熱に考慮しない。
※8 定格条件において廃熱を投入した場合に、廃熱を投入しない場合と比較した蒸気消費量を削減できる比率。
※9 本紙2頁目の図「低温未利用エネルギーを活用する『蒸気焚き二重効用吸収ヒートポンプジェネリンク』の運転方法」参照。
※10 冷房時、低温未利用エネルギーを冷却水として利用する場合。
4.高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの省エネルギー性・CO2削減率
  表2.高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの省エネルギー性・CO2削減率
  高効率吸収式+ボイラー
(従来)
高効率二重効用
吸収ヒ−トポンプジェネリンク
(未利用のみ利用)
高効率二重効用
吸収ヒ−トポンプジェネリンク
(未利用+CGS廃熱利用)
サイクル
  • 冷房時:二重効用吸収
    冷凍機
  • 暖房時:ボイラー
  • 冷房時:二重効用吸収
    冷凍機
  • 暖房時:二重効用吸収
    ヒ−トポンプ
  • 冷房時:二重効用吸収
    冷凍機(ジェネリンク)
  • 暖房時:二重効用吸収
    ヒ−トポンプジェネリンク
効率(蒸気入熱基準)
  • 冷房時 1.40
  • 暖房時 1.00
  • 冷房時 1.50※10
  • 暖房時 2.20
  • 冷房時 1.88※10
  • 暖房時 2.59
省エネルギー性・
CO2削減率(冷房時)
100
(基準)
93
(▼7)
75
(▼25)
省エネルギー性・
CO2削減率(暖房時)
100
(基準)
45
(▼55)
39
(▼61)
省エネルギー性・
CO2削減率(年間)※11
100
(基準)
71
(▼29)
58
(▼42)
※10 冷房時、低温未利用エネルギーを冷却水として利用する場合
※11 冷暖比=1:0.8、冷房時全負荷相当時間800時間、暖房時全負荷相当時間600時間として試算
5.高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの製品型式
  表3.高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの製品形式
型式 冷房能力 暖房能力 型式 冷房能力 暖房能力
HAP−BW/CW120EXAJ 422kW(120RT) 338kW HAP−BW/CW630EXAJ 2,215kW(630RT) 1,772kW
HAP−BW/CW210EXAJ 738kW(210RT) 590kW HAP−BW/CW700EXAJ 2,461kW(700RT) 1,969kW
HAP−BW/CW300EXAJ 1,055kW(300RT) 844kW HAP−BW/CW800EXAJ 2,813kW(800RT) 2,250kW
HAP−BW/CW400EXAJ 1,407kW(400RT) 1,126kW HAP−BW/CW900EXAJ 3,165kW(900RT) 2,532kW
HAP−BW/CW500EXAJ 1,758kW(500RT) 1,406kW HAP−BW/CW1000EXAJ 3,516kW(1,000RT) 2,813kW
6.製品写真
写真1.蒸気焚き高効率二重効用吸収ヒートポンプジェネリンクの外観
以上
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